あたしの心を隙間なく埋めているのは、紛れもない、ただの罪悪感だ。別に、何か目立って、悪いことをしたわけではないのだけれど。
否。
あたしは、日常から、悪いことをし続けて、生活しているのかもしれないなあ、とも思う。周りの全ての人を、騙して、生きているのだから。
あたしは、丁度、一年前に、人を殺した。
あたしが殺したのは、あたし自身で、それを咎める法律は、無かったと思う。だから、あたしは、法律では裁けないはずなのだけれど、確かに、あたしは、人を、殺した。
今さらになって、なぜこんなことを、書いているのかというと、まあ、分かりやすく、端的に言えば、彼に、本質を、見透かされたからだ。
混沌としてる。
それが、彼があたしに抱いた、感想だった。きっと、その、混沌とした部分は、あたしの遺体だったのだろう。あたしは、あたしの遺体と、偽物のあたしで、出来ている。
死ぬ前のあたしは、暗く揺らめいて、いつも、死にたがっていた。だから、殺した。元々あったはずの、暗いあたしは、あたしの遺体と、ほとんど同化して、今は、ただの混沌になった。
かわりに、混沌を隠すための、仮面が必要になった。偽物のあたしだ。
じゃあ、これを書いているのは?
そう聞かれたところで、たぶん混沌の方だ、と推測するしかあたしには、出来ない。何せ、まぜこぜになってしまっていて、あたしにも、わからないのだ。
毎日の生活のほとんど全てを、偽物のあたしが、こなしているのだ。混沌の方は、時間が止まっていて、いつも、ドロッとしている。だから、彼に、見抜かれたときに、酷く、動揺した。
なんで。
君は知らなくて良いのに。知られたくなかったのに。
でも、同時に思った。
あたしは、君の前では、偽らなくて良いんだ。壊れたままでも、許されるんだ。
それは、救い、だったのかもしれない。
でも、あたしは、それを、受け取れなかった。
あたしは、今から、彼と、もっと深い混沌に、沈もうと思う。
これは、犯行声明であり、遺書なのよ。
さよなら、偽物のあたしの、大切なお友だちの皆様。あたしは、今度は、偽物のあたしと、彼とを、殺します。
もう二度と、逢うことはないでしょうね。
どうか皆様に、砂糖菓子のような、骨をも溶かす、幸福が訪れますことを、心より祈って。
話題:SS
らしくもなく あとがきをば 追記に。
13/01/18