話題:ちょっwおまw


先日の夜、リビングのソファーに深々と腰かけながら某トーク番組の仮面ライダー特集を観ていました。すると、既に床についていた母親(推定年齢246才)が、喉が渇いたらしく起きて来たのでありました。そういうわけで彼女が冷蔵庫から取り出した〈カラダ健やか茶W〉を飲む間、しばし共に番組を観る運びとなったのです。どうやら母親は母親で、子供の頃の私に付き合う形で特撮ヒーロー番組を観ていたせいで、仮面ライダーやウルトラマンに対してはそれなりに思い入れがあるらしい。もちろん、昭和ライダーの話です。

そうこうする内、オダギリジョーさんが仮面ライダーだったという話になったので、その流れを汲む格好で、「そう言えば、村上弘明さんも仮面ライダーだったんだよ」と私が言うと、母親は「えっ!」と驚きの声を小さく上げました。「村上弘明さん、知ってるよね?」。「知ってる。あのいつも真面目そうな顔してる人でしょ」。「そうそう。何を隠そう彼も仮面ライダーだったのですよ」。私が再度ダメ押しすると母親は実に意外そうな顔をして「驚いた。どう見てもそういうキャラじゃないのにね」。まあ、確かに意外と言えば意外かも知れません。今の村上さんに仮面ライダーっぽい雰囲気はありません。…もっとも、素の状態で仮面ライダーっぽい雰囲気を出している役者――教師役でライダーベルトを常に装着していたり、刑事役でライダーバイクに乗っていたり等――はそう居ないとは思いますが。とまあ、そんな感じで、その時の会話はそれで終了となりました。

さて、コケコッコーの翌朝。朝食卓の席で「でも、村上さんが仮面ライダーだったのは意外」と母親が言ってきたのです。この人は、前の日に何か言っても一晩寝ると忘れてしまうニワトリ型の脳タイプなので、村上さんの話を覚えていただけ優秀とも言えるでしょう。よほど意外だった模様。ところが、彼女の次の一言で事態は一変する事となるのです。その一言とは、こうです。

「でも、正義の味方が逮捕されちゃまずいわよね」。

えっ。村上弘明さんって逮捕されたっけ?しばし、黙考。黙考しすぎてくっついた。黙考用ボンド。それを言うなら木工用ボンド。007。ジェームズ・木工用・ボンド。で、得た結論。いや、村上さんは逮捕されていないはず。

「村上弘明さん、逮捕されてないでしょう?」。

「されたわよ。何年か前だけどけっこうニュースで騒いでたもの」。

「何の容疑で?」。

「よく判らないけど、株とか投資ナンチャラの関係?」。

投資ナンチャラって何だろう?まあ、それは置いておくとして、どうやら話が見えてきました。そして、私はそれを確かめるべく訊いてみたのです。

「もしかして、ユーは村上ファンドの事を言っているのかな?」。

すると案の定、母親は、当然といったふうに大きく頷きました。

オー・マイ……スパゲティ!

「あの……村上弘明さんって、村上ファンドの代表の人じゃないからね」。

「えっ?」。

ここで皆様には、夕べの会話を思い出して欲しいのです。私は、彼女に村上弘明さんを知っているかどうか一応確めていた筈。「あのいつも真面目そうな顔してる人でしょ?」。「そうそう、その人」。このやり取りこそが迂闊でありました。確かに村上代表もいつも真面目そうな顔をしている。…と言うよりは、メディアに登場する時は職業柄と言うか立場的に真面目な顔をしていなければならないのでしょう。巨額のマネーを扱う投資ファンドの代表が、“ダヨ〜ンのおじさん”みたいにヘラヘラと間の抜けた顔では、さすがにちとマズい。恐らく誰も出資しないと思います。

それにしても、“真面目そうな顔”のワンフレーズで互いに自分の思っている人で間違いないと信じてしまうのだから、思い込みというのは恐ろしい。それでも、早めに誤解がとけたのは本当に良かったと思います。でなければ、母親は友人たちに「村上ファンドの代表は昔、仮面ライダーだった」と話し、そこからガセネタが広がらないとも限らないからです。


〜おしまひ〜。