話題:連載創作小説
銀色の細い雨が降っている。喪服に身を包んだ人たちが次々と亡きピアノ教師に追悼を捧げる姿が見える。
彼女は自分が音楽葬の会場に戻った事を知った。
雨の世界に流れるショパンの《ピアノ前奏曲》。そう…。その曲こそ、全ての始まりにして全てを結びつけるただ一つの解に違いなかった。
もしも――いや、あり得ない。それは判っている。しかし、その“もしも”を百編重ねた“もしも”があるとして――
もしも……
『あの、美しくも哀しいショパンの曲が人間の形をとったとしたら…それはちょうど、雨の降るテラス席に物憂げな表情で座る、あの青年のような姿になるのではないか?』
ピアノの音が、そしてついには
曲そのものが具象化し、別の風景やがては人間の姿へと、その存在を転換させる。音像から映像へ。
確かにそれは、空想と呼ぶにせよ夢想と呼ぶにせよ、あまりにも現実離れした結論であった。しかし、世界にはごくごく稀にではあるが、音を色彩(視覚)で、色を香り(嗅覚)でと、本来とは別の感覚器官で捉える人たちも存在する。そして、そのように非現実的だからこそ説明がつく事もある。
彼女には見えていた青年の姿が、同じ場所にいた筈の【平均律】のマスターや常連客たちには見えていなかった。彼女はそれを知った時にこう思った。「両者を同時に成立させる解はない」と。
けれども、もし、一つの場所に二つの風景が存在していたとするならばどうだろう。片方には見え、もう片方には見えなかったという矛盾は解消されるのではないか?
彼女と彼らは、同じ場所に居ながらそれぞれ微妙に異なる二つの風景を見ていた。彼女の風景には青年が存在し、彼らの風景には青年が存在していない。それならば証言の矛盾に説明がつく。
そして現在、彼女の身に起こっている事も恐らくは同じだろう。
《続きは追記からどうぞ♪》
恩師の葬送に参列していた彼女は、ショパンの“あのピアノ曲”が流れ始めると同時に目映い光に包まれ、雨の街角、【平均律】のテラス席に飛ばされた。
しかし、体が飛ばされたというのは錯覚で、彼女の体は初めからずっと音楽葬の会場に存在し続けていたに違いない。
ところが彼女は音楽葬の場にいながら、それとは異なる風景―雨のテラス席―を見ていた。もし、一つの場所に異なる二つの風景が存在し得るのならば、その謎にも説明がつく。
雨の葬儀場という“一つの場所”は、音楽葬の風景と名曲喫茶【平均律】のテラス席、その“二つの異なる風景”を持っていた。少なくとも彼女にとってはそうだった。
音楽葬の風景にショパンが流れ始める。そして、そのショパンの曲は雨のテラス席へと姿を変えた。曲から風景への非現実的な存在の転換。だから、雨のテラスにはショパンが流れていない。何故なら、風景そのものがショパンの曲なのだから。
そして雨のテラス席という風景は最後に、あの美しくも哀しき青年の姿へと集約した。
それは…@ショパンのピアノ曲=A雨のテラス席の風景=Bあの青年、という三段論法を経て最終的に@=B、つまり、あの青年の正体がショパンの《前奏曲第15番変ニ長調》である…とはならないだろうか。
しかし…
やはり、それを現実的な言葉と論理で説明する事はとても難しい。彼女は改めてそう思っていた。「心とは何か?」という問いに対して明確に答えるのが難しいように、心が作り出した摩訶不思議な現象にソリッドな解を与える事も、また同じように難しい。
彼女は軽い頭痛を覚えていた。考えれば考える程、思考の迷宮に深く入り込んでゆくようだ。
ふいに彼女は、傘に落ちる雨の音がいつの間にか弱くなっている事に気づいた。それは、先程から理屈を重ね続けていた頭が久しぶりに感じる心地よい感覚的出来事だった。
これ以上考えるのはやめにしよう。少なくとも自分の中で結論は出ているのだから。彼女はそう思った。
ショパンの《前奏曲第15番変ニ長調》は、そろそろ曲の終盤に差し掛かろうとしていた。
それにしても見事な演奏だ。これを弾いているピアニストは誰なのだろう。リヒテルかホロヴィッツか、或いはブーニン、いや、もしかしたら先生自身かも知れない。しかし結局、それが誰なのか彼女の中で結論は出なかった。
雨音がやみ、地面に明るさが戻ると、彼女は傘を斜めに傾け空を見上げた。雲の隙間から差し込む冬の白い陽射しが彼女の髪を明るく照らし出している。
彼女が傘をたたみ始めるのと、ほぼ同時にショパンのピアノ曲が終わる。
音楽葬も、いよいよそのフィナーレを迎えようとしていた…。
〜13へ続く〜。
それを踏まえて考えて行けば、重なる二つの風景というのも…一つは肉眼(視覚)で見る現実世界の風景であり、もう一つは心で感じる心象風景だという答えが導き出されると思う♪(^q^)
心の中にある何かが外部からの刺激を受けて、逆流というかフィードバックし、自身の中から外へ向けて照射される。彼女の場合は、音楽(音像)として最初にインプットされた物が、アウトプットされた時には風景(映像)となった……そんな感じかなあ(/▽\)♪
