2024-2-11 13:13
02/11 | 銀色の熱情
「あー。ジルにこのあたりの魚を獲ってもいいのかって訊けばよかった。うっかりしたな」
あのやりとりをしたあとで、そう思えるのが本当に凄い。
おそらく、訊いたところで教えてもらえなかったことだろう。
「魚は諦めて、近場の店に入らないか?」
「そうだね。肉にしろ、魚にしろ、獲ってたら遅くなっちゃうし、もうお腹ペコペコ。馬車に乗ってたから歩いてなかったのに、それでもお腹って減るんだなあ」
ラピスが自分の薄いお腹をポンポンと叩く。
馬車代でギリギリではあるが、食事をするお金くらいは残っている。宿代のほうは……。まあ、それから考えればいい。街には大体、獣の肉などを買い取ってくれるところがある。
一番近い食事屋に入る。店の中だけでなく外にもテーブルが置いてあり、海を見ながら食事ができるようになっているようだ。ただ、外で食事をとっている者は誰もいなかった。
勝手に座っていいものがわからなかったので、とりあえず先に店内へ入る。
「俺、外の席がいい!!」
意気揚々と告げるラピスに、女性店員がクスリと笑う。
「外は寒いですが、構いませんか?」
言われてみれば確かに、外で食べるには躊躇われる気温だ。誰も座っていなかったのも頷ける。店内は暖かく、席の半分以上が埋まっていた。観光客はそれほどいないと思っていたが、冬の海でも遊びに来る人間はそれなりにいるらしい。
「へーきへーき! 俺たち寒さには強いから!」
「かしこまりました」
通された席に座ると、ラピスが身を震わせた。暖かい店内から出て寒かったのと、椅子の冷たさのせいだろう。
「本当に外で大丈夫か?」
「へ、へーき……」
「さっきより声に元気がないが」
「ちょっと歯の根が合わなくなっただけだから平気!」
それは平気なのか。
「俺、この海の幸シチューっていうやつにする。あとパン」
「では私もそれを」
「クォルツ、肉じゃなくていいの?」
もちろん肉のほうが好みだ。だが、ラピスと同じものを食べてそれについて会話をするのは、きっと食よりも大事なことだと思った。それにまあ、川でとれたものとは違い、美味いかもしれない。
「その街の名物は食べておかないと、だろう?」
「うんうん。もちろん!」
「海の幸シチューとパンをそれぞれおふたつでよろしいでしょうか?」
「よろしいです!」
元気いっぱいにラピスが答える。旅がよほど楽しいのか、新しい街へつく度にはしゃぐ姿が見られるが、今日はどこか、無理して元気でいるようにも見えた。
あのやりとりをしたあとで、そう思えるのが本当に凄い。
おそらく、訊いたところで教えてもらえなかったことだろう。
「魚は諦めて、近場の店に入らないか?」
「そうだね。肉にしろ、魚にしろ、獲ってたら遅くなっちゃうし、もうお腹ペコペコ。馬車に乗ってたから歩いてなかったのに、それでもお腹って減るんだなあ」
ラピスが自分の薄いお腹をポンポンと叩く。
馬車代でギリギリではあるが、食事をするお金くらいは残っている。宿代のほうは……。まあ、それから考えればいい。街には大体、獣の肉などを買い取ってくれるところがある。
一番近い食事屋に入る。店の中だけでなく外にもテーブルが置いてあり、海を見ながら食事ができるようになっているようだ。ただ、外で食事をとっている者は誰もいなかった。
勝手に座っていいものがわからなかったので、とりあえず先に店内へ入る。
「俺、外の席がいい!!」
意気揚々と告げるラピスに、女性店員がクスリと笑う。
「外は寒いですが、構いませんか?」
言われてみれば確かに、外で食べるには躊躇われる気温だ。誰も座っていなかったのも頷ける。店内は暖かく、席の半分以上が埋まっていた。観光客はそれほどいないと思っていたが、冬の海でも遊びに来る人間はそれなりにいるらしい。
「へーきへーき! 俺たち寒さには強いから!」
「かしこまりました」
通された席に座ると、ラピスが身を震わせた。暖かい店内から出て寒かったのと、椅子の冷たさのせいだろう。
「本当に外で大丈夫か?」
「へ、へーき……」
「さっきより声に元気がないが」
「ちょっと歯の根が合わなくなっただけだから平気!」
それは平気なのか。
「俺、この海の幸シチューっていうやつにする。あとパン」
「では私もそれを」
「クォルツ、肉じゃなくていいの?」
もちろん肉のほうが好みだ。だが、ラピスと同じものを食べてそれについて会話をするのは、きっと食よりも大事なことだと思った。それにまあ、川でとれたものとは違い、美味いかもしれない。
「その街の名物は食べておかないと、だろう?」
「うんうん。もちろん!」
「海の幸シチューとパンをそれぞれおふたつでよろしいでしょうか?」
「よろしいです!」
元気いっぱいにラピスが答える。旅がよほど楽しいのか、新しい街へつく度にはしゃぐ姿が見られるが、今日はどこか、無理して元気でいるようにも見えた。
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