話題:みじかいの


「ところで…君は《イカロスの翼》の話を知っているかい?」

えーと、確か、太陽に近づきすぎて翼が溶けて墜落してしまったのだよね。

「ああ。一般的にはそういう事になっているね」

ん…何だか含みのある言い方をするね。

「聞きたいかい?」

いや…別にいい。

【終】


「…もう一度だけ君にチャンスをあげよう。…《イカロスの翼》の真実、聞きたいかい?」

…是非とも聞かせて欲しい。

「仕方ない。では、教えてあげよう」

その前に、こちらに向けているピストルを仕舞ってくれないか。

「OK墨汁」

OK牧場。

「イカロスはね、太陽に近づきすぎて日焼けしてしまったのさ。そして、色黒になったイカロスがどれだけ“自分はイカロスだ”と説明しても、周囲に聞き届けられる事はなかった…」

確かに、イカロスに小麦色のイメージはないな。

「居場所をなくした色黒のイカロスは、ギターを背負って放浪の旅に出た。…そこから先の彼の活躍は君のよく知る通りさ」

…いや、知らないが。

「おや…まだ判らないのかい?」

そう言われても…。

「…後(のち)の松崎しげるさんだよ」

……。

「……」

恐ろしい程くだらない内容をこれだけ淡々と語れるのは、ある意味尊敬に値するけど…。

「OK農場?」

…この話、やっぱ聞かなきゃ良かった。

「ああ…話さなきゃ良かったと、俺も今は思ってる」

そう言えば…イカロスはともかく、翼の方はどうなった?溶けなかったんだろ?

「翼は…キャプテンになった。…その話、聞きたいかい?」

…いや、聞きたくない。


【終】