話題:最近観た映画


少し前に地上波で映画『オリエント急行の殺人』(現最新作)をやっていたので録画して観る事にした。『オリエント…』は言わずとしれたミステリの女王アガサ・クリスティの代表作の一つで、たびたび映画、ドラマ化されている。

さて、その最新作の雑感は主に三つで、一つめは「映像が綺麗だな」というもの。もっとも、過去作―ドラマ、映画とも―それぞれに映像の美しさを感じたので、それはやはり、“雪景色の中を行くオリエント急行”という舞台設定の良さに拠るところも多分にあるのだろうと思う。むしろ逆に、綺麗に撮らない方が難しいとも言える。

二つめは、「ケネス・ブラナーが格好良すぎてポワロらしくないのが薄ら可笑しい」。あまりにも苦味ばしり過ぎているせいで、ポワロというよりも、英国(か北欧)の警察ドラマに出てくる[いぶし銀系警部]のようだ。シャーロックホームズはハンサムなイメージがあるが、ポワロにはない。個人的にはポワロ役はデビッド・スーシェが原作のイメージに近く一番しっくりくるが、その辺りは好みの問題か。

そして、三つめ。「ああ、やっぱり犯人は同じか」。当たり前と言えば当たり前だが、たまには別の犯人という手もあるのではなかろうか。もっとも、それをやると各方面からこっぴどく怒られる事は間違いないだろうけれども。いや、逆に思い切ったアレンジを全体的に施せば、怒る気をなくして上手く行くかも知れない。例えばタイトルの頭に一つ言葉を足して……

【西村京太郎サスペンス・オリエント急行の殺人】

電車と言えば西村京太郎。タイトルとしての違和感はない。更に……

【西村京太郎サスペンス・オリエント急行の殺人】〜幻の駅弁トリック?時刻表に載らない3分間停車の謎に十津川警部とポワロが挑む。鍵を握るのは山村紅葉?

ここまでカオス化すれば犯人を変えたところで全く問題ないだろう。史上初(マイナーな自主制作以外では。多分)、原作とは犯人の異なる【オリエント…】の誕生だ。……もっとも、犯人が変わるという事は動機が変わるという事でもあり、最早そんなものは【オリエント…】でも何でもないのだが。

もし、西村さんサイドから怒られそうならば、“西村京太郎風サスペンス”とか“酉村京太郎サスペンス”にすれば良いだろう。

さて、【オリエント…】同様、何度も映画、ドラマ化されている古典的ミステリー作品が日本にもある。【犬神家の一族】である。そして、これも毎度必ず犯人が同じ。そろそろ別の犯人が登場しても良い頃合いではないのか。例えば、犯人は探偵=金田一耕介とか。では、代わりの探偵役はどの人物になるのか?それはやはり、「スケキヨ」が最適だろう。ある意味、人気は金田一以上。事実、子供(男子)につけたい人気名前ランキングでは「どん兵衛」や「ぴょん吉」等と共に毎年必ずベスト10に入っている(個人調べ)。探偵として相応しいではないか。

ここまで来たら、いっそ【オリエント急行の殺人】と【犬神家の一族】を合体させるのも一つの手かも知れない。勿論、西村京太郎風をテイストも加える事も忘れてはいけない。タイトルとサブタイはこうだ……。

【酉村京太郎サスペンス・オリエント家の一族】〜幻の駅弁を狙う怪盗キッドの予告状?時刻表に載らない3分間停車と路線図にない駅の謎。探偵スケキヨ、十津川警部、ポワロ、コナン、コロンボ、探偵世界一は誰?捜査一課長も緊急参戦で「必ずホシを挙げる!!」

もはや、犯人が誰とかいう問題ではない。もはや、探偵のアベンジャーズ状態である。

…………。

やはり、犯人も動機も原作に忠実なままで良いかも知れない。要は、シェイクスピア劇やオペラ、ブロードウェイの古典ミュージカルのように、俳優の顔ぶれや演技、監督や演出家の演出、映像を楽しむのが【オリエント急行の殺人】や【犬神家の一族】の王道の楽しみなのだろう、という結論でひとまず筆を置く事とする。


〜おしまひ〜。