話題:SS


容疑者が“最新鋭のウソ発見器”という言葉に興味を示しているのは明らかだった。勿論、町村がそれを見逃すはずはない。だが、待ちに待った突破口とは云え、あまり露骨に食いつくのも、如何にも自分が精神的下位にいる事を証明しているようで上手くない。ここは、あくまでも自然な流れを装わなければならない。

『うん。ウソ発見器…ポリバケツだかポリグリップとか云うやつだ』

『……ポリグラフですよ』

取り調べ開始から六時間、ついに“開かずの扉”が開いた。

『そう、それだ』

内心では(よしっ!)と握りこぶしを固めた町村だが、気持ちは表には出さずに淡々と言葉を続ける。

『俺みたいな現場一筋の人間には正直よく判らんのだが、何でも現代の科学技術の粋を尽くした【ウソ発見器】が完成したらしくてな…』

『…それは興味深い』

いい感じだ。このペースを保って行こう。町村はそう考えていた。

『まあ、俺としては…現場の人間の力量を信用されてないようで素直には喜べないんだが、聞いた話に拠ると、科捜研レベルじゃなくて科学技術省も絡んだプロジェクトらしい』

『…ますます面白そうですね』

話す言葉自体は、ぶっきらぼうと云えるほど短く簡単なものだが、少なくとも会話はちゃんと成立している。これは良い傾向だ。

『俺はあんまり信用してないんだがね…上の方の“お墨付き”ってやつで…どんなに訓練をつんだ人間でも、この【ウソ発見器】を騙す事は不可能なんだとさ』

町村は敢えて、“自分はそんな機械には興味がない”といったふうを装った。人は基本的に、“押せば引き、引けば押す”生き物なのだ。町村は、引けるだけ引き、容疑者が押して来るのを待っていた。

『…それは今後の為にも是非見ておきたい』



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