2019かげらふ日記(虚構)#05「流しのギター弾きの事」


話題:妄想を語ろう



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『流しのギター弾きの事』

〇〇月××日【金曜日】

(雨、時々、キターー!の目薬)

仕事の帰り、珍しく出勤していた社のCEOに誘われ、同僚四人と【初恋横丁】へ。【初恋横丁】は昭和の面影を残す古い小路に赤提灯がみっしりと軒を連ねる飲食店街だ。ノスタルジックな雰囲気に包まれながら他愛もない話に興じていると、『一曲どうだい?』、暖簾から顔を覗かせる者があった。瞬間、店の空気が一変する。それもその筈、その老年男性こそ〈伝説の流し・チューさん〉だったのである。“流し”というのは主にギター一本を持って飲み屋を渡り歩き、客のリクエストを受けて歌(演歌や歌謡曲が多い)を唄ったり演奏したりする職業の事だ。

それにしても、完全に都市伝説だと思っていたチューさんが実在していたとは驚きだ。西部劇から飛び出したようなウエスタンスタイル。背中に大きなアコースティックギターを背負っている。まるで“ギターを抱いた渡り鳥”(小林旭さん主演のシリーズ映画)だ。本名は不明。昭和初期〜中期の闇市の時代から既に伝説の流しとして知られていたらしいが、いったい歳は幾つなのだろうか。兎に角、全てが謎に包まれている存在なのだ。

そして、チューさんが伝説の流しと呼ばれている理由、それは違う曲のメロディと歌詞を自由自在に組み合わせて唄う事が出来るという特技にある。例えば、レミオロメンの[粉雪]のメロディにイルカ(伊勢正三)の[なごり雪]の歌詞を載せて唄ったり(敬略)、松田聖子の[青い珊瑚礁]の歌詞を藤山一郎の[青い山脈]のメロディで唄うなど洒落た事も可能だ。他にも、メロディはチェッカーズの[涙のリクエスト]で歌詞は殿さまキングスの[涙の操]とか、ミスチルの[HERO]のメロディに麻倉未稀の[HERO]の歌詞など、どのメロディにどの歌詞でも、組み合わせでは自由自在だというから、これは最早、特技を超えて異端の能力、異能と言って良いだろう。凄いのは、長さもムードも異なる曲を聴き手に違和感を与える事なくきっちり唄い切るという点だ。当然、日本に存在する全ての楽曲を知っており、尚且つ演奏出来るという事になる。まさに伝説の存在だ。

何はともあれ、一回の歌唱でメロディと歌詞、2曲分楽しめる上、異次元的な雰囲気に頭がクラクラして酔いの回りも速くなるので酒量も少なく済むので、かなりお得なのである。グリコでは無いけれども、一粒で二度美味しい。更に、チューさんの気分が乗ると、そこに物真似が加わる事もあるらしい。例えば、西城秀樹の[ヤングマン]のメロディに野口五郎の[私鉄沿線]の歌詞を載せ、郷ひろみの声で唄う、とか。そうなると、メロディ、歌詞、声色それぞれ別の物が一つとなり、これはもはや三位一体と言っても過言ではないだろう。父と子と精霊に栄光あれ。尾張、紀伊、水戸の徳川御三家もビックリ、トリオで変身・トリプルファイターという訳だ。


つごう12曲。チューさんの歌唱を堪能した私たちは幸福な気分で【初恋横丁】を後にした。伝説の流し。一生に一度遭遇出来たら大ラッキーと言われるぐらいの存在だが、また逢うことは可能なのだろうか。欲を言えば、もう少し唄が上手くなって欲しい。それから、CEO(瀬尾)くん、君は平社員なのだから、毎日ちゃんと出勤した方がいいと思うゾ。


〜おしまひ〜。

2019かげらふ日記(虚構)#04「山手線の駅名、或いはカタカナ言葉の事」

話題:SS



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『山手線の駅名、或いはカタカナ言葉の事』


〇〇月〇〇日

【金曜日】

(曇り 時々 風船おじさん)

