話題:バカだなぁとおもったとき

俺のお祖母ちゃんは肩凝りだ。
それも筋金入りの肩凝りだ。

八十年もの間、働きに働き続けてきた肩は岩盤のように硬く、並の肩叩きではまるで効き目がない。

家族の中でお祖母ちゃんの肩叩きが出来るのは俺しかいない。

だから俺は変身する。そして、お祖母ちゃんの肩に思いきりチョップを振り下ろす。

「ああ〜ちょうどいい力加減だよ〜♪」お祖母ちゃんは気持ち良さそうにそう言って、十円玉を二つお小遣いにくれる。

お小遣いが欲しくてやっているわけじゃない。でも、俺がいくらそう言っても、お祖母ちゃんは俺の手にに十円玉を握らせようとする。

痩せ細ったお祖母ちゃんの手はとても温かい。

その温もりを感じる時、俺はいつも思う。

自分が仮面ライダーで本当に良かったと。


いまなら素直にこう言える…。


ありがとうショッカー。

俺を改造してくれて本当にありがとう。


怪人の中にも時々、物凄く肩の凝っていそうなヤツがいて、俺は肩叩きをしてあげたくて仕方なくなる事がある。

でも、今はまだ我慢の時。

いつの日か、世代交代をして次のライダーにバトンを渡したら、得意技のライダーチョップを生かし、町に小さなマッサージ屋を開くのが俺の今の夢だ。


【終】