話題:妄想を語ろう

更なる真相に近づく為の取っ掛かりを求める我々に、館長は自分がまだ幼い時分、地元の有力者であり同時に優れた郷土史家でもあった祖父から聞かされたという古い民間伝承を「参考になるかどうか判りませんが…」と前置きを打った上で教えてくれたのだった。

館長が語った話を要約すると、概ねこのような感じとなる。

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どのくらい年代を遡れば良いのかすら判らないほど遠い遠い昔の事。Mヶ岳上空に突如として謎の発光体が現れた。そして、それは轟音と共にMヶ岳山中の“と或る集落”に着陸したという。驚いた集落の人たちが着陸現場に近づいてみると、山林中のぽっかり開けた場所に銀色に輝く金属製の巨体な円盤が低い動力音を響かせながら停まっていた。やがて、集落の人たちが遠巻きに見守る中、円盤の外壁の一部が扉のように開いたかと思うと、異様な出で立ちの者たちが姿を現したという。

実は彼らの正体こそ、地球を侵略しに宇宙からやって来た【亜槌無為手穂意 星人】であり、その集落は彼らが使う魔法のような術「滋矢無顕穂意」からの「亜槌無為手穂意」により瞬く間に支配されてしまったそうだ。

術をかけられた者は顔の向きが一方向に固定されてしまい、以降【亜槌無為手穂意 星人】の従順な手先となったらしい。

ところが、或る時、【亜槌無為手穂意 星人】はどういう理由でか地球侵略を諦め、自らの母星に帰還してしまう。そして後には、首が回らなくなった人たちの集落だけが残された…。


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なんという事だ。

「参考になるかどうか判らない」どころか、ズバピタ、いやドンピシャではないか。

館長の話を聴き終えた我々は、すぐさま緊急会議を開き、この都市伝説の真相を一つの仮説として取りまとめる事にした。

そして、その会議において我々はある重要な事柄に気づいたのだった。

もしかすると【滋矢無顕穂意】は「ジャンケンほい」と読むのではないだろうか。これは、知る人ぞ知る日本のゲーム【ジャンケン】の掛け声「ジャンケンぽん」と酷似しているように思える。そうなると【亜槌無為手穂意】は「アッチムイテほい」と読む可能性が究めて高いと言えるだろう。


それを踏まえた上で我々が行き着いた“謎の顔面方向固定村”の真相は以下の通りである…。


《続きは追記からどうぞ♪》