話題:写真詩

誰も知らないある場所で秋と冬が語り合っておりました。

秋「ねぇ、冬。前から一度訊こうと思っていたのだけれど……春ってどんな人なのかな?」

少し考えて、冬は答えました。

冬「そうだな…まあ、よく眠る人だよ。それに、気がつくとボケ〜っとしてる。学校とか会社にはあんまり行きたがらないし。でも、のんびりしていて、とてもいいヤツさ」

秋「そっかあ…やっぱり噂どおりの人なんだね」

冬「まあね。でも、どうして春の話を?」

冬の問いかけに、秋は空を見上げながら答えました。

秋「ほら…春とは一度も逢った事がないから…どんな人なのかなって、ちょっと気になったものだから」

そうなのです。秋はいつも季節の巡行を夏から受け継ぎ、それを冬へと引き渡します。ですから、秋が出逢えるのはどうあっても夏と冬だけで、未だ春とは一面識すらないのでした。

四季が巡り始めて幾星霜。数少ないたった四つの季節です。秋は春に逢いたいなあ、常々そんな風に思っていたのです。

冬「なるほどね。気持ちは判るな…私も夏には一度も逢った事ないし。…君はあるのだろう?」

春と秋が出逢えないのと同じ理由で、夏と冬が出逢う事もまた叶わないのでした。

秋「もちろん。夏とは毎年逢っているよ」

冬「どんなヤツなんだい?」

秋「…まあ、情熱家と云うか、一言で云えば熱い人かな。特に最近はちょっとやりすぎ…と云うか暑すぎて世界から少しひんしゅくを買っているみたい」

冬「やっぱりね」

それから秋と冬は少し黙って、それぞれ未だ出逢えぬ春と夏の事を考えていました。やがて、顔を上げた秋がぽつりと呟きました。

秋「いつか出逢えるのかな…僕は春と、君は夏と」

冬「…どうかな。でも…」

秋「出逢えない方が幸福なのかも知れないね…」

冬「ああ…四季が美しく巡るためにはね」

確かに。夏からいきなり冬になったりしたら、それこそ大変です。きっと世界は混乱してしまうでしょう。

(それにしても…)冬は、秋の言い分に納得しながらも、別の考えていました。それは、何とも掴みどころのない秋の性格です。

今の今まで読書していたかと思うと、いきなりカツ丼を食べ始めて、とかいっていると急に筋トレやり出したり、絵を描き始めたり、天高く肥えたのち突然思索に耽り出したり…。

まったく秋というのは、落ち着きがあるのか無いのかよく判らない人だ…。