竜の出てくる話を読ませていただいて、私も書いてみたい!と思い、短編として載せていくことにしました。コメディだと思われる。
添付ラクガキは、今回の主人公ゲルト。巨人です。



話題:連載創作小説

緑の風を連れ、太陽の輝きを纏う少年は、祖国を離れた地で頭を垂れた。


―どうか、私に宝を守護するお力添えを!―

相手は首を傾げ、なぜ自分に助力を求めるのか尋ねた。
彼には他人に頼らずとも強力な武器があり、数々の道具をもちあわせている。
何より、敵である自分に助けを乞う理由がわからない。
少年はそれに対し、真っ直ぐで淀みのない答えを返した。


―怪物を生んだあなたなら、最高神とあなただけがもつ力で私を最強の幻獣としてくれるだろう!―


可愛い我が子を怪物呼ばわりするとはいい度胸だ。
だが、威勢のいいバカは嫌いではない。幻獣を味方につけるのも、後々自分に優位に働くだろう。

承諾の意に、少年は素直に歓喜した。
これで宝は守られる。
大事に大事に…誰の手にも渡さない。


「宝を守護するドラゴンよ。
多いに俺を楽しませておくれ」

力を与えた彼の者はそう言うと、流れ星のごとく軌跡を描いて夜空に消えた。



【全てが滅ぶその前に】



あぁ、巨大な樹よ。
我ら生けるものを見下ろし、悠然と構えてよいのはあなただけだ。

そう、あなただけ。

「神族が偉そうに指図すんなっての!!」

樹が、あのユグドラシルの大樹様が決めたことならば喜んで従おう。
だがしかし!
我ら大地の子祖である巨人族を虐げたばかりでなく、大樹の目の前に国を築き、神のように我らに命令する不届き千万!!

「誰が神族と結婚なんかするか!」

マジないわ!
目の敵にしといて『お前可愛いから嫁に来い』とかないわ!!

まぁ、私の目はキリッと美人目だし、白い肌は自慢だし、蜂蜜でケアしている白髪は輝いて、ナイスバディ…でありたいと心がけてはいるが?

目が肥えていても、生物の頂点に立っていると思っているふざけた神族なんて願い下げだ。

「私は自分の力でここを抜け出すだけよ!!」

渾身の一撃を拳に乗せて相手の腹に打ち込めば、ミノタウロスが宙に舞って太陽に隠れるまで飛んでから落下した。

「ゲルトの勝利!!」

オオオ!

「ゲルト!ゲルト!ゲルト!」

ミノ太朗ごめんよ…。
私は心の中で謝りながら気絶しているミノ太朗をつまんで歓声に答えた。


「ゲルト、お疲れ様。
今日の試合は随分と荒れていたね」

主に私の心がな!ハゲ!とか雇い主に悪態つきながら、手のひらに乗せられた賞金を数える。
グラディエーターとして人間の作った闘技場に送り込まれて、早十年。私は打倒神族!と意気込んで旅に出た矢先に人間の罠にはまって捕まってしまったわけなのだが、ここでも目標を持って生きている。
憐れんだりはしないでほしい。涙が出るから。

私の今の目標は、闘技場に送り込まれる仲間を自分の賞金で買い取って自由にすることだ。
さっきのミノ太朗だって、殺したわけじゃない。
治療が終われば、今回の私の賞金の半分で解放してやれることだろう。
で、残り半分は自分貯金だ。
私だってグラディエーターなんかやめてしまいたいからな。無職になった時の貯蓄だ。

「大分貯まってきた。
けど、投資し過ぎたかな…」

金貨の入った壺を見つめて、思ったより増えるのが遅い中身にため息をつく。
打倒神族!と同じように、ここの全員を解放するという目標は大きすぎるのだろうか。

「いっそのこと、強くて金持ちな巨人族と結婚して…」

神族倒して、皆を解放してもらうかとか考えたら嫌なこと思い出した!

「あの神族、結婚申し込むとかありえないっつーの!」

ドスンドスンと地団駄を踏めば天井からパラパラと塵が落ちてくるが構うもんか。
私を巨人族と知ってからかっているに違いない。
人間サイズのあいつらと私達巨人族が結婚とか、ユグドラシルが燃え尽きてもあり得ないわ。
だってそうでしょう?
心情的に無理な上に、物理的に一緒の家に住むとかおかしすぎるわ!
チグハグだらけだわ!
それにどうやって子孫をのこ…



「乙女になにを想像させるんじゃこらー!!
神族のばーか!全部神族が悪いんだ!」

あぁ、頭に血がのぼりすぎた。体育座りして落ち着こう。

「結婚を承諾したらここから出すとか、ほんと神族って権力の塊で憎たらしい」
ちくしょう、またあらぶってきた。


ズシン…ズシン…


まさしくこんなかんじで、地面を揺るがすくらい暴れたいわ。
今は誰が闘技場に出ているんだろう。

ズシン…ズズン…!

オオオオ!

「あ。聞こえる」

歓声に混じって勝利の咆哮が私の耳にも届いた。
この鳴き声をあげるのは一匹しかいない。


「ドラゴン」


宝を守っていたって噂で聞いたけど、あんな強い奴がなんで闘技場に囚われているんだろう。


「あいつ倒したら一気にお金が手に入るな…。


地獄行き切符も手に入りそうだから当たりたくないけど」


誰に言うでもなく、私は闘技場の地下室で目を閉じた。



【全てが滅ぶその前に】―貯金編―




たぶん続く?