新手のオレオレ詐欺か?

話題:ちょっwおまw

ある晩の事…

私がテレビで草刈正雄を見ていると、電話が鳴った。

「もしもし…」
「もしもし…」

聞き覚えのない声…どうやら、電話の相手は見ず知らずの女性であるようだった

「えーと、どちら様ですか」

すると、女性は随分とくたびれた声で答えたのだった。

「…いえ、名乗る程の者ではありません」

うむ。なかなか謙虚な方のようだ。

しかし、私はテレビを見たかったので、よく判らない電話に長々と付き合っている暇はない。

「すいません。今ちょうどテレビで草刈正雄やってるんですがねぇ……」
私は、やんわりと電話を切ろうとしたのだが…

「ちょ、ちょっと、後生ですから、御待ちになっておくんなまし」

女性が哀れを誘う声で懇願してきたので、もう少し付き合ってあげる事にした。

「仕方ありませんね…でも、国広富之か若林豪が始まったら電話切りますよ」

一応、念を押す。

「あ、有難うございます…私も早く、要件を済ませて成田三樹夫を見たいです」

「で、ご要件は何でしょうか」

さっさと用を済まそうと話を進める私に、女性は静かに語り始めた…

「実は私…生活に疲れた哀れな女なのでござんす」

「ほぅ、それで」

「夫は出会うより十年も前に蚊に刺されて亡くなっていて…残された私は十人の幼い子供を抱え、必死で生きているのでありんす』

テレビでは草刈正雄が終わり、蟹江敬三が始まっていた。

「なるへそ。あなたの苦しい状況は良く判りました。で、私にどうしろと」

私は話を詰めていった。すると女性は…

「お金ください」

直入すぎるほど単刀直入に、そう言ってのけたのだった。

「頑張って働けばいいじゃないですか?新聞配達とか」

「もうやってます!新聞配達!…朝は朝刊を配り、夕方には夕刊を配る。それでも足りないので、夜は夜刊、深夜には深夜刊を、昼も昼刊配ってるぐらいです!」

そこまで働いているのならば、これ以上働け、とは言えまい。だが、私とて決して金持ちでは無い。

そんな感じで、しばし困っていると、電話口から赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。

「お聞きになっているように…子供の中には、まだ乳飲み子が三人もいるのです!何とか助けておくんしゃい」


あれ、変だぞ?

確か…“夫は出会う前に亡くなっていた”みたいな事を言っていたような…。

すると女性も、私の疑念を察したのか…

「まあ…その辺は、ほら、アレですから…」

と言った。

「なるほど、“アレ”ですかあ」

「ええ、まさしく“アレ”なんですの」

女性の後ろでは、相変わらず赤ん坊の泣く声が、まるで録音テープの様に規則正しく、同じ泣き方を繰り返していた。

その時、女性が深く息を吸い込む音が電話を通して聞こえた。

それはまるで

(さあ、ここからがクライマックスだ!!)

そんな“強い決意”を感じさせるものだった。

と、突如、女性は涙声になった。

「もう、この、いたいけな5人の赤ん坊に飲ませるミルク代も無いのです!!」

 
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公園の片隅で残業するOLの伝説。

話題:ちょっwおまw

【おめでトーマスは機関車。厳正なる審査の脚気(かっけ)…いや、結果…当社は貴殿を“仮採用”する事に決定致しました。つきましては、明日の午前9時半に本社人事部の方まで起こし下さいますよう、軽くお願い致します】

そんな通知ハガキの文面を読んで、上谷裕子は喜んだ。

裕子は、先日、とある会社の採用面接を受けていたのだ。

そして、たった今、裕子の元に届いたハガキは、面接の合格通知‥即ち、裕子の採用を告げるものに違いなかった。

フザケた文面に一抹の不安は感じるが…何せ就職氷河期の時代である、贅沢など言ってはいられない。裕子は素直に採用を喜ぶ事にした。

そして、明日は間違っても遅刻などしないよう、この日の夜はいつもより少し早めに‥そう、2分だけ早く寝床に着いたのであった。


コケっと明日━


クリスタルな朝日を浴びてキングに輝く大都会の高層ビル、通称《クリキンヒルズ》を目の前に、裕子は緊張を隠し切れなかった。

(今日から私も、“ああ果てしない夢を追い続ける大都会OL”なんだわ)

