「ねーゆんた! 明日、月見酒しよっ!」
また言ってる。ぽんの頭のなかは、空のことしか無いんじゃないだろうか。私は、そう思いながらも、肴に何を用意するか考えていた。やっぱり、お団子だろうか。
「今年の月は特に綺麗に見えるんだって!」
「へー、そう。良かったね。肴は何が良い?」
「ゆんた!!!」
私は、ビックリすると同時に照れてしまって、咄嗟の言葉が出なかった。
「あ、ゆんた照れてる! かーわいっ!」
「うるさい!!!」
つい怒鳴ってしまって、さらに、恥ずかしくなる。それを隠すのに、酷いことを投げた。
「月見酒なんかしない! 勝手にすれば?!」
「…ごめんなさい、からかって。でも、本当にね、ゆんたと一緒だったら、月見酒、絶対楽しいから、肴なんか無くてもいいくらいなんだよー」
本当に、ぽんは素直な人だ。私は、すっかり毒気を抜かれて、溜め息を吐いた。
「月見酒だから、お団子でいい?」
するとぽんは、ぱーっと、それこそ、満月みたいに笑った。それから、勢い良く頷く。素直で可愛いな、なんて思ってしまった。
end
話題:SS
13/04/16