人魚姫伝説 act2
人魚姫伝説

翌日、何時もより、かなり早めに家を出て、徒歩で学校にいくと、内履きが無くなっていた。想像の範囲内だったから、あまり気にならず、来客用のスリッパを持ち出して来て、内履きを探しに行く。 
思った通り、一番近くのゴミ箱に、無造作に投げ込まれていた。
拾い上げるときに、指先に違和感を感じて、内履きをひっくり返すと、じゃらじゃらと、画鋲が落ちてくる。このまま履いていたら、足は、血塗れだったんだろうか。そこで、初めて、怖い、と感じた。

教室に入り、いつもの様に、おはよう、と言いそうになってやめる。どうせ、返って来ないんだから、言うだけ無駄だし、寂しい思いをするだけだ。
机に向かうと、昨日、置いていった教科書とノートが、見るも無残な姿に変わっていた。カッターかなにかで、表紙以外が、ズタボロにされている。

やっちゃったなー、と、最早、他人事のように思う。

今日の授業、どうしようか。表紙は大丈夫だから、閉じたまま、机の上に、置いておこう。そして、授業が始まった。

「おい、来海。教科書を開かんか」

先生からの、その台詞を聞いて、私は、ようやく、思い至る。なるほど、これじゃあ、教科書が置いてあっても、私が、悪いことに、なってしまう。

「…すみません」

そう言って、申し訳程度に、教科書に手を触れると、先生は満足したようで、授業を進めてくれた。その隙に、教科書を机の中に、仕舞いこんだ。忘れてきたことにしてしまったほうが、まだ、マシだろう。

そんな感じで、授業をこなした。

今日の最後の授業は、体育。着替え無くてはならないのが、気がかりになってきた。とはいえ、授業に出ない訳にはいかない。大人しく、更衣室で着替えを済ませて、グラウンドに向かう。今日は、持久走だったはずだ。

思っていた通りの、持久走。私は、一人で、淡々と走る。瑠花や沙耶となら、後ろの方で、のんびりと走るのだが、一人でそんなことをしても、先生の目が、痛すぎるだけだと判断して、久しぶりに、少し真面目に走る。走るのは、そんなに苦手じゃない。

「お? 来海ー。真面目に走れば、結構、速いじゃないか」
「…どうも」

悪目立ち、してしまった気がする。憂鬱だった。

体育を終えて、更衣室に戻ると、やっぱり、というか、セーラー服はびしょ濡れ。どうやって帰ろうか。私は仕方なく、ジャージのまま、先生に見付からないように、帰った。



to be continue...
話題:連載創作小説



12/06/29  
読了  


-エムブロ-