「ねー、ぽん。ほたる見に行こー?」
私が言うと、ぽんは、一瞬、不思議そうな顔をした。
《ほたる》
「ほたるが見たい、って言ってんの、わかる?」
私は、再び、言い直した。
「ほたるなら、ここにいるじゃん」
「…ばーか」
もういい。私は怒ってそっぽを向いた。ぽんのばか。解ってて言ってるのが解るから、イラッとしてしまった。
「あはは。ゆんたは可愛いなー。ごめんね。冗談、冗談。何時にする? 今度の休みだったら、月も小さくなってるから、いいと思うよ」
ぽんの頭の中は、空のことばかりだ。
「いい。一人でいくから」
ムキになった自分と、余裕そうなぽんに、腹が立った。私の気持ち、考えてるの。空の方が大事なんじゃないの?
そんな風に考えてしまって、イライラを押さえられない。
「一緒に、蛍見に行こ? 僕とじゃ、いや?」
「…ばか」
「ごめんね」
「ぽんとだから、見に行きたいって言ったの」
私は、らしくなく、嫌、私らしいのか、ボソボソと本音を言った。
「ありがと、ゆんた」
ぽんはニコニコと笑っている。
ダメだ、本当に。ぽんといるとペースが乱されてしまう。私はついうっかり、口が滑ってしまった。
「ぽんのばか、大好き。だから、今度の休み、絶対ね!」
「うん、絶対!」
ぽんは、相変わらず笑顔を崩さない。
私はそんなぽんの隣にずっといられたらな、なんて、思ってしまった。
end
話題:SS
前作*
流星群
12/06/30