裕子は、目前に聳える《クリキンヒルズ》の横を通り抜け、その真裏にある古い4階建ての雑居ビルへと歩いていった。

雑居ビルの入り口には、いい感じで焼けた木製看板が掛けられている。

《もへもへ昭和ビル》

間違いない。

ここが、目的のビルであった。

入り口を抜けた裕子は、通知ハガキに描かれている社内図を頼りに、人事部を探す事にした。

ところが、社内図では人事部となっている部屋は実際に行ってみると【給湯室】であった。

すると、給湯室の奥から50歳ぐらいの男性が出て来て、裕子に向かって声を掛けてきたのである。

男性「あ、もしかして‥上谷裕子さん?」

裕子「はい、そうです。上谷です」

男性「どうも、初めまして‥人事部長の“陣字ブチ夫”です」

どうやら、この男性が人事部長であるらしい。

ブチ夫「さあ、取り敢えず、奥の人事部へ」

促されるまま、部長と一緒に給湯室の奥へ進むと、最奥部は入り口より少し広くなっていて、どうやら、その6畳ぐらいのスペースが【人事部】であるらしかった。

いやはや、給湯室の奥に人事部がある会社も珍しい。

裕子がそんな事を思っていると‥

ブチ夫「いやあ、昔はね‥ビルの全フロアがうち会社だったんだけど、業績の方がなかなか厳しくて‥で、今は飛び飛びで使っている感じで‥あ、取り敢えず座ってチョンマゲ」

何だか業績が上がらないのも頷ける。

だが、背に腹は代えられない。

何社も面接を受けた末に届いた、唯一の採用通知である。

(どんな会社でも、ここで頑張るしかないんだわ!)

裕子は決意も新たに、瞳の奥で炎を燃やした。

と同時に

ビシャッ!!

裕子の顔にコップの水が掛けられた。

ブチ夫「あ、ゴメン。なんか炎が上がってたからさ‥火事はマズいんだ。このビル、古いから」

裕子「ああ、すみません。気がつかなくて‥今後は気をつけます」

 
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深夜に大人は背の高い赤ちゃんとなる。

 

或る街の或る裏路地を入った突き当たりに小さなBARがあると云う。

パッと見、ちょっと入りづらい雰囲気ながら、会員制といった事もなく、誰もが自由にお酒を飲む事が出来るらしい。

だが‥

このBAR、実は一風変わった店なのだと情報提供者の一人は言う。

そして先日、

長年に渡る交渉の末、私はようやくこのお店を取材する事が出来た。

マスターは開口一番、こんな事を語り始めた‥。


『皆さんはよく、こんな事を言うじゃないですか‥“世の中には色んな人がいるからねぇ”と』

まあ‥言いますね。

『果たして、それで良いのでしょうか?』

と、言いますと?

『私はこう思うんですよ。我々は“居る人”ばかりじゃなく“居ない人”にも、もっと注目するべきなではないのか、と』


“居ない人”ですか?

『そうです。何でも今、世間では【あるある探検隊】とかいう漫才が大流行しているそうですが…』

いや‥もうとっくに廃れてますけど‥

『【あるある探検隊】の裏側には【ないない探検隊】が存在する事を忘れてはいけないと思うのです』

何ですかそれ?

『【あるある探検隊】は多くの人の共感を得る、云わば恵まれた“陽なたのチーム”です。ところが、【ないない探検隊】は誰にも共感して貰えない悲しい“日陰のチーム”なのです』

どうも‥今一つ、言ってる意味が理解出来ないのですが‥

『では具体的に教えましょう…例えば、ほら…あそこの女性‥』

あの女性が何か?

『あの女性はね‥』


メールは必ず背骨で打つ人


『‥なのですよ』


メールを‥背骨で?

そんな人、いる訳ないでしょう‥。


『だから、そこが【ないない探検隊】なのですよ。そんな人は世の中に居るハズが無いと皆に思われている悲しい存在と云う訳です』

じゃあ、マスター…

あの女性に、ちょっと話を聞きに行っても良いですか?

