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幸せになろうよ。(アルジュ)

しまった、と思ったのは、会計をした後だった。

たまたま寄った装飾品店で見つけた指輪だった。施された加工が、恋人を思い出させて、思わず手に取っていた。だが、サイズを知らない事に気付いた。プレゼントで、なんて頼んでしまったので、綺麗にラッピングまでされている。溜息を飲み込んで、「どうも」店員に簡単に礼を言って店を出た。

アルヴィンは、包まれた指輪の姿を思い出す。

夕焼け後、夜に成りきらない空のような色をした宝石。それを大切そうに守る、シルバーの装飾。丸でイル・ファンのようだった。あの街を歩く恋人の後ろ姿が、実はとても好きだった。一度離れてしまった反動か、ただ歩くだけで酷く嬉しそうで、そこに居るのが当たり前のような、自然な雰囲気が好きだった。

この宝石は丸で夜域を閉じ込めた、そんな色をしている。そう感じて買ってしまった。思えば贈り物なんてした事がない。それに、サイズも知らないのに指輪かよ、と内心自分に突っ込みを入れる。

「まあ、ひとつくらい合う指が有るだろ」

気軽に、気軽に。でないと、

渡すときに、酷く緊張する事は目に見えている。




******




宿屋に戻ると、ジュードは備え付けの机に向かって何か書き物をしていた。
閃いた事があったのかペンを走らせる手が止まる事がなく、アルヴィンが戻った事にも気付いていない様子である。少し迷ったが、アルヴィンは声を掛けた。

「ただいま。研究か? 折角、休みに入ったのに」

ジュードは顔を上げ、視界にアルヴィンを捉えると、真剣だった表情を崩して緩く笑った。

「おかえり」

幸せそうな笑顔に、くすぐったくなる。自分が、こんな顔をさせているのだと思うと、ちょっとした優越感だった。それから、気軽に、を心がけて先ほどのプレゼントを取り出した。

「買い物してて見つけてさ。似合うと思って買ってみたんだ」
「僕に? なんだろう」

ジュードは以外そうに首を捻ったが、少し頬が赤くなった所を見ると、喜んでいるらしい。アルヴィンは安堵した。拒否するような性格ではないが、それでも渡して実際の反応を見るまで不安だったのだ。

包みを開けたジュードは、箱を開けて大きく目を見開いた。

「これ、僕に?」
「ああ。……気に入らないか?」
「そうじゃなくて…」

箱から指輪を取り出したジュードは、暫くそれをじっと見つけて、何故か泣きそうに目を潤ませた。アルヴィンが「どうした」と慌てると、ジュードは指輪から視線をアルヴィンに移し、「指輪だよ?」言った。

「凄く、特別な感じがするし、そういうものをくれるって思ってなかったから、嬉しくて」

言われて、あ、と短く声が出た。
確かに、その通りだ。分史世界で自分はプレザに指輪を贈っていた。その意味も理解している。それは、自身では有り得ない選択だと思っていた。誰かの特別になる事など、怖い。それでも、

自然にジュードに贈りたい、と無意識に手に取ったのは。

一番好きな彼の姿をイメージして、プレゼントにしたのは。

全部、全部そういう事か。

答えが出れば簡単で、そしてアルヴィンよりも早くにそこに至っていた優等生は、意味を知った上で嬉しいと言った。返事と言っても良い。だが、肝心な事は何も言っていない。そう思って、『好きだ』って、伝えようとした。

「ジュードくん結婚しようか…?」

なのに出てきた言葉は自分でも驚く程にストレートを超えた表現で、ジュードは「え、」固まってしまい、アルヴィンは急過ぎる言葉を撤回するのではなく、ジュードの手から指輪を奪い、左手を取って入るかどうかを試してみた。

当然のように、薬指に。

鳶色の瞳が不安そうに揺れ、その瞬間を見つめていた。するり、少し余裕が有る。それでもアルヴィンは、入らないよりもずっと良い、とほっとして、「返事は?」訊いた。

「え、っ、は、はい…!」

ぶわあと耳まで赤くなるジュードを見て、今更ながら恥ずかしくなってきて、「そ、そうか…」なんて情けない声が出る。可笑しかったのかジュードは緊張を弛めてくすくす笑った。


実際に結婚する事など、男同志で出来はしないのだけど、

それでも確かに互いに、一生傍にいたいと感じた気持ちは、本当だった。



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求婚の日ってツイッターで知ったので、求婚アルジュ。

秘密に出来ない(ゾロル)

「好きだ!」

 

我らが船長のそんな言葉を聞き、ドアを開ける事を躊躇った。

食事の準備が出来て、呼びに来ただけなのに、まさかの最悪のタイミングか。おれは銜えていた煙草を落としかけて、動揺している事に気付いた。

男部屋には今、船長とマリモしか居ない。好意を伝えた相手は自然と一人しか思い付かない。動揺したのもたった3秒くらいの事だったと思う。だから、マリモは一呼吸の後には、返事をしていた。

 

