話題:SS



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『山手線の駅名、或いはカタカナ言葉の事』


〇〇月〇〇日

【金曜日】

(曇り 時々 風船おじさん)

政府(国交省主導)の極秘会議に特別アドバイザーとして参加する。議題は「山手線の駅名について」。新駅[高輪ゲートウェイ]の誕生で調子に乗った政府から、「この際、山手線の全駅に格好良い横文字のカタカナ言葉を足してみてはどうか」という提案がなされたのである。例えば、渋谷駅は[渋谷キャラメルマキアート駅]。キラキラネーム全盛の流れを汲んでか、とにかく名称をお洒落しようという魂胆である。集められたのは米WP誌が選ぶ【いま世界で最も影響力のある日本人100人】の中から職業名にはカタカナ言葉を持つ24人で、いずれも名うての有識者であった。

〈肉汁ソムリエ〉のA氏。
〈うろ覚えナビゲーター〉のC氏。
〈ガード下コンシェルジュ〉のK氏。
〈虚無僧ウオッチャー〉のY氏。
〈野人服デザイナー〉のL氏。
〈人面犬アンバサダー〉のF氏。
〈出家コーディネーター〉のZ氏。
〈ざこ寝インストラクター〉のM氏。
〈心眼バードウォッチャー〉のB氏。
〈花瓶アテンダント〉のO氏。

他、14名。日本人なら誰もがその顔を知る著名人ばかりであった。活発な討論の末、いくつかの候補が挙げられた。

[原宿キャンディキャンディ駅]、[新橋メーテルリンク駅]、[日暮里ザ・ヘッジホッグ駅][新宿ホールドミータイト駅][東京ラブストーリー駅][巣鴨ゴールドフィンガー駅][鴬谷ミュージックホール駅]。

調子に乗った議長が、ついでに都道府県名にもと何かしらの名物と適当なカタカナ言葉を入れようと提案。
[愛知しゃちほこモーニングサービス県]、[富山ふんどしブラックラーメン県]、[秋田なまはげバッドボーイズ県]など幾つかの候補が出されたところでお待ちかねのランチタイムとなり、当然のごとく議題は放っぽり出される。

ランチは、ひっぱり蛸めし、森のいかめし、峠の釜めし、など各地の有名駅弁が食べ放題となっていた。

結果、24人で計240個の駅弁を完食。満腹。ポンポンが膨れたら何も考えられなってしまったので、そこで会議終了となる。皆で小一時間ほどお昼寝したのち解散。


[備考]途中で誤配付されたカク秘文書。すぐに回収されてしまったので一瞬しか見ていないのだが、そこに書かれていた事が少し気になるので覚えている部分を書き留めておく。

『――カタカナ言葉を増やす事でゆくゆくは面倒くさい漢字を廃止し………低下させ………正式に日本の公用語を英語……51番目の州として……――』