かげらふ日記(虚構)#15「再び、人事異動」


話題:妄想を語ろう


◆◇◆◇◆◇◆◇

『人事異動、再び』

○○月××日【月】(晴れ、ときどき、蝉しぐれ、たまーに、浪花恋しぐれ)


私の勤務する世界的企業《ギャラクシー・フロンティア&スシ・ニンジャcompany》では頻繁――年に数回以上――の人事異動が行われる事は以前お話しした通り。多種多様な経験を積ませる事で社員一人一人の視野を拡げて発想の引き出しを増やし対応力を高めるのと同時に、より広い人的交流を促す為である。

確か前回の日記では花形部所の一つである【おもてなし事業部・おいでやす第2課】から【アッチを見ろ事業部・ソッチを見ろ第3課】への異動、及び、役職が〈めそめそ平社員A〉から〈のびのび平社員B〉へと昇進した旨を書き記したと覚えている。

実はその後も数回の人事異動があったのだが、それらは何れも同一部内で課が移るだけの小規模なものに留まっていた。具体的には――ソッチを見ろ第3課→コッチも見ろ第1課→ソコは見ちゃダメ第4課→見ちゃダメとか言われると逆に見たくなるよね第2課(現在部署)。振り幅の広い異動を基本とする当社には珍しい控えめな人事だ。何故このような事態になったのか、社内では様々な噂が飛び交ったが真相を知るのは【本社統括人事部】のみである。その【本社統括人事部】というのがまた謎のヴェールに包まれた部所であるのだが……それについてはまた機会を改めて書き記そうと思う。

兎にも角にも久々の大きな人事異動。否が応にも社内の緊張感は高まる。当日の朝、社内の空気は目に見えて判るぐらいピリピリしていた。冬でもないのにドアノブに触れるとピリっとくる程だ。

さて、これまで異動の内示は社員食堂の壁に貼り出されるのが慣例であった。何故そんな場所で発表されるのか。勿論それには歴とした理由がある。花形部所や望み通りの異動を得た者は嬉しさのあまり高級なワインやシャンパンを開けたくなるだろう。逆に悔しい異動となった者はストレスでヤケ食いをしたくなる。発表の場が社員食堂であれば、その場で直ぐに祝杯をあげられるし、ヤケ酒も呑める。同時に社員食堂の売り上げも伸びる。まさに一石二鳥。ウィンウィン。それが理由だ。

ところが今回は少し勝手が違う。密を避ける為、各自デスクのパソコンに全社員の異動先一覧が届く方式が採られたのである。

午前10時、机のパソコンに人事部から新着メールが届く。内示だ。クリックリし、一覧表を開く。一応、異動先の希望は〈宇宙開発部・火星探査課〉と届け出てある。果たして願いは聞き入れられたのか。緊張の中、リストをスクロールして自分の名前を探す。あった。ほどなく自分の名前を見つけた私は異動先を示す矢印の先に目をやる。

→→汝【草むしり部・イボイボ軍手課】への異動を命ず。合わせて〈のびのび平社員B〉→〈よぼよぼ平社員A〉へ降格とす。

がびーーーん(昭和の擬音)。

【草むしり部】は主に中庭など敷地内の草むしりを行う部門だ。当然、人気はなく、此処への異動は事実上の左遷といえる。そう言えば先月、社長とエレベーターに乗り合わせた際、うっかり“すかしっ屁”をしてしまった事があった。7、8人乗っていたのでバレないだろとタカを括っていたが、どっこい、見抜かれていたようだ。今回の左遷はそれが響いたに違いない。しまった。ジョージ・ワシントンのように正直に申し出れば良かった。

が、悔やんでも仕方ない。ここは2秒で気持ちを切り替える。これは十分に挽回出来る失敗だ。それに【イボイボ軍手課】ならば、そう悪くはない。【素手課】や【片手のみ使い古し軍手課】に比べれば天国だ。我が社の中庭は東京ドーム20個分の面積を誇るので軍手の有る無しは生死に関わる大問題なのだ。まずは【イボイボ軍手課】で成果を上げ【鎌・ナタ課】への異動を目指すとしよう。