「知ってる」

 

それも更に追い打ちのようにおれにショックを与えた。

マジか。クルーが男同士で出来てるとかマジか。早まったかおれ。

 

「でも」

「解ってる! 軽々しく言うな、だろ!」

「ああ、」

 

これは、あれか。

隠すとか、一応、そのつもりか? だが、こんなに大声で言うようじゃ、おれより先に一味にいたナミさんやウソップにはバレてる気がする。二人とも、よく気がつくから(特にナミさん!)。

しかし、あっさりと予想を超えた理由を、マリモの野郎が口にした。

 

「船長が一人を特別扱いするな」

「してないけどな、ゾロが厳しいんだ!」

「お前の為に言ってんだよ」

 

まさか、あの野郎、ルフィを船長として立てる為に自分を律しているとでも言うのか。

ルフィが自分一人に固執しないように。平等でいれるように。恋人でありながら独占しないように。

 

おれは少し迷ったが、ならばと思いドアを乱暴に叩き、敢えて二人の邪魔をした。

 

「おい、メシ出来たぞクソ野郎ども!」

 

ドアを開けないのはせめてもの優しさだ。中からルフィが「10秒で行く!」と返事をした。その10秒で、一瞬室内が静かになったのを、空気で感じた。おれの優しさが無駄にならなかったようで、良かったのか胸糞悪いのか。微妙な所である。

 

 

 

 

室内では、触れるだけのキスを、ルフィからゾロに、仕掛けている最中だった。5秒程経って、離れたルフィは幸せそうに笑っていて、内緒だと言うように、唇に人差し指を当てた。そして、部屋を出ていく。ぴったり10秒。

それで、十分だった。ゾロには、たった5秒程度、自分だけのものになってくれる船長が、堪らなく愛しかった。

 

 

 

 


___________
ゾロルふたつめ。サンジくん加入後、アーロンパーク以降。

今更再燃したので、書きたいネタが小舟時代から有るんだよ。ほんと許して下さい(爆)

たとえば、きみが(ゾロル)

『たとえば きみが』

 

戦闘の度に、大きな安心感に隠れた不安や恐怖と戦っている。

自分自身は、この船長についていくと決めた瞬間から、命を落とす覚悟は出来ている。なのに、感情は意思と関係なくあっさりと矛盾して、自分の死は受け入れられるというのに、

 

(こいつが死ぬのは、考えたくもねぇな)

 

ぼさぼさの黒髪にシャンプーの泡が絡みつき、わしゃわしゃと手を動かすと更に泡だらけになった。鏡を見たルフィは、「ひつじみたいだな!」と笑っていたが、本当は早く済まして欲しいのだろう、足が忙しなくバタバタと動いている。

 

今日はルフィの嫌いな、『湯船に浸かる日』だ。嫌だ嫌だとあんまり言うものだから、ナミに無理やり洗うように言われ、仕方なく従った。しかしルフィは存外素直に浴室についてきた。理由は簡単、「ゾロがおれを洗ってくれるんだよな!」である。要するに自分が何もしなくていい点が、良かったらしい。

 

「流すぞ」

「おー」

 

桶で湯船から湯を掬い、何度かざぶざぶと頭に掛けてやる。すっかり泡が落ち、ルフィは犬のように頭を振って水滴を飛ばした。体は先に洗っておいたから、後は浸かるだけである。

 

「だっこ!」

「わーったから、バタバタすんなって」

 

仮にも、自分の事を好きだと言っている男に対して随分と無防備な、と心配になる。まぁ、今の所手を出しているのはおれだけのようなので、却って信頼の証かも知れない。

 

ルフィを膝に乗せて肩まで湯船に浸かると、ルフィの体は途端に脱力する。顎の辺りを撫でる洗い立ての髪が少しくすぐったいが、当の本人はおれの肩に頭を乗せて鼻歌など歌ってご機嫌な様子である。

 

腹に手を回し、何とはなしにきつめに抱き締めると、ルフィは「ん?」と声を出した。どうかしたか、訊きたいようだった。

 

「別に、どうもしねぇ」

「ふーん、珍しいな。甘えてんのか?」

「甘え……」

 

ルフィがおれに、じゃなく、おれがルフィに、か。その発想は流石に無かった。だがある意味、的を得ている。

甘えている訳ではないが、求めている。いやらしい意味ではない。ただ、ひたすら、存在が欲しい。この上無く自由人であるルフィが、「おれだけのもの」になる事は不可能だ。だからこそ惹かれ、慕い、命を賭けても良いと、思う相手なのだ。

 

そう、『命』だ。

 

「ルフィ、もしおれが……」

「……?」

 

言い淀むとルフィは首を動かしてちらりとおれを見た。

もしも、の話だ。躊躇う方が不自然か。

 

「もしおれが、お前に取って望まない行動を取るとしたら、お前はおれを嫌いになるか?」

 

言ってみて、なんと情けない問いだろうと思った。らしくもない。

だけど、もしそうなら、例えばおれが命を捨てる事でルフィが助かるような場面が訪れたとして、死して恨まれるよりも、ずっと好かれていたいと思う。

 

