話題:連載創作小説
【少女発見】の報を受け、俄かに色めき立つニュース番組のスタジオ。ベテランの域に差し掛かった男性キャスターが、すかさず現場の女性リポーターに鋭い口調で問いかける。
「溝口さん!女の子が発見されたという事ですが、名前など詳しい情報は入っていないのでしょうか?」
すると、激しい雨のせいで通信が不安定になっているのか、溝口と呼ばれた女性リポーターはしきりに耳のイヤホンを押さえてスタジオからの音声を聴き取ろうとしていたが、どうにも繋がらないらしく、やがて諦めた様子で喋り始めた。
「発見された少女の状態や名前に関しては、間もなく警察から正式な発表がある模様です。あっ、ちょっと待って下さい!」
スタジオの空気に緊張が走る。画面を見つめる誘拐犯も思わず固唾を飲んで、その一部始終を見守っていた。
「たった今、入った情報に拠りますと、発見された少女は【Kコーポレーション】の会長の孫で年齢は九歳、怪我などはしていない模様。繰り返します、発見された女の子は会長の九歳になる孫娘だと言う事です。以上、現場から溝口がお伝えしました」
リポーターの報告が終わったところで、画面は一旦スタジオへと戻された。
事件の奇妙な展開に、誘拐犯はすっかり我を忘れて考え込んでいた。ところがその時、誘拐犯の耳に、すぐ脇でポソリと呟く博之の声が飛び込んで来たのだった。
「…やっぱりね」
えっ?
誘拐犯は耳を疑った。この展開のどこが“やっぱり”なのだ?…だが、反射的に博之の方に目をやった誘拐犯に対し、当の本人は何事もなかったかのような涼しい顔で、ペットボトルの“緑茶”を美味しそうにゴクゴクと飲むばかりだった。
その後、警察からの発表で新たに二つの事実が判明した。
まずは、その九歳の少女は祖父である会長に誘われて【Kコーポレーション】本社敷地内にある役員専用娯楽施設(詳細は不明)に遊びに来ていた事。
次に【Kコーポレーション】で数秒間、原因不明の停電が起こった後、室内にいた人間の姿が突然消えているのを知り、怖くなった少女が捜査員に発見されるまで娯楽施設の室内にあるクローゼットの中に隠れていた事。以上の二つである。
《続きは追記に》。
しかし、それらの新事実も、この不可解な事件の謎を解く鍵になるとは到底思えなかった。更に、Z電力の発表に拠ると当時刻、当該地域に停電の事実は無いという事だった。
子供の言う事だ、停電の話は当てにならないだろう、誘拐犯は思っていた。
と、急に画面が切り替わったかと思うと、唯一の生存者ともいうべき件の女の子が救出された際に撮影された短い映像フィルムが画面に映し出された。
小さな体を毛布にスッポリと包まれ、二人の捜査員に両脇を支えられながら歩く少女は、見ればまだ年端もゆかない幼い顔立ちをしている。足取りが元気そうなのは不幸中の幸いであったが、そのあどけない表情の中に、どこか冷たい微笑のような冷徹な感情が浮かんでいるように誘拐犯の目には映った。
そしてもう一つ、何故か誘拐犯の気に留まったのは少女が着ている可愛いらしいピンク色のセーターの胸に“緑色のマジック”か何かで大きく書かれた《NEW GENERETION OF TURE GREEN》という文字であった。
どうやらそれはプリントではなく、少女自身の手で書かれた物のようだ。大人が書いたにしては字体が雑すぎるし、スペルにも誤りがある。正しくは《NEW GENERATION OF TURE GREEN》とすべきところ、《 GENERATION 》のAがEになってしまっている。正規の印刷ならば、このようなミスはしないだろう。値段の安い品ならまだしも、大企業の会長の孫娘ともなれば、身に着ける物もそれなりの高級品に違いない。九歳の子供が使う言葉とは思えないが、帰国子女という可能性もある。
…とは言え、胸の文字を書いたのが少女だからといって、そこに何か特別な意味があるとは思えない。きっと、自分は少しナーバスになっているのだ。そのせいで、つまらない事まで気に掛かるのだ。誘拐犯は気持ちの引っ掛かりに対し、そう結論づけた。
そうこうする内、画面の下部に番組スポンサーのテロップが流れ、エンディングのテーマ曲が流れ始めた。番組が終われば間もなく七時となる。それはつまり、誘拐犯が最初の電話で予告した身の代金要求の為の二度めの電話を掛ける時間という事だ。