問題は〈よぼよぼ平社員A〉への降格だ。これにより今まで得ていた貴重な権利を幾つか失う事になる。大半は取るに足らないものだが、極めてキビしいものが二つある。まずは「仕事中のYシャツの袖まくり禁止」。これはキビしい!男も女も袖を捲ってからが本当の勝負だろう。大体、腕捲りせずに良い仕事をした人間など未だかつて見た事がない。良い仕事が出来ないという事は昇進が見込めないという事でもある。それは困る。

そして二つめ。「仕事帰りのバッティングセンターへの立ち寄り禁止」。これは相当痛い!仕事帰りのバッティングセンターこそ明日への活力の源である。日本のサラリーマンなら誰でもそうだ。逆に言えば、仕事帰りに気持ちよくバッティングセンターで汗をかきたいが為に人は昼間働くのである。「バッティングセンターに行くな」という事は「仕事をするな」という事と同じである。これは遠回しなリストラ勧告と捉えて然るべきだろう。

どうやら、これは早急に〈よぼよぼ平社員A〉から昇進する必要がありそうだ。と言うか、実は既に手は打ってある。それに関してはまた次回の日記で、花形部所への華麗なる返り咲き、及び、肩書きのランクアップと共にお届けしようと考えている。


〜おしまひ〜。



かげらふ日報(虚構)06「国民的バンドから脱退者」


話題:短文


人気ハードロックバンド【クリムゾンギガバイト】は、昨日行われた新曲発表の記者会見で、今回の楽曲リリースを最後にメンバーの[鬼屋敷JOE]がグループから脱退する意向である事を合わせて発表し、会見場は一時騒然となった。

【クリムゾンギガバイト】は2012年4月、サヒゼリヤのバイト4人が意気投合し誕生したハードロックバンドで、[鬼屋敷JOE]は創設メンバーの1人。(当時の役職はバイトリーダー。時給+80円)。その後、[ミュージッ子ライフ]等の雑誌のメンバー募集で2人を加え、同年7月に結成3ヶ月という異例の速さでメジャーデビュー。デビュー曲「ウルフファング」がオラコンで初登場1位を記録し瞬く間に人気バンドとなる。その後、3作目の楽曲「ヒアリにご用心!」は全米ビールボド誌のチャートで総合2位となり、世界的ロックバンドの仲間入りを果たす。その後も日本を含む世界11ヶ国でミリオンヒットを連発、ボンジョビやメタリカ、ガンズ&ローゼス、ナイトレンジャー、ヴァンヘイレン、エアロスミス等と肩を並べる“21世紀で最も偉大な日本のハードロックバンド”と呼ばれるようになる。

脱退の理由について[鬼屋敷JOE]は――

『どうも最近、アルペンホルンという楽器はハードロックに合わないかも知れないという気がしてきて、悩みましたが結局バンドを抜ける事に決めました』

――と語った。

それを受けてファンからは、「やっと気づいてくれたか」、「持ち運びが面倒くさそう」、「演奏は上手いのだから、ソロアルペンホルニストとして頑張って欲しい」、「スイスへ行くべき」などの声が上がった。実際、彼のソロパートになると急にハードロックから牧場の歌(まきばのうた)になっており、そこが唯一の弱点とされていたが、今回の決定によりそれが解消された形となった。一方、そこが斬新で良かったという声もほんの一部ではあるが存在している事も伝えておかなければならないだろう。

また、会見の翌日、残ったメンバー5人は事務所を通じて「進む道は違っても、僕らにとってJOEさんは永遠にバイトリーダーです」との共同声明を発表した。また、元バイト先のサヒゼリヤの店長は「更衣室のロッカーに靴下と帽子とベルトの変なバックルが置かれたままなので“なる早で”取りに来て欲しい」とのコメントを寄せた。

更にその翌日、鬼屋敷JOH氏の代わりに新メンバーが一人加わる事が発表された。新メンバーはやはり元サヒゼリヤのバイトで名前は[川岸BOB]、担当楽器は[タンバリン]。それに対しファンからは「ええ加減にせえ」、「タイガースの岸部シローかっ」、「グループサウンズをやれ」、「と言うか、そろそろギターを入れた方が……」と言った歓迎の声が上がった。

