話題:SS


最新鋭の【ウソ発見器】は町村の予想していたようなレトロなメカではなく、数ヶ月前、ソニーから発売された“折り畳み型タブレット”のような形状をしていた。

『では、ちょっと失礼して…』

“仁来”と呼ばれた白衣の技術担当者が二つ折りのタブレットを開くと、案の定、開かれた内側は液晶モニターとなっている。そして、電源ボタンが押されると僅かな間を置いて液晶画面にオレンジ色で【EMMA】なる文字が浮かび上がって来たのだった。

『では、今から各センサーの確認をしますので、そうですね…二分少々お待ち下さい』

それから仁来は、タッチパネルの液晶画面を色々操作していたが、その作業内容は機械に疎い町村には正直チンプンカンプンである。ただ、液晶画面に最初に登場した【EMMA】と云うのが、この最新型ウソ発見器の名前で、恐らくそれは“閻魔大王”に由来しているだろう事は容易に推測出来た。

閻魔は、どんなウソをも簡単に見破ると云う…。なるほど、これは良いネーミングだ。町村は変なところで感心していた。一方、テストされる側である容疑者の男は、黙々と作業する仁来の様子を興味深そうに見つめていた。

そうこうする内、液晶画面の中に、対面に座る容疑者の上半身が大きく映し出された。背面に仕込んであるレンズが捕らえたものだろう。やがて、その容疑者の姿が赤→紫→青→緑→黄色と色相変化をみせた。それが何を意味するのか町村には全く理解出来なかったが、仁来の『センサー正常作動、確認』の言葉で、今のがセンサーのチェック作業である事を知った。もっとも、それがどのような類いのセンサーなのかは知る由もないが。

やがて、作業を終えた仁来は【EMMA】から手を離し町村に向かって軽く頷きながら云った。

『スタンバイ完了です。』


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