話題:エッセイ



エッセイ(実話‐現実)と謎なぞ(創作‐虚構)の融合を試みる。&軽い駄洒落など。


◆エッセイパート◆

まだ五月だと言うのにこの暑さ、しかも湿度が高いので蒸し暑い。冷めかけた小籠包の中にいるような気分だ。もっとも小籠包の中に入った事は無いが。そこで、少し早い気もするが夏服を出す事にした。

ところが、衣装戸棚の建てつけが固くてなかなか開かない。しかし、これは当然の話でもある。衣装戸棚というものは元来そう簡単には開かないよう作られているのである。故に、我々はこれを【クロー(苦労)ゼット】と呼ぶ。

…………。

いや、違うのだ。その昔私は、悪い魔法使いにより「定期的に駄洒落を言わないと髪の毛がマロニーちゃんになってしまう魔法」をかけられており、そこで仕方なく駄洒落を言っているのである。

さて、誤解が解けたところで本題へと戻ろう。苦労して開けたクローゼットの奥より取り出した夏服の山。サマーシャッツ、サマースウェター、サマージャケット、サマーダッフルコート、サマーダウンジャケット、サマースキーウェア、サマー鎧兜、サマー宇宙服……etc 。

それら夏物衣類を部屋の〈鬼・衣紋掛けラック〉に掛け直していると、コロコロコロ、シャッツの胸ポケットから何やら円い物が転がり落ちてきた。

百円玉である。ラッキー。儲かった。

幸運は更に続く。今度はサマージャケットから千円札が出て来たのだ。一度ある事は二度ある、二度ある事は……。今度は一万円札が出て来るかも知れない。いや、今の勢いなら一万円どころか一億円ぐらい出て来ても不思議ではない。ビットコインだかピット星人だかの仮想通貨が出て来る可能性だってある。かくして私は全ての夏物衣類をひっくり返してポケット類を調べに調べたのである。

結果、出て来たのは――

顔がちょっと怖い招き猫のキーホルダー、パンシロン分包(胃薬)、合計金額が777円のレシート、鈴木徹くんの変更後のメアドと電話番号が書かれたメモ、以上の四点のみ。残念、一億円は入っていなかった。

それにしても、まさか、此れだけの物が出て来るとは思わなかった。収納する時に服の中を確認した筈なのだが……と言うか、ジャケットなんかはクリーニングに出したとばかり思っていたのだが、この状況を見る限り、出していなかった事になる。むしろ、そっちの方がショックだ。まったく、去年の夏の私――いや、仕舞う時だから秋の私か――は、どれだけボゥ〜っとしていたのだろう。

それでも、一千百円の思わぬ収入は、嬉しいか悲しいかで言えば、間違いなくこれは嬉しい。と言う事で、今年は夏服に三万円ぐらい入れたまま仕舞おうかなと思っている。どうせまた、来年の私は今年と同じく、一年前の事など忘れてしまっていると思うから……。

◆謎なぞパート◆

それにしても、徹(トオル)くんの新しいメアドを書いたメモがこんなところに入っていたとは。メアドの下には新しい電話番号も書かれている。思えば彼とはもう何年も連絡を取っていない。七年、八年、いや、もう十年以上だ。という事で久し振りに電話を掛けてみたのである。

いや、十年ー昔とはよくいったもので、取り巻く環境は、お互い、十年前とはがらりと変わっていた。特に徹くんが結婚していたのには驚かされた。何でも三年程前にお見合いをして婿入りする形で結婚したのだという。

そしてもう一つ。徹くんは昔から歯質が弱く、一年365日、常に歯医者に通い続けている事で有名だったのだが、何と、驚くべき事に、今は歯医者に通っていないと言うのである。聞けば、三年前に結婚してから急に虫歯にならなくなったそうだ。

結婚して婿入りすると虫歯になりにくくなる――そんな馬鹿な話は聞いた事がない。新手(あらて)のジョークだろうか。歯医者に住み込んでいるので“通ってはいない”とか。

ところが、ふと、ある事に思い至り、彼に訊ねてみた。「トール君、婿入りしたって事は名字が変わったという事だよね?」「うん」「なあ、もしかしてその新しい名字って〇〇〇〇じゃないか?」。すると彼は驚いたような声で言った「そうだよ。よく判ったなあ」。

なるほど。それなら納得出来る。ここに至り、私は全てを理解していた……。

さて、ここで謎なぞである。

Q「私が推察した徹くんの新しい名字は果たして何か?」

この段階で判ればかなり冴えていると言えるでしょう。先ずはノーヒントで少し考えたのち、追記に候補となる10個の名字を書いておきますので10択でお考えになってみて下さい。

正解は明後日となる5/31、追記欄の末尾に掲載いたします。