政府(国交省主導)の極秘会議に特別アドバイザーとして参加する。議題は「山手線の駅名について」。新駅[高輪ゲートウェイ]の誕生で調子に乗った政府から、「この際、山手線の全駅に格好良い横文字のカタカナ言葉を足してみてはどうか」という提案がなされたのである。例えば、渋谷駅は[渋谷キャラメルマキアート駅]。キラキラネーム全盛の流れを汲んでか、とにかく名称をお洒落しようという魂胆である。集められたのは米WP誌が選ぶ【いま世界で最も影響力のある日本人100人】の中から職業名にはカタカナ言葉を持つ24人で、いずれも名うての有識者であった。

〈肉汁ソムリエ〉のA氏。
〈うろ覚えナビゲーター〉のC氏。
〈ガード下コンシェルジュ〉のK氏。
〈虚無僧ウオッチャー〉のY氏。
〈野人服デザイナー〉のL氏。
〈人面犬アンバサダー〉のF氏。
〈出家コーディネーター〉のZ氏。
〈ざこ寝インストラクター〉のM氏。
〈心眼バードウォッチャー〉のB氏。
〈花瓶アテンダント〉のO氏。

他、14名。日本人なら誰もがその顔を知る著名人ばかりであった。活発な討論の末、いくつかの候補が挙げられた。

[原宿キャンディキャンディ駅]、[新橋メーテルリンク駅]、[日暮里ザ・ヘッジホッグ駅][新宿ホールドミータイト駅][東京ラブストーリー駅][巣鴨ゴールドフィンガー駅][鴬谷ミュージックホール駅]。

調子に乗った議長が、ついでに都道府県名にもと何かしらの名物と適当なカタカナ言葉を入れようと提案。
[愛知しゃちほこモーニングサービス県]、[富山ふんどしブラックラーメン県]、[秋田なまはげバッドボーイズ県]など幾つかの候補が出されたところでお待ちかねのランチタイムとなり、当然のごとく議題は放っぽり出される。

ランチは、ひっぱり蛸めし、森のいかめし、峠の釜めし、など各地の有名駅弁が食べ放題となっていた。

結果、24人で計240個の駅弁を完食。満腹。ポンポンが膨れたら何も考えられなってしまったので、そこで会議終了となる。皆で小一時間ほどお昼寝したのち解散。


[備考]途中で誤配付されたカク秘文書。すぐに回収されてしまったので一瞬しか見ていないのだが、そこに書かれていた事が少し気になるので覚えている部分を書き留めておく。

『――カタカナ言葉を増やす事でゆくゆくは面倒くさい漢字を廃止し………低下させ………正式に日本の公用語を英語……51番目の州として……――』

2019かげらふ日記(虚構)#03「朝礼の校長先生の事」。


話題:妄想

『朝礼の校長先生の事』

〇〇月××日【火曜日】

(晴れ 時々 誰かの抜け毛)

古いカセットテープをCDにダビングし、残しておこうと思い立つ。選別の為に改めて片っ端からテープを聴いていると、小学校の時の朝礼の校長先生の話し声が入っているものがあった。そう言えば、冗談で朝礼の様子を録音した事があったっけ。

内容があるような無いような話を声の大きさと元気さでカバーする独特の話術に懐かしく耳を傾けていてハッとした。話の途中、校長先生は「ヘイセイ」言ったのち、慌てて「ショウワ」と言い直していたのである。テープを止めて再度聞き直したが間違いない。明らかに[へいせい]と自信を持って発音している。声がデカいのでよく判る。

どういう事だろう。この時は「平成」という元号は存在していない筈なのだが。

注意して他の部分を聴き直す。すると明らかにおかしな言葉が幾つか飛び出していた。「スマホ」「Win-Win」「小惑星リュウグウ」「ワイルドだろぅ〜」。当時は気づかなかったが、いずれも昭和の中頃には不自然なワードだ。他にも「新東京へちまタワー」「ポルッペンホルッペン」「尾てい骨ブーム」「首都群馬」「えびす総理大臣」など聞いた事がなかったり意味の解らない言葉も幾つかあった。

今にして思えば、あの校長にはどこか浮世離れしたような所があった。物影で腕時計の文字盤に向かってコソコソ話しかけたり、かぶっていたヅラの横の小さな突起(ボタンか?)を押し、一瞬で髪型を変えるのを目撃した人もいる。

