「今日は満月か…。」
闇の空に浮かぶ、月。その光はあたりを照らし出す。
それは当たり前のことで。
人を斬って、殺して、それを繰り返す汚れた僕の生活もまた当たり前なのに。
「近藤さんのために」。その思いだけが僕を動かす。後悔なんてしてないし、誇りも持ってる。それが僕のすべてなんだ。
…でも、夜空を見上げるとその決意を咎めるかのように、月は僕を見てるから。
綺麗すぎて、無性にうっとおしい。
「…隠れてないで、出てきたら?」
僕は少し前から人の気配を感じていた。
『あ…!ごめんなさい!なにか考え事をしてるように見えたので話かけづらくて…。』
横目でちらりと見ると、申し訳なさそうにオロオロしている女の子がいた。
僕は一瞬ふっと笑って君に振り返った。
「どうしたの、こんな時間に?もしかして、眠れないとか?」
『あ…はい、目が覚めてしまって夜風にでも当たろうかと。』
いつもと変わらない様子の僕に安心したのか、君は柔らかな微笑みを浮かべる。
「じゃあ、僕と同じだね。折角だし君もこっちおいでよ。」
『…はい!』
僕の隣にちょこんと座る君。
最近は君の行動にいちいち目が行ってそれを見て微笑んでる僕もいる。
君は見てて面白い子だから。
沈黙が、2人を包む。
君を誘ってみたものの、特に話さなくちゃいけない話題があるわけでもなく。ただの気まぐれなんだよね。
今どんな顔をしているか、君を観察しようと視線を向けると、君は空を見上げ微笑んでいた。
「…最近、よく笑うようになったよね。」
僕がぽつりと呟いた独り言に、君は少しびっくりしてこちらを向く。
『そう…ですか?』
「うん。最初の頃なんていつも浮かない顔してたし、なんだか怯えてたみたいだったから。」
『そ…それは…その…新選組の皆さんの噂が…その…』
言いたいことは何となくわかるけど、僕を気遣ってか中々はっきり言わない君。
「そりゃ人斬り集団の屯所にいきなり監禁されたら、誰だって怖いよね」
僕は笑いながら話す。
『す、すみません…。』
今思うと、僕だって最初は君によく「斬る」とか「殺す」って言って怖がらせてたかもね。
…まぁそれは今でも言うけどさ。
『でも、新選組の皆さんはとても親切な方達ばかりばかりでした』
きっと今までの思い出を振り返っているのだろうと、君の楽しそうな笑顔から想像ができる。
『…今日は月が綺麗ですね。』
「ん?そうだね…。」
『沖田さん達に初めて会った日も月が綺麗な夜でした。』
「そうだったかな?」
…なんてホントは覚えてる。なにか面白いことが起こりそうな夜。君に…出会った夜だった。
『こんな日はお団子でも食べながらお月見したいです。』
「くっ…はっはははっ。」
『えぇ!?なっなんで笑うんですか沖田さん!?』
「いや、食い意地張ってるなぁって思って。」
僕は真面目なことばかり考えてたって言うのに、ホント君って子は…。
笑いを堪えながらそう言うと、君はみるみる顔を真っ赤にしていく。
『!そんなつもりじゃ…!もう…沖田さん…!』
拗ねる君がとても可愛くて思わず君の髪を撫でた。
『あ…。』
そうすると更に顔を赤くして俯いておとなしくなってしまう。
僕は君の顔を覗き込むように近付いた。
「どうしたのかな、顔が赤いけど、風邪でも引いた?」
『かっ…風邪じゃないです!』
視線を背けたまま君は言う。
ホント、可愛いなぁ。
あんまりからかうのも可哀想だし、この辺にしといてあげようかな。
僕は気分を良くして微笑みながら立ち上がった。
「お団子、探してこようか?土方さんのが残ってるかもしれない。」
『えっでも…』
「大丈夫、土方さんに怒られても僕が守ってあげるから。」
そう言って笑うと、君も笑った。
その笑顔は月明かりに照らされて、とても綺麗だった。
ずっと見ていたい。
君はなぜか僕に安らぎをくれる。
いつの間にか僕の中で君の存在が大きくなってるのを感じる瞬間。君の存在の意味が変わる瞬間。
あの満ちる月みたいに君にも僕を見守ってて欲しい。…贅沢な願いが芽生えそうな…不思議な夜。
僕は…疲れてただけなのかもしれない。ただ月明かりの優しさに八つ当たりをしていただけなのかもしれない。
もう一度夜空を見上げる。
夜の闇は月の明かりだけが頼り。
僕の側には君がいる。
END。
――――――――――――
お久しぶりです!
先日やっとPSPの薄桜鬼と随想録の沖田さんを攻略しました!ずいぶん前に買ったのですがなんだかもったいなくてできなかったんですよね(^-^;
ゲームをプレイして、前より沖田さんのことを理解したつもりです!!
胸を張って沖田さんが好きだと言えます!
そして書きかけで止まってたネタを更新。いかがだったでしょうか?
伝えたいこと、文章にするのは難しいですね。
読んでくれてありがとうございました!