話題:SS

手帳をね、二冊持ち歩いているのです。

一冊は、まあ普通の手帳です。仕事のスケジュールだとか会合の約束だとか、普段の予定を事務的にメモしておくやつ。

もう一冊は、詩の手帳です。照れくさいのでさらっと言いましたけど、はい、詩です。そうです、英語で言うところのポエム。恥ずかしさが倍増するので何度も聞き返さないで下さい(笑)。ふとした瞬間、頭に浮かんだ詩のようなものを、忘れないように書き留めておく。そういう手帳です。

これ、私の勝手な考えなのですけど、人が頭に思い浮かべる(た)事柄って、概ね四つに分けられると思うのです。性格的な大別という意味で。

@言葉にして誰かに向けて話すのに適しているもの。

A文字にして紙面に書き記すのに適しているもの。

Bそのどちらにも当てはまらないもの。

Cそのどちらにも当てはまるもの。

何だか大雑把な分類ですけど、大体そんな感じです。詩の手帳は当然Aのケースになるのですけど、紙面に当たるものが手帳で、書かれる内容が詩のようなものである事が多いと。

いえいえ、詩人ではありません。思い浮かぶのが、あくまでも“たまたま”詩であるというだけの話で。趣味とも言えないような、ほんのお遊び、独りぼっちの座興です。

ただ、時々それで少々困った事になる場合がありまして――と言うのも、恐らく私の筆圧が弱いせいだと思うのですが――書いた詩を何処かに落としてしまうのです。ええ、手帳の紙頁から詩が、つまり文字が落ちてしまう…。

スルッと落ちたのか、カサッと落ちたのか、ポトリと落ちたのか、はたまた音もなく落ちたのか、それは判りません。でも、気がついたら書き留めて置いた筈の詩が手帳の中の何処にも見当たらない、そういう事があるのです。けっこう簡単に落ちますよ、文字って。

もっと強くペンを押し当ててしっかり書き込めば良いのでしょうけど、書き癖なのか、それとも握力が足らないのか、つい、ササーッと軽く書き流してしまうんですね。どうしても文字と紙のくっつき方が弱くなる。それで、時間が経つと紙から文字が剥がれ落ちてしまう、と。勿論、揺さぶられたりすれば尚更です。ランボーとかヴォードレールだと、こんな事にはならないのでしょうね。だって彼ら、筆圧かなり強そうですから。

《続きは追記からどうぞ》