そんな訳だから、青年の頭に十円玉ハゲが生まれる事はないので安心して下され(笑)ヾ(*T▽T*)…彼女の中では既にイメージとして存在が固まっているものだから(笑)
演奏で形が変わる事はないから大歓迎♪この風景は、“【ショパンのピアノ前奏曲第15番】そのものが内包している世界”を、彼女がその出逢いも含めた曲との関わりの中で“彼女自身の心象的存在として受け取ったもの”であるので、その時々の演奏形態や演奏の出来不出来には基本的に左右されない…と言うか…実際には演奏(音)がなくても良い…と言うか…もはや、音とか絵とかの物理的事象を超え、7次元ぐらいの微細な波動の世界に……
…… なんか、何を言ってるのか自分でも良く判らなくなってきた(笑)(/▽\)♪
いや、待てよ…という事は、人によっては青年の頭に美しき十円玉ハゲが出現する可能性もあるのか……うむ、これは非常に面白い考察だ( ☆∀☆)
と言うか……《禅僧曲 変な蝶々》!これは吹き出した(爆)(*≧∀≦*) パロディ版書くとしたら、絶対的に使いたいところだ〜♪(*´∇`*)
そうか(笑)解らなかったかあ〜(笑)(/▽\)♪
…まあ、“なるべく解らないように”って思いながら書いてしまったから、手掛かりが少な過ぎたか…(汗)f(^^;
で…この章はちょっと特殊で、ここまでの11の章と照らし合わせて読み解いて欲しい訳ですよ♪(^o^)…つまり、「この数ヶ月の間に彼女に何が起こって、その結果、彼女の状態がどのように変化したのか?」という事なんだけどさ♪
音楽からどんどん遠ざかって行こうとしていた彼女が、青年の存在する風景と出会って再び音楽の世界と結びついてゆく。重要なのは、このショパンのピアノ前奏曲は“彼女と音楽を一番最初に結びつけた存在”であるという事。そのファーストコンタクトは彼女の意識の深いところに眠っていて、音楽から離れて行く自分を何とかもう一度音楽の世界へ呼び戻そうとした。
彼女と音楽を結びつけるという点で、青年とショパンの前奏曲は全く同じ働きをしている…ってのがヒントなんだけど、判りづらかったか(汗)f(^^;
言うなれば、これは、外部からの力作用ではなくて彼女の心の中(無意識に近い領域)の力作用によって起こった出来事だったという事が判る♪勿論、そうさせる刺激を彼女に与えたのは一台の古いピアノとそれを取り巻く(時代と場所を超えた)人々の“想い”(心の力)なのだけど♪(o^−^o)
そういう訳で、この場合のショパンのピアノ前奏曲第15番は、彼女の心の中で深く眠っている、言わば“彼女個人の心象的存在”となるのですわ♪確かに音楽は、受け取る時には耳という感覚器官を使うので、そこでは音像として構築されるのだけども、心の奥深くという領域では必ずしも音像の形をとらなくても良いのではないだろうか?と。何故なら、そこは五感の世界(日常現実世界)ではないから♪o(*⌒―⌒*)o
そして、心の奥深くから立ち昇る力の目的が彼女を再び音楽の世界へと呼び戻す為である時、最も効果的な発動の仕方は、音像よりも映像としてだった。その方が彼女を導き易かった♪
…とまあ、この章はそういう内容であるのだけど、はっきり言って書くのは非常に難しかった(泣)o(T△T=T△T)o
ちょっと続く♪(//∇//)
ぉらあ〜てっきり美青年はプレイエルのフェアリーだと思ってた!!動物や物でも百年経ると命を宿すようになるっていうから・・☆
いやいや・・まさか彼女が共感覚の持ち主であったとはV(☆▽☆)V音楽が風景と美青年に変化したから、音楽は聞こえなかった。なるほどTHEワールド!!
一つの場所、二つの風景
Y字路を思い出した。Yの付け根に立つと右の道も左の道も見える・・あと3Dのメガネも。かけてない人には平面の絵にしか見えないけど、かけた人には立体的に見える。3D
メガネ=共感覚・・あ〜、自分も共感覚欲しいッス!!(>▽<)
ちなみに自分が【共感覚】という言葉を知ったのは藤原薫さんの「思考少年」を読んだから*先生から「あなたは同じ所でいつも音程がずれる。私が指摘してもあなたの為にならないから、自分でその箇所を探しなさい」と言われた声楽を専攻している女の子。
そこで共感覚を持っている男の子に相談する。それから女の子に実際に歌ってもらう事に。
『わかった、今のとこ。死にそうな天使がコケてる。』
その部分を直すと天使はいきいきとした表情で羽ばたいていったのでした・・
・・って話がずれたなあO(>▽<)O
で、もし彼女が《前奏曲第15番変二長調》
の最後のあたりを間違って弾いたら美青年に
十円ハゲが出来たり、前歯が一本欠けたりするのでしょうか!?
《禅僧曲第15番変な蝶々》だったら禅僧が集団でマカレナダンスを踊りながらラリッたフェイスで、ミョ〜チキリンなてふてふを追いかけまわすのでしょうか!?O(>▽<)O
ってか美青年ってスタンドみたい☆