スサシュテです
文章おかしいけど妄想力でカバーしてくださいませ。
キャラは当然のごとく崩壊してますので悪しからず。
あのときこうしていればとか、ああしていればとか不毛なことだ。
なのに今、どうしてこうなったのかと過ぎた時を巻きもどす方法や言い訳ばかりが頭をよぎる。時を巻きもどす事など神ですら出来はしないのに。
「よう…シュテン、今日はお前と同じ部隊編成みたいだな…」
独神から朝一番に拝命された部隊編成のリストが本殿の広間に貼りだされる。自分の名前は第一部隊の隊長に割り当てられていた。
声を掛けられたシュテンドウジがゆるりと振り向くと、赤く長い髪を腰辺りまで伸ばした男スサノヲがいつもの不遜な笑みを浮かべていた。
「お前とかよ」
チっと舌打ちをすると笑みを浮かべていたスサノヲの表情が苛立ちに変わる。
「俺様とじゃ不満かよ」
「別に…嫌なわけじゃねぇけど…」
そう。嫌なわけじゃない。どちらかといえば嬉しくもあった。スサノヲとは恋仲になって少したち、前のような殴り合いも減ってきた。時々は喧嘩もするが、スサノヲから殴ることは無くなったように思える。一度殴らないのかと聞いた時、好きだから殴らないと言われた時は顔から火が出るかと思うくらい恥ずかしかったのを覚えてる。
「じゃあ何でだよ」
「………今回の行き先…がなぁ…」
「あぁ…ここは敵の多いとこだよなぁ…少しずつ敵の数減らそうと何度か挑んじゃいるが未だに攻略出来てない場所だな」
そう。だからこそ八傑を二人も布陣に入れてるのだろう。つまり頭はこの戦場を本気で落とす気なのだ。
「俺様がついてんだから大丈夫だって!」
スサノヲはにっと人懐っこい笑顔をシュテンドウジに向け笑う。そんな笑顔にそうだなと笑って返すも、心の奥底にある不安が未だに取り除けない。行き先は大江山…かつてシュテンドウジが根城としていた場所だ。そこが敵に占拠されているというのだから気分はよろしくない。
ましてや何度も挑み未だに奪い返せてないから尚更だろう。
「今回…土地の理はこっちにもある…後は数の差をどう埋めるかだな…」
俺だってこの土地は奪い返したい。
なんだかんだ言いながらも仲間たちと過ごした場所だし、仲間が眠る場所だから…
「敵の数が多いとは先発部隊から聞いちゃいたが、これは多すぎだろ?!」
右からも左からも敵からの攻撃が降り注ぐ中
確実に一体一体シュテンドウジが仕留めていく。
「文句言うんじゃねぇよ!あとは俺に任せな!」
スサノヲの周りが金色の光に包まれると光の刃が浮かび敵の頭上に降り注ぐ。
敵の断末魔と共に光も霧散していった。
「相変わらず便利な技だな」
「羨ましいか?」
「別に〜?」
まぁ確かに楽だが隠密には向かねぇなぁと思う。
「お二人方!新手です!」
「チっ…休む暇もなしか…挟み撃ちにされちゃあこっちが不利だ。後ろは取られんじゃねぇぞ!!」
シュテンドウジの勇ましい掛け声に皆の顔が引き締まる。
シュテンドウジが拳に気を溜め一気に放出するとその攻撃を皮切りに悪霊達が飛び掛る。
シュテンドウジは避ける素振りを見せる事無く冷ややかな視線を送ると目の前にいた悪霊が真っ二つに裂けた。後ろに控えていたイバラキドウジの刀が空を斬った。
「シュテンドウジ様に触れようだなんて億年早い」
「愛されすぎて怖いねぇ」
くくっとシュテンドウジが喉奥で笑い返り血のついた頬を拭う。
「………」
スサノヲがイバラキドウジとシュテンドウジのやり取りを見つめていると再び新手が現れた。
「まだ居んのかよ?!」
明らかに敵の数も強さも上がっている。
守りが厚いということは余程大事なものがあるということに他ならない。
尚更のことここで引くわけにはいかなかった。
次々に現れる敵に体力を削られていき、いくら八傑といえど体力の限界は必ずしもくる。
八傑の技は威力は凄まじいが体力の消耗も激しくある意味諸刃の剣でもある。
「多いとは聞いてたがここまで多いと嫌になるぜ」
「なんだ?もうバテたか?」
背中合わせに嫌味の応酬を繰り返しつつも、シュテンドウジとスサノヲの二人の視線はただただ敵を見つめていた。
「馬鹿言うな…俺がバテるかよ!」
ざわっとあたりを震撼させる程の殺気をシュテンドウジが放つ。
「本物との差俺が教えてやる!」
シュテンドウジの殺気に当てられた悪霊達が散り散りに逃げ出した。
「シューちゃんカッコイイー」