『あ、それはご遠慮願えませんか』

どうして?

『BARと云う所は、相手の事を根堀り葉掘り深く詮索してはいけない場所なのです。それが大人のルールと云うものです』

まあ確かにそうかも知れないけど‥どうにも、腑に落ちなさが半端じゃないんですよ。

『それから、奥の方でスコッチを飲んでいる若い男性ね…』

ええ‥彼が何か?

『彼は…』


1日に24回、床屋に髪を切りに行く人


『‥なのです。なんでも、髪の伸びるスピードが地球の自転速度を上回っているのだとか』


そんな奴いないって!

と云うか‥比較対象も意味不明だし、全く理解出来ないんですけど!?


『共感して貰えないから【ないない探検隊】なのです』

そう言われても‥

どうしても気になるんで、本人に確かめてもいいですか?

『それは駄目です。ご遠慮ください。それからですね‥左側の壁に寄りかかってマカダミアナッツを摘まんでいる綺麗なご婦人‥』

ええ…

『彼女はね…』
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泣いた(赤+青=紫)鬼。

話題:創作小説


【ダジャレ千夜一夜物語 第6夜】



ある時の事。

まあ、色々とあって‥

私は知り合いの赤鬼に寿司を奢る羽目になった。

赤鬼は、ああ云う性格なので【特上寿司】にしろと言ってきかなかったが、懐具合の寂しかった私は何とか【並寿司】で抑えたいと思っていた。

そこで私は、約束の日の前日、知り合いがやる寿司屋へと向かったのだった‥。


ー【へっぽこ寿司】ー

ガラガラ…

曇り硝子の扉を開けて中へ入ると、案の定、店内もガラガラであった。

ガラガラ蛇だよ、人生は。

私「大将、相変わらず誰も客がいないね」

大将「客? 旦那がいるじゃありやせんか」

私「こりゃ、一本取られた」

ワハハのハ♪

大将「で…今日は?」

私「そうだな‥えっと、前髪は少し長めに‥サイドとバックは刈り上げて欲しい」
大将「前髪は長めね。…って、うちは床屋じゃねぇや!」

私「こりゃ失礼。じゃあね…ジャーマンドッグとエスプレッソで」

大将「店内でお召し上がりですか?…って、うちはドトールじゃねぇや!」

私「こりゃまた失礼。では…例のサイバー攻撃について大統領と直に話をしたいんだが」

大将「そしたらホットラインでホワイトハウスに…って、うちは国防総省(ペンタゴン)じゃねぇや!」

ワハハのハ♪

大将「旦那、そろそろ勘弁して貰えやせんか?‥何かちょっと嫌〜な汗が出て来やがった」

私「サルマタ失敬。いや最近、“冷めた笑い”がマイブームでね」

大将「そりゃまた高尚なご趣味で…で、要件は何なんですかい?」

私「それなんだが…実は明日、この【ヘモグロビン寿司】に赤鬼を連れて来ようと思ってる」

大将「【ヘモグロビン寿司】じゃなくて【へっぽこ寿司】でさぁ。全く‥“へ”しか合ってねぇし」

私「すまん。どうにも“へ”のインパクトが強すぎて…で、だ…さっきも言ったように明日の晩、赤鬼をこの【平安京】に連れて来ようと思ってる」

大将「もう“へ”さえ付きゃ何でもいいんですかい?」

私「良い。そこで、折り入って一つ頼みがあるんだ」

大将「何か悪い予感がするんでごぜぇやすが…何でございやしょう?」

私「赤鬼の奴は【特上寿司】を食いたがってる。しかし、私は何とか【並寿司】でごまかしたい…そこで大将の出番だ」

大将「あっしの?」

私「そうだ。私が【特上寿司】を注文するから、大将は特上を出すふりをして、並寿司の中の並寿司‥【ド並寿司】を出して欲しい」

大将「ド並み寿司って…何だか女郎花(おみなえし)や花水木(はなみずき)みたいな…でも、旦那…そんな事して赤鬼さん、怒りやせんか?」

私「なぁに、上手くやりゃ大丈夫さ」

大将「まあ、旦那の頼みとあっちゃあ‥一肌脱がない訳にはいきやせんが」

