話題:みじかいの


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私鉄N駅の北口を少し進んだ先に昔ながらの個人商店が50軒ほど軒を連ねる化石のような商店街がある。N町アーケード商店街。昭和の中頃までは賑わいを見せていたその商店街も、今は全ての店の戸口に埃を被った鈍色のシャッターが降りている。俗に言うシャッター商店街である。街路灯も所々切れており、ついている灯りも何処か薄暗い。閑古鳥の鳴き声すら聴こえないほど寂れてしまった“かつての銀座通り”。

ところが、完全に廃墟と化していたN町シャッター商店街の50軒全てが何の前触れもなく復活したのである。しかも、申し合わせたわけでも無いのに50軒中49軒がタピオカ屋としてオープン。この無意味なシンクロニシティというか、何ともバランスの悪い復活劇に町の人々はさぞや驚いているだろうと思いきや、実はさにあらず、(またか……)との声が嘆息まじりに上がっているという。“町の生き字引”の異名をとる吉村嘉兵衛翁(384才―自己申告―ギネス申請中―フザケるな、とギネス社怒られ中)に拠ると、この商店街はいつもこんな感じでブームにあやかろうとするのだそうだ。それも明らかにブームから出遅れている。過去にも1軒を除いて全店ナタデココ屋になったり、同じく1軒を除いて全店ティラミス屋やベルギーワッフル屋になったりした。そしてブームが完全に去ると全店同時に閉店し再び廃墟に戻るのだ。

今回のタピオカ復活について、N町の出身者であり、著名な商店街評論家でもあるケロリンパ斉藤氏は次のようなコメントを残している。

「いや、この前ね、食卓の上にタピオカミルクティーが置いてあったのでちょっと失敬して飲んでみたら……タピオカじゃなくてカエルの卵だったよ。孫が川で見つけて捕ってきたらしい。濁った泥水がミルクティーに見えたんだな。今頃お腹の中でオタマジャクシになってかもよ。ワッハッハ」

K商店街と共にケロリンパ氏の今後からも目が離せないところである。


〜おしまひ〜