冷やかすようにスサノヲが笑うと「うるせー」とシュテンドウジが悪態をついた。
「頂上についたわけだがなんもねーな」
山頂の頂きに着きはしたが岩ばかりでめぼしい物は見当たらず、なぜあそこまで防御が硬かったのか疑問視すらしてしまう。
「この先の洞窟を抜ければ昔俺達が根城にしてた場所に出る…とりあえず情報がない今、進むしかねーか…」
慣れた足取りで獣道を進むシュテンドウジとイバラキドウジの後をスサノヲ達が小鴨のごとく付いて行く。
「大分変わったな…ここも…」
洞窟を抜けた先に赤い朱塗りの御殿が現れた。
恐らく殺界炉の影響だろう大地はやせ細り朱塗りの御殿も崩落寸前の様相だった。
「シュテンドウジ様…あまり建物に近寄らない方がいい…崩落しそうだ…」
「あぁ…分かってる…」
そう言いながら建物の柱をそっと触れる。正確には柱に付いた刀傷の血の跡に。
「感傷に浸ってる暇ねぇな…悪霊共を追い払えばまた来れる…」
自分に言い聞かせるようなシュテンドウジの声音にスサノヲが何も言わず抱き寄せる。
「行くぞ…殺界炉は必ず近くにあるはずだ…」
シュテンドウジはスサノヲに感謝を述べ歩きだした。
あたりを警戒しながら進むうちに霧が出始める。濃霧程ではないが戦うには不便だ。陣形を確認しながら歩を進めた。
「………イバラキドウジ…なんか体がおかしくないか?」
「シュテンドウジ様もか?」
体が痺れる様な少し動きにくさを感じる。
「スサノヲ…お前は?」
「いや、何も感じねぇけどな…」
妖だけに作用する霧なのか?ここは一度引くべきかもしれないと内心愚痴るもここまで来てと歯痒さを感じた。
「一度引き返しましょう」
オモイカネがシュテンドウジに進言すると渋々ながらもシュテンドウジが頷く。
「戦力が二人も削られちゃ下手に追撃は出来ねぇ…自滅するだけだ…一度引くぞ!」
辺りを警戒しながら元来た道を引き返すと無数の矢がシュテンドウジ達の頭上を襲った。
「危ねえッ?!!」
痺れた身体では咄嗟に避けれず頭上から降る凶器にシュテンドウジは身を竦めた。
「――――――ッ?!!」
待てども痛みは襲って来ず、恐る恐る目を開けると目の前の光景に愕然とする。
「スサノヲ?!!何して―?!!」
スサノヲがシュテンドウジとイバラキドウジを庇い数多の矢をその背に受けていた。
「身体が勝手に動いたんだよ…ッ」
スサノヲがシュテンドウジに覆いかぶさるように倒れ伏した。
シュテンドウジがスサノヲを抱きかかえるとその背からぬるりと血が溢れだした。
「スサノヲ?なぁ…何とか言えよ…なぁってば…!!スサァ…目開けろよ…ッ!」
スサノヲの肩を揺すり必死に呼び掛けるも意識を失っているようで返事は返ってこない。
「回復します!!」
ククリ姫が回復術をスサノヲに向けて展開する。
「スサノヲの事頼んだ…」
ゆらりと立ち上がり矢の降ってきた方角を睨み付け風の流れも味方したのか敵の姿が見えると
シュテンドウジはパキパキと指を鳴らしだす。
「アイツに矢射った奴誰だ…ぶっ殺してやる!!!」
ざわっと辺りが震撼した。これが八傑と呼ばれる男の殺気なのだ。味方であれば心強いが敵であればどれほど恐ろしいか体感してしまう。
勝負は一瞬と言えるほどに僅かな時間で片がついた。これがシュテンドウジの本気なのだ。
あまりに美しくあまりに強い。
「シュテンドウジ様…応急措置は終わりました…あとは本陣で休息を取らねば…」
「スサノヲの意識は?」
スサノヲの側に座り落ち着いた顔色に戻った事に安堵した。シュテンドウジはスサノヲの
さらりとした手触りの髪を撫でた。
「眠っておられます…」
「そうか…」
「シュテンドウジ様は急ぎ本陣へお戻りください…あとは私とイバラキドウジ様とで殺界炉を破壊します…先程カア君殿に応援を要請したので別部隊がすぐに来るでしょう…合流次第破壊任務に就きます」
「すまねぇ…」
一言謝るとシュテンドウジはスサノヲを担ぎ山を下る。山の麓に着くとそこに居るはずのない独神が待っていた。
「カア君から知らせが来たから迎えに来たよ…さぁ帰ろう?」
独神の力なら離れた大江山から本殿まで一瞬で戻ることが出来るだろう。独神の手から暖かな光が射し光り輝く蝶がひらりひらりと舞踊る。辺りが光に包まれるとシュテンドウジ達は気付けば本殿の大鳥居の前に居た。
「スサノヲを霊廟に運ぼう…」
「あ、あぁ…」