私「それじゃあ宜しく頼むよ」


大将「へい。では、明晩お待ちしておりやす」

【へっぽこ寿司】のくすんだ店内の壁に黄ばんだセロテープで貼られている[浅香光代・女剣劇]が、店を出る私の背中ををキリリと見つめていた‥。


そして、当日の晩。


私と赤鬼は連れ立って、陰謀渦巻く【へっぽこ寿司】の暖簾を潜った。大将「へいらっしゃい!」

赤鬼「おっ、威勢のいい店だな」

私「そりゃもう、ミツュランで星が46個も付いた店だからね」

赤鬼「それは期待が持てそうだ…と云いたいところだが…他に誰も客がいないのが気になる」

私「そ、それはあれだよ‥ねぇ大将?」

大将「へ、へぇ‥まさしく、その“あれ”でごぜぇやす」

赤鬼「…すまん。俺、鬼だから頭が良く回らないのかも知れんが…云ってる意味がさっぱり判らん」

私「つまり‥貸し切り!そう、今晩は赤鬼さんの為に特別に店を貸し切りにして貰ったのさ」

大将「そ、その通りでごぜぇやす」

赤鬼「ふぅん…それは、気を使わせてしまったな…の割りには、この店、人の気配と云うか匂いがまるでしないんだが…ほら、俺 鬼だから、そういうのに敏感なんだ」

私「そりゃ当たり前さ。ねぇ大将?」
大将「へぇ、当たり前でごぜぇやす」

赤鬼「…すまん。鬼だからかも知れんが、やっぱり全然判らん」

私「あれだ。‥これくらい高級な店になると、来る客も清潔で匂いなんか全くしないのさ」

大将「旦那の仰有る通りで」

赤鬼「そういうもんかな‥」

私「そういうもんさ。じゃ、大将…赤鬼さんに【特上寿司】を一人前頼むよ」

赤鬼「あ、出来れば二人前で願いたい。ほら、俺、鬼だから‥けっこう量食うんだ」

私「じゃあ‥クァッパァな感じで二人前ね」

大将「へい。特上寿司をクァッパァな感じで二人前っ!」

赤鬼「待て待て、クァッパァって何だ?」

私「寿司語で“腕によりをかけて”とか“持てる力を存分に使って”とか、そういう意味だよ」

赤鬼「そうか。なんか変な事聞いてすまん」

私達は【へっぽこ寿司特性・クァッパァ特上寿司】が出てくるのを待った。

そして4分後…
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俺の名は潜入捜査官ジャッカル。



(やっとここまで辿り着いたか‥)

深夜2時の埠頭、第35番倉庫の中で、積み荷の一つに寄りかかりながら、ジャッカルと呼ばれる男は、独り心の中で呟いていた‥。

(長くて孤独な捜査も、あと1時間で終わる…)


そう‥

ジャッカルの正体は潜入捜査官なのだ。

彼は《紅ズワイガニ団》と呼ばれる謎の組織を摘発する為、唯一《紅ズワイガニ団》と取引があると噂される別組織《ベビーホタテ団》に正体を隠して潜り込んだのであった。

それが今から3年前‥

以来、彼がこうして《ベビーホタテ団》で取引を仕切るようになる迄には様々な困難があった。

例えば、味噌ラーメンが食べたい時でも、組織の信用を得る為に、泣く泣く自分の気持ちを押し殺して塩バターラーメンを食べたり…

レモンティーが飲みたい日も、ぐっとこらえてミルクティーを注文したり…

それはそれは、想像を絶するような精神的、肉体的な苦難の毎日であった。

その全ては組織の信用を得て、標的である《紅ズワイガニ団》との接触をはかる為。

それでも一度だけ、どうしても自分を譲る事が出来ずに“茶色い靴下”を履いてしまい…危うく正体がバレそうになった苦い思い出がある。

しかし、その最大のピンチ(靴下ピンチ)を切り抜けてからは、トントン拍子に組織の中での地位を上げ、ついに、今夜の《紅ズワイガニ団》との秘密取引に漕ぎ着けたのだった。

それにしても…
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