「えっと…これはどういうことかな?」
僕、マルスは図書室に新しい本を借りに行こうとしたはずだ。
なのになんで僕は縛られているのだろう。
その疑問を目の前にいる5人に投げかける。
すると茶色の髪にふわふわとした白い羽が特徴的な彼、ピット君がにっこりと天使のような(天使だけど)笑顔を浮かべて言った。
「争奪戦です」
「争奪戦?」
そうです。とピット君が満足そうにうなずく。
僕はまだピンとせずに首を傾げればルキナちゃんがいきなり僕の肩を掴む。
「私たち、英雄王、否マルスさんが大好きなんです!」
そうキラキラとした瞳で可愛らしく笑う彼女に不覚にもときめいた。
そんな僕に気がついたのかロイはルキナちゃんをグイッと押しのけると僕の肩を抱く。
…女性にそんな態度はいけないぞロイ。
「だからマルスに決めてもらおうって決めたんだ!」
そう言ってまだ幼さが残る顔で笑うロイは可愛らしいと思う。
…ただすごく顔が近い。
「決めてもらうって」
「マルスさんっ!」
なにをと言おうとしたがシュルク君に遮られてしまう。
シュルク君は僕の手をとるとそのまま彼の唇にーってえぇ!?
手の甲に伝わるシュルク君の唇の熱と柔らかさにどんどん顔の熱が上がる。
「マルスさん、可愛いですね」
「ぁぅ…」
まるで本物の王子のようなシュルク君に胸がドキドキとうるさく鳴る。
シュルク君は僕の顎に手を触れようとしたが目の前に現れた剣に驚いて手を反射的に引っ込める。
その先にはアイクがいたのだが
(スッゴい怒ってる…)
アイクは普段喜怒哀楽を顔に出さない。
今だっていつもと変わらず無表情だ。
しかし纏っているオーラがドス黒い。
めっちゃ怒ってる…
しかもアイクだけじゃなく、シュルク君の背後にはピット君が神器を、ルキナちゃんが
剣を構えていた。
ロイも[封印の剣]を右手に持っている。(構えていないのは僕がいたからだろう。)
「…穏やかじゃないですね」
「あなたのせいでしょう?」
「マルスに手を出した罪は重いぞ」
「浄化するべきですね」
「覚悟しろ」
今すぐにでも乱闘が始まりそうな雰囲気の中、僕は隙を見てロイから抜け出す。
ロイはよほど怒っているのか気づいていないようだ。
手を見ればいつの間にか縄は切れていた。
僕はそっとその場から逃げ出した。
それが合図だったと言うように中から凄い音がしたけど前だけを向いてひたすら走った。
「…てなことがあったんです」
「災難だったな」
そうケラケラ笑いながら紅茶をだす緑色の三角帽子が特徴的なリンク。
僕はあの後リンクの部屋へ真っ先に飛び込んだ。
…途中に出会ったブラックピット君とカービィを連行して。
「なにやってんだよあいつは…」
「ぽよ〜?」
僕の話を聞いて頭を抱え込んでいるブラックピット君を慰めるように頭をポンポンと叩くカービィの姿に癒される。
「すまないな…ほんとに」
「ありがとう、気にしないで?」
そう笑いかければブラックピット君は「ぅぐ…」と呻きまた俯いてしまった。
よく見れば耳が真っ赤になっていた。
どうしたんだろう?
不思議で首を傾げれいれば後ろから髪をわしゃわしゃと崩されるような撫で方。
「もぅー!止めて下さいってばぁ!」
「ははっ!わりぃ!」
「なんでそんな嬉しそうなんですか?」
「んー?だって」
そう言いながら僕の頭をまた撫でる。
「真っ先に俺のとこに来てくれたってことは信頼してくれてるってことだろ?」
「え…」
顔が熱くなる。
僕、無意識にリンクを頼っていたの?
余りの恥ずかしさに顔がどんどん真っ赤になる。
それを見て「マルス林檎みてぇ」とケラケラ笑うリンクの背中をとりあえず一発殴っておいた。
「俺らいるか?」
「ぽよ〜」
そう言って冷たくなった紅茶を口に含む。
(にが…)
すでに砂糖が下に沈没してしまった紅茶はオレにとって少し苦く感じた。
(ま、あいつが笑顔だったらいいけどな)
生み出されたときには知らなかった気持ち。
今ならあいつらが惹かれた理由がわかる気がする。
(それにしてもさっきの笑顔綺麗だったな…)
マルスのあの笑顔を思い出し思わず顔が熱くなる。
その熱を冷ますように冷たく苦い、けど少し甘い紅茶を飲み干した。
その後あの馬鹿5人はマスターにこっぴどく怒られ、しばらくの間オレとリンクが常に一緒であいつらからマルスを守っていた。
(英雄王が足りない…)
(ぬぅん…)
(マルスさぁん…)
(マルス…)
(ブラピのくせにぃ…)
(ざまぁww)
(お前らのせいだろ)
追記→あとがき