動け!!!
動け!動け!動け!!!
ググと動こうとするが、動けない。
「鬼神皇爆龍破!!!!」
バオッッ!!!
両手を突き出し、溢れんばかりの気がリキャルダへと放たれ、リキャルダを巻き込み会場を突き破り、雲をさき遥か天空へと放たれる。
プシュゥゥゥゥ……
手から煙が出て、全てを解き放った龍次郎。
完全に消しとばしたと確信し、前を見つめる……
「…は…っ、はっ……」
全てを受けきり、荒い息のまま体全体から緑の粒子を出し続けているリキャルダが、体全体からブスブスと煙を上げて構えて立っている。
「ば、か、、な……
冷却、装置を……、使って……」
「お、わり、、だぁぁぁ!!!!」
全てを放出し、動けない龍次郎にリキャルダが体を揺らし、突っ込むように近づいていき、壁まで吹き飛ばす右ストレートを放つ。
壁にはねかえる龍次郎に右フックと左フック、アッパーを全力でぶち抜くように何度も何度も叩きこんだ。
ドドドドドドドドッッッッ!!!!!!!
なす術なく縦横無尽の超強打の連打をその身に浴び続ける龍次郎。
エネルギーフィールドを突き破り、客席に埋め込まれてもまだ殴り続けるリキャルダ。
「ーーーーーーッッ!!!!!」
何もかもを考えずに、目の前の相手にパンチを打ち続けるリキャルダ。
ふいに目の前に小さな何かが飛び出してきた。
ソレに気付いたリキャルダは小さなソレに拳を打ち込む寸前に拳を止めた。
「リッちゃん……」
「ユ、キコ……」
我に帰ったリキャルダが回りを見回すと、ガードナー達が駆けつけて、リキャルダを止めようと飛び込もうとしていた。
会場から歓声がわき、巨大な花吹雪が会場を包み、ファンファーレが鳴らされた。
「おめでとう……
優勝おめでとう……!
リッちゃん!!!」
抱きつくユキコ。
大切な者を取り戻した瞬間、初めて勝ったという実感が沸いたリキャルダ。
「やった……、やった!
やったぞ、ユキコォッッ!!!」
ユキコを高く持ち上げるリキャルダ。
その顔に抱きつくユキコ。
祝福とともに二人で、闘技場へ入り待っていた大会実行委員達がチャンピオンベルトと賞金10億$を持って佇んでいた。
既に入賞が決まっている同率第三位のフィーと遜が見守るなか、チャンピオンベルトと賞金を受け取り、賞金を肩車してるユキコに渡してベルトを天高く掲げて見せ、会場が歓声に包まれた。
決勝戦
●龍次郎×リキャルダ○
68分39秒
MX・デンプシーロール
喋る事に体力を使う前に拳を撃ち抜くリキャルダ。
ぴょんと飛んで膝で受け止め威力を殺し受け流す。
ギャオオッッ!!!
龍次郎のリキャルダに対する顎へのサイドキック、足が空をきり、頬に衝撃が走る。
「オオオオ!!
体が残った、龍次郎!」
首の力で右フックを撃ち抜かれないようにしてる龍次郎。
「ジャッ!!!」
死角からジャブより速い踵落としをふりおろす。
「………!」
空をきる龍次郎の踵落とし。
そして、リキャルダの左ジャブが胸部に突き刺さる、少し曲がった体の横に右ボディフックが突き刺さり、龍次郎の体がくの字に曲がった所に顔に大きなロングアッパーが撃ち抜かれる。
「リキャルダのKOパターンだ……」
ロングアッパーによって打ち上げられた顔に最大の右ストレートが体ごと叩きつけるように放たれる。
「………!!」
突如、龍次郎の姿が消え、下から凄い衝撃が叩きつけられ、遠くまで吹き飛ばされる。
「なかなか効いたぜぇ……
でもよぉ……」
吹き飛ばされた先に先回りし、思いきり踵落としを落とす。
地面に叩きつけられ、跳ねるリキャルダを地面に蹴りつける。
『あの人間!
アタシと同じ事を!!
面白いヤツ……』
ルージュリットは人間界で(あくまで人間界で戦った場合)、初めて同レベルの戦闘能力を誇る人間を感心してみる。
「ウオァァァ!!!」
そのまま蹴りあげたリキャルダを首に足を引っ掻けて、足で首から叩きつけようとする。
ズガン!!!