「難しい事はよくわかんないけどよ」

 

問いの真意に気付いているのかいないのか、余りにも普段通りの表情で、少し戸惑いを覚えたのも事実だが、まあルフィにとっては『らしい』。

 

「もう好きになっちまったからな、嫌いになる事はないんじゃないかな!」

「……そうか、それだけ聴けりゃあ、十分だな」

「あ、でも怒るかも知んないけどな!」

「はは、そうかよ」

 

丸で永遠の誓い。

こいつの為に命を賭ける事は容易い。

だが、おれだってどうせなら、生きてずっと傍に居たい。

 

栓も無く、垂れ流しの思いが混ざり合うように、暫くきつく抱き締めていた。

 

 

 

 

______________ 

例えば君が傷付いて 挫けそうになった時は

必ず僕が傍に居て 支えてあげるよその肩を

 

…っていう、卒業式とかで歌う歌あるじゃないですか。凄い好きなんですよ。だからタイトルに貰いました(爆)

重なる心臓(スコバツ)

スコバツがっていうより文字が久しぶりだな。おかしな点は無視して下さい。









話を聴く限り、バッツの記憶にある元の世界での仲間達と言うのはどうやら女性ばかりだったらしい。
無意識に眉を寄せると「スコールが心配するような事は無かったぜ」といつもの調子で笑う。確かに、バッツからそういった想いは持たなかったのだろうと思うが、相手はどうだったかなんて俺には解る筈もなく、確かめる術もない。

ただ、信用してる部分として、バッツは振る舞い程軽い奴じゃなく、そして人の感情の動きに敏感であるように思える。その彼がもし、毎日顔を合わせている相手から好意を向けられたら、気付く筈である。

「まぁた渋い顔してぇ。難しく考えるのやめれば良いんだよ、スコールは」

見れば、バッツは何故だか解らないが非常に幸せそうな笑顔を浮かべており、少し頬が紅潮していた。……俺が思考を巡らす数秒の間になにが有ったのだろう。

「なぁなぁ、ぎゅってしてくれよ」
「アンタは…、何を言ってるんだ」

余りの甘えた声に、すぐに望みを叶えてしまう。要するに“ぎゅってして”あげたのだが、バッツは心底嬉しいと言うように「へへ、」と笑声を洩らした。

「そうやって呆れながらさ、俺を甘やかしてくれる所とか、すきだよ」
「………、そうか」

ならば、二度と離さない、と言外に伝える為に、更に腕に力を込める。ゆるゆると背中に回される腕の温もりが心地好い。
重なる心臓が時々同じタイミングで跳ねて、1つになってしまう錯覚がなんともむず痒く、しかし喜ばしい。

難しく考えたつもりはない。単純に俺は、この世界がいつまで続くのだろうとか、続く限りバッツは俺を好きで居続けてくれるだろうとか、前の世界の記憶が徐々に徐々に広がり、俺との事など忘れてしまうのではないかとか、不安と戦っていただけなのだ。

「なぁ俺、難しく考える必要はないと思うけど、でもスコールの頭の中が俺で一杯だなって解る時は、やっぱ嬉しいぜ」
「……そうだな、」

それで、あの顔か。
でも、それを言うなら、今のアンタだって。

「……俺もだ」

俺のより少し早い鼓動。
今、アンタは心臓に至るまで、俺で一杯だという事だから。




テンポの違う2つの心臓が音を揃える瞬間は余りに愛しく、そして正反対の二人が惹かれた様を表すかの如く、長く重なりあっていた。






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抱き締めるだけのスコバツ。イメージは「心拍数#0822」でした。あの歌めっちゃ好きです。
85やっぱり好きだもんねーディオデシム未プレイすけど、やりたくなってきた。

生きる活力(アルジュ)

受け止める事と受け入れる事は、意味が全く違うって、本当は誰でも知ってる。

僕は全てを受け止めて、そうして次に進む事にした。と、思っていた。

ただ僕は、イル・ファンを出てから今日までの事を全部、僕にとって必要だったんだって、思うから。思えるから。正直に認めるんだ。



僕は最初から、アルヴィンの事を受け入れていた。



喩え、最後にはミラのように僕の傍から姿を消してしまっても。僕はアルヴィンの選択を、決定を、非難する事が出来ないのだ。受け入れてしまったから。

何て、生きづらい選択をしたのだろう。

そうやって悩んでも、それでも僕は、自己決定の責任を持たなければいけないと思う。

全てが始まったイル・ファンで、僕はそうして僕らしく生きていく。
時々、気紛れに、僕の前に現れるアルヴィンの、その気紛れを待ちながら、僕はここで生きる。



どうしようもなく、為す術もなく、ひたすら必死に、生きていく。
瞬間的な幸せを糧に、生きている。





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エクシリア2でもアルジュしてくれるように願って書きました。アルジュほんと可愛いよ結婚して欲しいよ。
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