話題:都市伝説を話してみる。
ついに、隠れキリシタン村の玄関口である比乃木尾地蔵(ぴのきおじぞう)を見つけた私は、地蔵の背後から延びる一本の獣道へと足を踏み入れた。情報を信用するなら、この道を少し進んだ先に隠れキリシタン村が存在する筈なのだが…。
しかし…
獣道に入って8時間。隠れキリシタン村が存在するような気配は全くと言って良い程感じられなかった。…もっとも、獣道に入ってすぐ昼食のサンドウィッチを食べた途端急激な眠気に襲われたせいで、8時間の内の7時間は木陰で仮眠をとっていたので、実質的には1時間程度しか歩いていない事にはなるが。
にしても、徒歩1時間は目と鼻の先とは言わないだろう。もっとも、私の想定した徒歩30分も目と鼻の先とは言い難いが、土地勘の無い山の中である事を考慮に入れてのものだから、ギリギリ許容範囲と呼べ…と、その時、私は或る事にハタと気づいたのだった。それは比乃木尾地蔵の異様な風体である。
あの地蔵の鼻は有り得ない程長かった…と言う事はだ…“目と鼻の先”と言っても距離はかなりある事になる。あれは日本人の目と鼻の先の距離ではない。明らかに外人の目と鼻の先の距離だ。外人、特に西洋人は顔の彫りが深く目が窪んでいる上、鼻が高い。よって、“目と鼻の先の距離”は日本人の倍以上…いや、比乃木尾地蔵の異常な鼻の高さを思えば、ここは4倍と考えるのが妥当だとも思える。勿論その数字に根拠はない。
私は当初想定していた隠れキリシタン村までの徒歩時間を30分から2時間へ訂正したところで本日の行程を修了する事にした。
現在の時刻は午後8時。何せ深い山の中である。辺りはとうに漆黒の闇に覆われている。私は用意した手袋を拡げ、夜をあかす準備を始めたのだった。…いや、寝袋を。
そして…
快眠する事7時間。爽やかに目を覚ました私は、いざ隠れキリシタン村へ向け、早朝の清々しい空気に包まれた獣道を歩き始めた。
《続きは追記からどうぞ♪》
すると間もなく、私の視界に一面の農地が飛び込んで来た。面積こそ狭いが明らかに人の手による耕作地だ。何か作物らしき物が植えられている。近づいて確認すると、それはタマネギだった。
間違いない。キリシタンかどうかは判らないが、この奥に人が住んでいる事は明らかだ。生まれて初めてタマネギに勇気づけられた私は小躍りしたい気分になった。なるほど、これが本当の勇気栽培という訳か。
更に歩を進める。と、また農地を見つけた。ピーマン畑だ。いよいよもって私は村の存在に対する確信を深めた。と、またまた新たな農地を見つけた。今度はトマト畑だ。…正直言って畑による確信はもう必要ない。出来れば何かしらキリストを匂わせるアイテムが欲しいところだ。十字架とかマリア像とか聖骸布とかローマ法皇のサイン色紙とか。だが…
待てよ…。古いヨーロッパの修道院では、ある程度の自給自足を確立する為に敷地内で農作物を育てている事がけっこう多かった筈。と言う事は、これら畑の存在は遠回りにキリストの存在を示しているとは言えないだろうか?
