話題:SS


ごく普通の中学校の教室。チャイムが鳴り昼休みとなる。皆がお弁当を食べ始める中、いがぐり頭をした一人の男子生徒が弁当箱を開けると、そこにはご飯もおかずも無く、一枚のメモ用紙が入れられていた。

[お母さん、今朝寝坊しちゃってお弁当を作れませんでした。代わりに千円入れて置くので、適当にこれで食べて下さい。ごめんください]

いがぐり頭の男子生徒―ター坊―が、メモ用紙を退けると下には千円札が一枚置かれていた。

ター坊はがっかりした。本当はお母さんの手作り弁当の方が好きだけど、お母さんだって朝からパートで働いたり色々頑張ってるし、たまの寝坊くらいは仕方ない。

メモの最後の「ごめんください」は…あの文脈で最後に“訪ねてくる”のは変だけど…多分「ごめんなさい」の間違いだろう。お母さんの、そういう愛敬のあるところ、子供ながら「いいなあ」と思う。

ではでは、手作り弁当が食べらないのは悲しいけど、背に腹は代えられないし、お昼御飯を食べよう。

ター坊はアルミの弁当箱の底から千円札をつまみ上げた。そして……

ムシャムシャムシャ。

お昼御飯を食べたのだった。

ああ、もう食べ終わっちゃった。千円じゃ全然お腹いっぱいにならないや。1万円札なら千円札よりもインクの味が濃そうだから、もう少し食べ応えがあるかも知れないけど…それでも、お母さんの手作り弁当の方がずっと好きだな。ター坊はそう思った。


☆☆☆


という事なので、お母さん。今度から寝坊した時には、ニセ札で良いので札束を入れてあげて下さい。

〜担任より〜。


【終り】。