足が地面を砕き、リキャルダを逃す。
死角からコースクリュー左ジャブが何発も龍次郎に襲いかかる。
起き上がりを狙われた死角からの猛撃が全弾ヒットし、龍次郎にダメージを与える。
「この!!!」
素早い蹴りがまたもや空をきる。
圧倒的スピードでとてつもない速さの蹴りを避け続けるリキャルダ。
『あの人間も速くて良いわねぇ
いつか、遊んでみたいものだわ
』
龍次郎の竜巻のような光速の連蹴りを近距離でシフトウェイト(体重移動)とフットワークを使って、避けながら左ジャブを放り続ける。
チクチクと、しかも重てぇじゃねぇか……
バチバチと当たる左ジャブをうっとおしがる龍次郎。
バチンと一際、大きな音がなる…
龍次郎がリキャルダの手を掴んだ音だ。
動けない所に膝蹴りが直撃させられ吹き飛ばされる。
「そ、れを掴むかぁ〜〜…
剛馬龍次郎〜……!」
遜が、世界チャンプの左ジャブに対する龍次郎の荒業に驚愕する。
「楽しもう…、とことんまでな……」
試合開始から怒り顔のリキャルダに対し、ニヤニヤと笑いかける。
とにかく喋らず、攻撃を続けるリキャルダ。
冷静に一つずつ見てかわし続ける。
「いい、とてもいい速さだ…
まるで夢のような一時だ……」
龍次郎の光速の左ジャブがリキャルダにめり込む。
「もういいだろ……
」
左ジャブから連携で全力で拳をふりおろす、胸部に直撃したその拳がリキャルダの心臓の鼓動をとめ、身体な動きを完全に停止させる。
「終わらせるぞ……」
身体が止まって動けないリキャルダ。
一瞬、呼吸困難にすら陥るなか、龍次郎が0距離で両手に闘気とエネルギーを集める。
[5日目 リキャルダ=マルコス&剛馬龍次郎]
「なに……
きさまぁ…
今!なんと言ったぁぁぁ!!!」
草原のど真ん中に呼び出したリキャルダがもちかけた話に龍次郎が激怒した。
その叫びが周りの動物を撤退させた。
「次の試合…
私は棄権する……
私はもう目的は果たした…
君と戦う理由はない…」
「バカかてめぇっ!!!
待て、こらぁぁ!!!」
「君と話す事ももう無いだろう…」
リキャルダは立ち去ろうと歩き出す。
その背中を龍次郎が掴む。
リキャルダは踏み込み前進、龍次郎の手をかわし、行ってしまう。
「ーーーーーッッ!!!!」
手を握り悔しがり、思いきり地面に叩きつける龍次郎、地面にクレーターが出来た。
「なら……
棄権できぬようにするまで……」
「はは……ハハハ!!
ハハハハハハハハ!!!!!」
[決勝当日 リキャルダ]
ちゃん!!
リッちゃぁん!!!
「ん…んん……
ぐ……」
たすけ…
助けて!!!
「ぐ……ぐぐぅ…
……はあぁぁ!!!」
とびきりの悪夢を見せられたリキャルダが飛び起きた。
周囲を見回し、ユキコの姿を確認する
「ユキ、コ…!!
ユキコ!!!」
スイートルームの部屋を走り回り、ユキコの姿を探す。
すると、机の上にリキャルダが二枚の紙を発見した。
「ふぅ…
私も慌てものだ……」
その紙をみるため、歩を進めるリキャルダ。
「こうして、置き手紙…が……」
『決勝に出ろ、この事が守れぬなら…
愛しき恋人の命の保証はない!
剛馬龍次郎』
手にとった手紙にはこう書いてあり、縛られ口を塞がれ身動きの取れない写真が置かれていた。
「りゅ……じろ…
ウオオオオ!!
龍次郎!!剛馬龍次郎ォォォォッッ!!!!!」
ホテル中に響き渡るような大声が響き渡った。
[闘技場]
「それでは……
決勝戦を始めます!!!」
「東!
剛馬龍次郎選手!!!」
剛馬龍次郎がふてぶてしく闘技場へ上がってくる。
「西!
