Twitterでよろしくやっているセーフティ拳銃ことNTYくんとの待ち合わせに遅刻した僕は渋滞で進みの悪いバスにとっとと見切りをつけて2kmほど走った。
待ち合わせ場所である沖縄県庁前で合流したNTYくんは気さくなナイスガイで、ともに道に迷いながら予約しておいた居酒屋である【アフロネスト】へと向かう。
店員全員がアフロだと思っていたのにね、と互いに話しつつオリオンビールで乾杯して東京にいるハードワーカーな浮かれポンチどもや僕の母がマルチにはまったことなどについて話しつつご飯を食べて、のんびりと過ぎる時間を楽しんでいた。
NTYくんはちょっと酔ったらしくまどろんでいるかのような表情を時折見せていた。
三時間飲み放題も終が近づき、これからどうするかという話をしていたらNTYくんが風俗の話をして、そういえば国道越えたところにそういう場所があるよと僕も話し、じゃあここ出たら行ってみようかという流れになって本当に向かった。
お酒で気が大きくなっていたのも否めない。
するとまだ国道沿いであるにも関わらずその区域に差しかかったとたんに見知らぬ男が近づいてきて「おみせきまりました?」と行ってくるので二人して強張った。
男は続けてこういう。
「あ、ちなみにおふたりはじゅんさじゃないですよね?ぼくさんかいつかまったことあってこのまえはちじゅうまんはらってるんですよ」
キャッチ行為は違法だということをどこかで聞いたことがある気がする。ネットか。
さらに怖いことにその男が話しかけてきている最中にもどんどん成人式でネバーランド魂を炸裂させてきたような黒服の男たちが集まってきては「お店お店」「女の子女の子」「ソープソープ」と口々に。
完全に怯えた僕とNTYくんはローソンに逃げ込み、スマホで二十分ほどこの一帯の情報を仕入れまくった。
風俗経験のあるNTYくんといえどこのレベルのキャッチは異常だといった。
ああ、やっぱりそうなんだ。
僕は単に自分が世間知らずなだけだったわけではないことを知ってひと安心。
もう少し離れたところを散策しようと二人でまたブラブラを開始、キャッチの気配のない静かな裏通りを歩いていると今度は車道のタクシーが勝手に止まる。
「お兄さんたち!お店決まった!?」
僕らは再度強張ったが震える声で「散歩ですから!」と返し続けた。
気がつけばホテル街。
タクシーから降りる男女を眺め、このままじゃホモのカップルみたいだからと国道を抜けた。
東京にもお店があるとか謳っているバーに入ってコロナで乾杯した。
夜の街の色香にのぼせちまったみたいだな、と二人しみじみと過ごした。
メニューに記載されている値段は700円だったコロナが会計時1000円になっていたのは僕らが酔っていたからなのだろうか。
気がつけば午前二時。NTYくんとはそろそろお別れだということで再度県庁近くまで歩きコンビニに入る。
NTYくんは72歳のおばあちゃんに迎えに来てもらうらしい。
午前二時に車を運転するなんてすごいと23歳の僕は思う。
NTYくんと握手をして分かれる。
楽しい夜だった。
もうバスはないからどうしようか、ネカフェにでも行こうかなと思いながらブラブラしていると風俗情報を仕入れようと連絡していたHくんから返信が来ていた。
“うちに泊まっていけば?”
半分期待をしていた自分を恨めしく思いつつ即座に喜びの返信をした。
Hくんも会社の方と飲みだったらしく、まだ部屋には戻っていないとのこと。
しかし入口のオートロック解除ナンバーを教えてくれ、部屋に上がって寝ていていいという。
なんて男だ。
僕はお言葉に甘えて本当に部屋に上がりこみ、そのまま横になった。
しばらくしてHくんが戻ってきたのでお礼をいいつつすぐに寝た。
長いようで瞬く間の、儚い夢のような一夜だった。
あっという間の中に多くの人の何気ない優しさ、何気なくない優しさが満ちている。
秋元康が書いた『川の流れのように』という歌があるが、もしかするとあれは風俗帰りにでも浮かんだ歌詞じゃないだろうかと僕はふと思う。
ふざけやがってあのデブ。