靡いた茶髪
ショートストーリー

あたしよりも、遥かに、地位も金も名声も持ってるような奴が、あたしに入れ込むのは、なんとも滑稽で面白い。

男って、バカね。それが、あたしの結論だ。

「なあ、お前さ、こんな店やめて、俺んとこ来ないか?」
「…なぜ?」
「お前が欲しいから」
「ありがとう。でも、ごめんなさい」
「なんでだ? 今より良い生活させてやれるし、何より、こんな店、やってたくないだろ?」
「貴方に迷惑かけたくないの。あたしの借金、多分、一生かけても返せないぐらいだから」
「そっか…。ごめん。だったら、せめて、もう少し此処に来るようにする」
「…あり、がと」

そんな会話を何度したっけか。あたしの台詞は、全てにおいて、嘘でしかない。
それをしっかり信じるなんて、本当に、男って、バカばっかり。

「お前さ、俺と来いよ」
「嫌よ」

その男は、あたしのことなんか、ちっとも好きじゃないのに、あたしを気に入って抱いていた。だけど、あんた専用の人形になる気はない。

「は?」
「てめぇなんざ、顔が良いから、指名に応えてただけだよ。精々、イケメンに産んでくれた両親に、感謝しとけ」
「…っ!!!」

客が一人減ったのか。それだけだ。

やっぱり、男は、バカだ。

それでも、誰かを求めるあたしは、もっと、バカだ。


end
話題:SS

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12/06/21  
読了  


-エムブロ-