リキャルダ=マルコス選手!!」
続いて凄まじい形相で立ちはだかるリキャルダ。
「ユキコは……」
「安心しな……、あんな女、俺はどうだっていいんでな……」
「決勝戦…始め!!!」
「手加減は…せん!!!」
MXが発動、龍星戦とは比べ物にならないほどの緑の粒子が吹き出す。
「なるほどな…
その光の正体はエンドルフィンという訳か……
気分によって放出される量が決まるエンドルフィンを装置がエネルギーに変えたというわ……!」
しゃべってる最中に思いきり殴られ壁まで吹き飛ぶ龍次郎。
「すぐに…雑音にしてやる……」
「久々に…本気が出せそうだ……」
龍次郎の筋肉が異常に変形、巨大化し、まるで鬼のようになる。
「さて…
始めるぞ!!!」
二人がお互いに向かって駆け出した。
[一日目〜遜 龍趙〜]
「1週間……
なにをすれ…
オヤ…?」
闘技場を後にした遜はクールな笑顔で佇む一人の女性を見つけた。
その女性は腰にスイス製の特別剣を挿し、遜に話しかけていき小洒落たバーへと誘ってきた。
「ふぅ……
負けたようですね…」
「くッ……
凄イ、ハッキリ言うな…
」
女性はカクテルを飲みながらバーに入ってからの第一声を放つ。
遜は何も反論出来ず、バーボンをすすった。
「それにしても今回の大会…
なぜ出なかっタのだ?
キミ位なら招待状は来テタんじゃないカ…?」
ぐぐっとまた一口呑む。
「かつて…最悪の殺戮戦とナッた、クレーメン戦争……
数億という圧倒的な数のモンスターが世界中に押し寄セタ闘い………
その前線メンバーで数少ない生き残リ…
スイス代表……クレセレス=ムーン…」
「人の経歴をペラペラと喋るものではないわ。
月光聖皇会の仕事がね…」
「強さを見せつけての聖皇会の布教…カ……」
「否定はしないわ……
それで、また3日後にはインドに飛ばないといけないんです。」
クレセレスはカクテルを遜はバーボンの残りを呑みほした。
「そうか……」
「残念…ですか?」
「何故ダ?」
「そう…見えたので。」
カランとバーボンの中の氷が音をたてる。
二人の間に大人な沈黙が流れた。
その沈黙が意図する事を遜は察していた。
「私とキミは…
あくまでライバルだ……」
自分の金を置いていって遜は赤くなった頬を見られないように出ていってしまった。
「……………
…連れない人……
マスター……カクテル…
ロスト・ローズマリー(叶わぬ情愛)……」
「かしこまりました………」
クレセレスは一人寂しくカクテルをすすった。
[3日目〜木村愛美〜]
ショッピングから帰った愛美とクリシスが椅子に腰かけ荷物を置く。
兄が生き返った事に浮かれていた愛美はある真実に気づいていた。
「大会が終わったら、お兄ちゃん、アインシュテルン家の実家に帰っちゃうの?」
クリシスはあくまでも従兄弟、義理の兄。
本家があるのだからソッチに帰るのが筋である。
愛美はクリシスが本家に行くなら自分もついていく覚悟だった。
「帰るも何も、戸籍も死亡扱いになってるだろうからな……
一人でひっそり山の中ででも暮らそうかと思ってる…」
ピクッと体が反応した愛美。
「じゃ…じゃあ……
お、お兄ちゃんさえ良かったら…
わたしと…暮らさない……?
その…二人っきり……だけど…
私…お金は……たくさん…あるし……」
だんだんと声が小さくなってモジモジしていく愛美。
「本当かい?
そう言ってくれると助かるよ
」
好きな人との二人暮らし…
照れ屋な愛美はうつ向いたままクリシスの顔を見上げていた。
準決勝が終わり闘技場に大会の三人の実行委員会長が出てくる。
「みなさん!
とうとう、最強の二人が出揃いました!!」
「しかし!!
準決勝という激しい闘いをくぐりぬけた両雄は疲れきっています!!!」
「そこで私達はこの偉大な両雄にさらなるバトルを繰り広げてもらうため!
1週間の休養期間を用意しました!!」
会場中からえぇぇ〜〜っという声と空気が流れる。
[控室]
「全くこすい奴等だ……」
「優しい委員会さんですね
って、お姉さん??」
全く反対の意見をいうクルーエルとフィー。
クルーエルがモニターから見えるVIR席を指差す。
「奥の方にいる奴…
ここの市長と今の経済大臣だ……
おおかた、大イベントに嗅ぎ付けて他国のセレブからたっぷり1週間金を絞りとろうって魂胆だろうよ。」
「へぇ………」
同じくVIR席を見た。
「ま
その期間、ただであのホテルに泊まれるんだから良いじゃん
」
後ろからミンクが出てきてへらへら笑っている。
「1週間、仲良くやりましょうね……
」