もしかすると、あの校長先生は数十年、いや数百年後の世界から来た未来人だったのかも知れない。


〜おしまひ〜。

2019かげらふ日記(虚構)#02「シャツのボタン」

話題:妄想を語ろう



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『シャツのボタンの事』

〇〇月××日【木曜日】

(雨 時々 ドモホルンリンクル)

おNEWのシャツ(超ボタンダウン)を着て初のお出掛け。電車に乗っている時、シャツの前ボタンをかけ違えているのに気づいて慌てて直す。超ボタンダウンだけあって前閉じのボタンだけでも24個あるので嵌め直すのも一苦労。ちなみに両腕も背中も両脇もボタンで留める仕様(総ボタン数240個)なので着替えるのにとても時間が掛かるのだ。でも、それだけの価値があると思う。何せ、ボタンの一つ一つに歴代のアメリカ合衆国大統領や大統領補佐官、FBI長官、ニューヨーク州知事の顔が彫刻されているのだ。これはカッコいい。これがカッコよく無かったらこの世にカッコよい物など一つもないだろう。

電車から降りて、打ち合わせ等で使ういつもの喫茶店へ。ここで、またもや、シャツの前ボタンをかけ違えている事に気づく。さっき直したはずなのに再び1個ズレになっている。狐につままれたような気持ちで今度こそ間違えないよう掛け直す。

が、その後も、ふと気づくといつの間にかボタンがズレて留まっている。紐やロープ、コードというのは放っておくと自ら勝手にからまりだす性質がある(紐=生物説)が、もしかするとシャツのボタンにも同じような性質が備わっているのかも知れない。ボタンダウンのシャツ=生物説。近いうちに論文としてまとめ、学界に提出するとしよう。そんな事を思いながら、かけ違えたボタンを見つめていると、ボタンの中のジョンFケネディ大統領顔がニヤリと笑ったような気がした。


〜おしまひ〜。

2019かげらふ日記(虚構)#01『テレビジョン』




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『古いテレビジョンの事』

〇〇月××日【月曜日】

(晴れ 時々 パーマン2号)


馴染みの古道具屋[てなもん屋]でかなり年季の入ったテレビジョンを衝動買いする。当然ブラウン管。メーカーは不明。店主によるとアルジェリア製かナイジェリア製との事だが、どうも口からの出任せっぽい。恐らくどちらも違うだろう。

最近のテレビは薄型化が加速しているが、コイツ(古テレビ)は違う。この分厚い奥行きはまるで、類人猿の頭蓋骨の後頭部のようだ。チャンネルは勿論、左右にがちゃがちゃ回すダイヤル式だ。その重厚な居住まいはまるで「本体が薄くなるのは結構だが、釣られて一緒に中身(番組内容)まで薄くなってはいかんのだ」と我々に語り掛けているかのようだ。

その古テレビ、見た目が草臥(くたび)れている割りに動作は良好で、映りも流行りの4Kや8Kには及ばないものの2・8Kぐらいはありそうだ。480円(税込)という値段を考えれば、良い買い物をしたと言えるだろう。アナログの筈なのに何故か普通に地デジ放送が観られるのも嬉しい。ただ、つけていきなり[なるほどTHEワールド]が始まったのには驚いた。CSの再放送ではない。れっきとしたリアルタイムの放送だ。


『さすが、年代物のテレビだけあって、やっている番組も古い!!』


他にも[3時のあなた]や[カックラキン大放送]、[コメットさん]、[マチャアキ海をゆく]、[欽ちゃんのOH!階段家族]、[みゆき野球教室]などことごとく古い番組ばかり。どうやら年度に統一性はないらしく、とにかく古い番組がごちゃまぜになっている感じ。朝ドラは「おしん」だ。しかし、まあ、これはこれで悪くないようにも思える。先ほど私は2・8Kと言ったが、どうやらこれは誤りだったようで、正解は[谷K]だろう。画像と書いてガチョーンと読ませるクレイジーなシステム。いや、或いは[ロボット刑事K]かも……

あっ!王選手が756号のホームランを打った!ハンク・アーロンの記録を超えた!世界新記録だ!一本足打法、やっぱりスゴい。やったねパパ!明日もホームランだ!

……と言ったところで、本日の日記を終えるとしよう。


〜お仕舞い〜。


2019年は、こういう感じの日記(虚構)を軸に進めて行きたいと考えております♪(*^^*)


話題:懐かしいテレビ番組


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