話題:童話

「あっ!!」

【キラキラした落としもの】を覗き込んでいたアラン・ベネディクトが突然、小さな叫び声を上げました。

「どうしました!?」

ラマン巡査が半ば反射的に訊ねます。

「いま、キラキラの中に人の姿が…」

アラン・ベネディクトの言葉は誰もが予想だにしないものでした。

「…人の姿?」

緊張した顔が一転して怪訝な表情に変わったラマンがオウム返しに聞き返すと、

「そうです、間違いなく人の姿が…あれ?…景色も見えるぞ」

これはいったい、どういう事なのでしょう? 直径僅か数センチのキラキラと輝く球体の中に風景があって、更にはそこに人間の姿が在るなど通常では考えられない現象です。

しかし、アラン・ベネディクトが嘘を吐いているとも思えません。そもそも、嘘を吐く理由がありません。

「…本当ですか?」

ラマン巡査が聞き返します。勿論、それは彼の言葉を疑ってのものではありません。“同じもの”が人によって違って見えると云う不可思議に戸惑っているのです。

確かに、【像】なる存在は“観察者”と“観察対象物”の二つが揃って初めて結べる、云わば“結び目”のような物ですから、その片方が変われば、結び目の形や色もまた違ってくるだろうと云う理屈は解ります。

しかし、それはあくまで学問上の話であって、私たちの暮らす現実世界でそれを実感する事はそうそう無いでしょう。せいぜい、救急車やパトカーのサイレンがドップラー効果で違う音色に聴こえたり、光の当たり方で物の色の濃さや材質の質感が違って感じられるぐらいです。

ですから、こんな風に、ほぼ同じ位置で同じ物を見ているにも関わらず、片方は“虹色の輝き”、片方は“ムービーのような映像風景”に見えると云うのは、不自然極まりない事なのです。

となれば、考えられる答えは只一つ…

この【キラキラした落としもの】が“物理法則の外側”に在るものだと云う事です。

「どれ…ちょっともう一度」

ラマン巡査が再び【キラキラ】の中を覗き込みます。しかし…

「…やっぱり私には七色の輝きが乱反射しているようにしか見えない」

顔を上げてマルグリット夫妻を見ます。

「…私も、宜しいですかな?」

今度はマルグリット夫妻が二人で【キラキラ】を覗き込みます。

「…ラマン巡査と同じく虹色の輝きにしか見えません」

「ええ…私も同じですわ」

それを聞いて不安になったのはアラン・ベネディクトです。

「いや、そんな筈は…」 

納得の行かない顔つきで再び【キラキラ】に顔を近づけたアランでしたが、覗き込んだ瞬間に「ああっ!!」と、短く空気を切り裂くような声を上げたのです…。



☆★☆★☆

次回で完結します♪
\(^ー^)/

このまま最後まで書き切る事も可能だったのですけど…微妙に長い感じになりそうだったので、二つに分割致しました。V(^-^)V

全ては明日…

ローラースルー ゴーゴーの滑り具合いに掛かっているのです!(^o^)/