謎の失踪事件が気になるのは確かだが、正直、今はそんな事に気を取られている場合ではない。身の代金を無事に手に入れる事が出来るか否か、そこが“運命の分かれ道”なのだ。現実に立ち返った誘拐犯が、横に座る博之に「奥の部屋に戻るように」と言うと、小さな人質はその言葉に素直に従った。
「じゃ、またゲームやろうっと」
そして、“緑茶”のペットボトルを持ったまま、子供らしい軽快な足取りで部屋から出て行ったのだった。
誘拐犯は、博之が奥の部屋に入って再びゲームをやり始めたのを確認すると、今から掛ける電話の声を少年に聴かれないよう、部屋のドアを静かに閉めた。
そして、テレビを消した後、時計の針が午後七時を指すのと同時に、少し緊張した手つきで、ボイスチェンジャーが取り付けられた電話機に運命の手を伸ばしたのだった…。
しかし…
誘拐犯は知らなかった。“運命の分かれ道”を自分はとっくに通り過ぎてしまっている事に…。
―――――――
完結編の可能性も割とあるという噂の【8】へ続く。(もはや伝聞調)( ~っ~)/
そうなのよね
この犯人、けっこう感度の高い精神を持っている割には…いつも 簡単に済ませようとしちゃうんだよね
その辺が【運命の別れ道】を知らず知らず通り過ぎちゃったりする事に繋がるんだろうけど…それでも、【運命の別れ道】みたいなのって…『A社に就職するかB社にするか』みたいな分かり易い時もあるけど、逆に過ぎてから気付く場合もけっこうあるように思えてさ
ブログにしても、何の気なしに始めたブログであっても、ブログを始めた自分と始めなかった自分では、別の道を歩む事になる訳だし…まあ、結局は選んだ道を良い道にするような歩き方をするべきなのかも知れないけど…ってちょっと話がズレたか
で、遡って
番組をリアルに描いた事だけど…この話は現実と虚構を密接に結びつけなければならなかったから、あのイヤホンとか諸々の細かい描写は、大変だったけど、どうしても必要な部分でもあった
ラストのSF っぽさが浮くと 話がチグハグな感じになってしまうから
その リアル と SF のバランスが今回の最大の苦労点で、実は 途中にエピソードを挿入したりしたのも全ては バランスの為だったりする…
いやいや
テレビって訳でも無いけど、まあ、白黒テレビが当たり前のように存在してた事から観てきたから、自然と色々な場面が頭の中に蓄積されてるんだろうねぇ
今回 描いた場面は緊急報道番組なんかでは割と目にする機会が多いから、リアルさを出すのにはちょうどいいと思って書き加えてみた
で…緑茶の部分よくぞ気付いた
まあ、半分は洒落な訳だけども…新緑の世代は当然添加物とかが少ない天然由来の物を好むだろうから、【お茶の選択】という些細な出来事も そこから深く洞察して行けば、やがて商品価値の変動から経済や社会自体の大きな変化に繋がる絵図も見えてくる訳で…
そういう意味では、『新緑の世代の時代の今とは全く異なる社会』を描かずして描いていると言えるかも知れない
『溝口さん』とベテラン男性レポ-タ-が鋭い口調で問いかける通信が不安定になりイヤホンを押さえてスタジオからの音声を必死に聞き取ろうとする女子アナ‥‥漂う諦めモ-ド‥‥
『あっちょっと待って下さい』
この華麗なる流れはパズ-がシ-タを燃え上がるお城から救い出そうとするあの名場面みたいだなああと少しなのに手が届かないわ、羽付き飛行機の高度が安定しないわで、もどかし〜〜〜いッッッハラハラさせられる
様メッチャてれびっ子でしょう!鋭い斬り込み『溝口さんっ』イヤホンを押さえてスタジオからの音声を必死で聞き取ろうと‥描写がリアル過ぎだもの
あ新緑の世代だから緑茶なのかもし緑茶が無くてコ-ラファンタ緑効青汁ポカリのラインナップだったら緑効青汁をとるんだろうな〜
のEはGREENのEかもしれないな‥
で、犯人は意外と鋭いなあ博之くんの横顔に得体の知れない不気味さを感じたりセ-タ-に手書きされた文字に着目したり‥でもやっぱ気のせいで片付けちゃったり‥
気付いたんだけど後々人間を植物に変えるというファンタジ-な事実が出てくるまでメッチャ現実に即して(テレビ番組とか)描かれているだから、いい意味で予想を裏切られるんだなァ
運命の別れ道をとっくに通りすぎている事をしらない犯人
これは深い‥!!
ねじまき式蝶番の夜を思い出したり‥人々のねじ∞を巻き自分がこの世界の創造主かも‥と想する主人公‥
の腰にもピカピカひかる真鍮のねじが‥∞
マトショ-リカみたいだ
人間は目の前に展開する現実でいっぱいいっぱいだけどそれを見物してる大きな存在がいるような気がする‥