一を聞いて十を知るのではなく、一を聞いて√や@やゑを知る感性は、一見関係なさそうに映る畑とキリストを結び付けていた。いや、一を聞いて十を知るの“十”は十字架を表しているのかも知れない…。
期待に胸を膨らませながら歩く事30分…
私の目の前に忽然と一軒の建物が出現した。大きさは一般的な民家と同じぐらいだが、造りが少し変わっている。日本の山の奥深くには何とも場違いな西洋風の建物なのだ。木造ではなく喪黒福造(笑ウせえるすマン)でもない。煉瓦と石の外観に蔦がいい案配で絡み合っている。そう、街に古くからある小洒落た喫茶店のような雰囲気だ。
人跡未踏の山中に存在する西洋風の建物と農地。間違いない。この場所こそ、幻の隠れキリシタン村に違いない。だが…断定するには一つ問題がある。それは、この建物以外に建造物と呼べる物が見つからない事だ。村というからには集落がある筈だ。
それでも…。元々は集落だった可能性もある。それが歳月と共に一軒減りまた一軒減り…という感じで、現在は目の前の家屋を残すのみとなった。放棄された家は何らかの理由で土砂に埋め尽くされ、痕跡が消えた。…取り敢えず、そういう事にしておこう。
私はその建物をぐるりと一周し、キリストと繋がるような物がないかを調べた。が、発見出来たのは家裏の軒に吊るされている数十本の腸詰め(ソーセージ)だけだった。
このままでは埒が開かない。仕方ない、虎穴に入らずんば虎児を得ずだ。意を決した私は建物の中に入ってみる事にした。
木製のドアを押し開くとドアベルがカランカランと音をたてた。瞬間、何やら芳ばしい香りが私の鼻をくすぐる。ほんのりと甘くて良い香りだ。と同時に私の鋭敏な感覚は尋常ならざらぬ気配をも感じとっていた。体を射抜かれるような感覚。この気配は…視線だ。誰かが何処からか私の事を見ている。何処だ?周囲を見渡すが、薄暗いせいかよく判らない。聞き耳を立てるが物音一つしない。
再び芳ばしい香りが私の鼻をつく。クンクンと鼻を鳴らしながら香りを辿って行くと…室内の中央に置かれている円いテーブルに行き着いた。テーブルの上にはスパゲティの盛り付けられた皿が置かれていた。どうやら、甘く芳ばしい香りの正体はこのスパゲティであるようだ。作りたてらしくスパゲティからは湯気が立ち昇っている。
とても美味しそうだ。
スパゲティ皿の横には銀色のフォークが紙ナプキンの上に載る形で置かれている。その横には水の入ったコップ―通称・お冷や―もある。何だか本当に喫茶店のような雰囲気だ。
テーブル脇の椅子を引き、腰を下ろす。普通に喫茶店でスパゲティを食べようとしている男の絵図。
此処まで来たらもはや後には退けない。己の中の猪木が囁く。迷わず食えよ食えば判るさ。ダーー!
私は、スパゲティを食べ始めた。
綿全体に程好い甘味を持つトマトソースが絶妙な塩梅で絡められている。しかも単に和えただけではない。和えながら炒めである事が芳ばしさに繋がっている。そして、炒めピーマンの苦味が非常に良いアクセントとなって料理全体の味を引き締めている。細切りにされたタマネギもトマトソースとはまた少し異なる甘味を添えている。そこに満を持しての肉汁溢れる腸詰め(ソーセージ)登場。
優しくて懐かしい味。これぞ、喫茶店のスパゲティだ。
なるほどそうか。此処に来るまでに通った畑…タマネギ、ピーマン、トマト…そして軒の下の腸詰め(ソーセージ)。
私は或る一つの仮説を思い浮かべながら、一気にスパゲティを食べ終えた。
と同時に、皿の上に文字が現れた。先程まではスパゲティの下になっていて見えなかったものだ。
そこには、ぶっきらぼうな感じでこう書かれていた。
「食べたらとっととお帰り下さい。そして、此処の事は忘れて下さい。そっとしておいて下さい。此処は隠れキリシタン村などではありません。私の名は村田。そう此処は隠れ…」
肝心な部分が消えていて読めない。しかし、私にはもう判っていた…。
此処は隠れキリシタンの村などではない。そう、ここは…
【隠れナポリタンの村】なのだ!
もっとも、村というよりは店だが、この際そんな小さな事はどうでも良いだろう。
都市伝説の真実を見事に看破した私は満足して席をたった。
財布から千円札を取り出して皿の下に差し入れる。お釣りは無用だ。取っておきなさい。
そして、相変わらず何処かに隠れて此方の様子を伺っている視線の主に対して、こう声を掛けたのだった…
『昔ながらの喫茶店のナポリタン…大変美味しゅう御座いました。幾つになっても“料理記者歴40年”岸朝子で御座います』
《お仕舞い》。
いつでもどこでも快眠できる私は…そう、生粋のアウトドア派(~▽~@)♪♪
むしろ逆に家の中だと覚醒してしまう(☆o☆)
…などという事は無いけど(/▽\)♪
よし、この調子で全ての隠れイタリアンを探しだそう♪o(^o^)o
隠れナポリタンのお店だったのか…
(* ̄o ̄)ナルホド
任務ご苦労!!
今度はぜひ、隠れラザニアのお店をサーチしてくれたまえ!!
(*≧艸≦*)タベタイ!!
しかし山道でよく7時間も寝ちゃえるわね…
(^_^;)カゼヒクナヨ…
な、な、なんと!!(ノ゜ο゜)ノ
しろのらさんも隠れナポリタンだったとは!(*゜ー゜)ゞ⌒☆
う〜ん、まさに、事実は小説よりも木梨憲武♪(/▽\)♪
昨日の遅い昼食がまさに・・