我に帰ったようにシュテンドウジがハッとしてスサノヲを抱きかかえる。ククリヒメの応急措置がなければ今頃どうなっていたのだろうと思うとぞっとした。
スサノヲを喪う?考えたこともなかった。
傍にいるのが当たり前で、喧嘩も絶えなかったがそれでもその一時に幸せを感じれた。
霊廟の布団に寝かされたスサノヲはまるで別人で人形のようだった。シュテンドウジだけが霊廟に残り眠るスサノヲの傍に座る。
「お前が死ぬなんて考えたこともなかった…でもお前が血に染まった時もうダメかもって……考えちまった…早く目覚ませよ…馬鹿っ…」
ギュッとスサノヲが眠る布団を握りしめる。
スサノヲが霊廟に入ってからすでに一週間が経過していた。看病の為ずっと霊廟の中で寝泊まりしていたシュテンドウジがフラフラな状態で霊廟から出てくる。
傷はすでに治っているのに意識が回復しない。アマテラスに言わせれば神は傷を負えばその傷を治すために数週間から数年の単位で眠りにつくらしい。
スサノヲの身体に突き刺さった矢は毒矢だったようで体の傷は癒えても体内に残った毒の浄化に時間がかかっているようだと頭から聞いた。
「いい加減目覚ませよ…いつまで寝る気だよ」
シュテンドウジは、スサノヲの眠る布団の傍に腰掛け何も言わず眠ったままのスサノヲの頭を軽く小突き、頬に手をあて軽く口付けた。ちゅっと名残惜しげなリップ音がし、はっとシュテンドウジが我にかえったようにバタバタと霊廟を退室する。
「あ゛ー…何してんだろ…俺…」
どこかの国のお伽話じゃあるまいにと独りごちて小さくため息を漏らす。お伽話のようだったら良かったのに…と。
「シュテン君…」
「ん?」
声をかけられ声のした方を見るとアマテラスが湯の入った手桶を抱えていた。
「スーくんの看病替わるよ…シュテン君もそろそろ休まないと倒れちゃうよ…」
「俺の心配ならしなくていーぜ?体力だけはあるからな…」
からからと明るく笑うもアマテラスに嘘は通じなかった。
「嘘だよ…シュテン君が無理してるのみんな知ってるんだよ…スーくんが倒れたのだってシュテン君のせいじゃないよ!だから…?!!」
「アマテラス…それ以上は言ってくれるな…」
皆が言う。俺のせいじゃない。気負うなと。
言うのは簡単なことだ。それを俺が納得できないだけなのだ。
「あ…ごめんなさい…」
俺の顔を見たアマテラスがはっとしたように驚きの表情になり慌てて踵を返した。
今の俺は一体どんな顔をしているんだろう―…
俺は考えるのをやめスサノヲのいる霊廟に向った。
「スーくんまだ目覚まさないね…」
ツクヨミが目を覚まさない弟の顔を突き回している。スサノヲが眠りについて20日間目になりアマテラスとツクヨミが無理矢理シュテンドウジを看病から外し交代しているのが今の現状で既に飽きてきたのかツクヨミのため息が部屋中に木霊する。
「スーくん…シュテン君心配してるよ…早く目を覚まして…あんな顔…シュテン君にさせちゃダメだよ…」
アマテラスがスサノヲに呼び掛けるように声をかけると小さく呻くような声がスサノヲから発せられた。
「え?今のスーくん?」
「あたしシュテン君呼んでくる」
アマテラスが慌ててシュテンドウジを呼びに部屋を出て行く。薄らとスサノヲの目が開き、確認するように視線が揺らぐ。
「こ…こは…?」
「スーちゃん気付いたの?!あたしよ?!分る?」
ツクヨミがスサノヲに呼び掛けるとスサノヲが煩わしそうに「分かる」とだけ答えた。
しばらくすると慌てたようにシュテンドウジが部屋に駆けてきた。
「スサノヲ?!」
「よぉ…」
スサノヲがシュテンドウジを見つけるとひらひらと手を振った。暫く寝ていたせいで身体を起こすのもままならないのかツクヨミの手を借り上半身を起こした。
シュテンドウジが側に近寄り震える手で確認するようにスサノヲの頬に触れた。
「お前…寝過ぎなんだよ!馬鹿っ!」
「悪いな…」
ボロボロと大粒の涙がこぼれ落ちる。
スサノヲが指先でシュテンドウジの涙を掬い取る。泣きじゃくるシュテンドウジの頭を肩口に押し付け頭をあやすように撫でた。
「姉貴たち…悪いけどこいつと二人にしてくれねぇかな…」
「ハイハイ
邪魔者は出て行くわ」
状況を察している二人はそそくさと部屋を出て行った。
「悪かったな…心配かけたみてぇで」
「っ…もう…目ぇ覚まさねぇんじゃねぇかって…思った…」
「大丈夫だって…俺はここにいる…お前の傍にいるから…大丈夫だって…な?」