いずれにせよ、今後の鬼屋敷JOH氏の活動に世界中が注目している事は間違いない。


〜おしまひ〜。

かげらふ日報(虚構)05「未来人の言葉」


話題:短文


本誌遊軍記者のMが、かねてより街の噂となっていた「現在より400年後の日本からやって来た未来人」との接触に成功した。

世界を揺るがすに足る、否、世界をひっくり返すビッグニュース。本来ならば巻頭から大幅に頁を割いてスペシャル大特集を組むべきところが、このように控えめで小さな囲み記事になったのには勿論理由がある。つまり、インタビューには辛うじて応じて貰えたものの、肝心の質問に関してほぼノーコメントを貫かれてしまった、というのがそれである。

質問M「400年後の未来からやって来たそうですが、移動手段はやはりタイムマシンなのでしょうか?」

未来人『……我々の時代のテクノロジー関しては話せない決まりになっていますので、すみませんがノーコメントで』

質問M「貴方が来たのは未来の日本から、という事ですが、400年後の世界の枠組みや情勢についてお聞かせ下さい」

未来人『……残念ですが、未来に影響を及ぼす可能性のあるご質問にはお答え出来ないのです』

質問M「地球外生命体の存在は確認されているのでしょうか?」

未来人『……申し訳ありませんが、それもノーコメントで』

万事そんな具合である。流石にこれでは特集記事として成立させるのは困難だろう。それでも、1つだけ奇跡的に回答を得られた質問があり、そのお陰で辛うじて記事にする事が出来たという訳だ。

400年後の日本からやって来た未来人が、たった1つだけ教えてくれた未来の事、その質問とはこうである。

質問M「400年後の日本で一番人気のあるテレビ番組って何すか?」

何という投げやりな質問だろう。そもそも、そんな未来に今のようなテレビ放送があるという保証は何処にもない。更には口調もそれまでの「でしょうか?」から「すか?」とぞんざいなものに変わってしまっている。まるで部活の先輩―それも、ちょっとナメている先輩―に対する口調である。しかし、まあ、それもやむを得ない側面もある。何故なら、これまでM記者の放った936個の質問は全てノーコメントで返されていたからだ。これでは質問にイマイチ気持ちが入らないのも無理はない。

この質問も当然無回答だろう。M記者は確信していた。ところが、違っていた。未来人は一瞬、天を仰いだ後、キッパリとこう断言したのである。


未来人『ああ、それなら【クイズ脳ベルSHOW】で間違いありません』


ワーオッ!(←司会のますだ氏ふうに)なんと【クイズ脳ベルSHOW】は400年後の未来でも放送されていた!


長寿番組にも程がある。しかし、冷静に考えれば決してそこに不思議はない。役者や歌手、芸人などこの世にタレントが存在する限り、あの番組は続けてゆく事が可能であるからだ。400年後だろうと1万年後だろうとそれは変わらない。

それにしても、まさかの即答。未来の事を教えてしまって大丈夫なのだろうか。これによって歴史が変わったりはしないのだろうか。危惧するM記者。が、どうやらそれは杞憂に過ぎないようであった。

未来人『あ、それなら大丈夫です。知ったところで未来への影響は0だと思います。あの番組は時空の外側のゆる〜い世界に存在している事が証明されていますので』

さすが【クイズ脳ベルSHOW】!ただの番組ではないと薄々感じてはいたが、まさかそこまで凄い(と言うか、“どうでもいい”)番組だったとは。

未来人さんは続けてこう語った。

『優勝した時の賞品が[お米]という時代錯誤感や、「げげっ、この方まだ存命だったのか!」という不老不死感が妙に心地好いんですよね』

どうやら番組の中身もまったく変わっていなさそうだ。願わくばどうか、地球が滅亡するその日まで、そのままの緩さで続けていって欲しいものである。


〜おしまひ〜。


かげらふ日報(虚構)04「俺たち表記ん族」


話題:短文



『俺たち表記ん族』

文部科学省はこのたび『【かいきにっしょく】の漢字表記を従来の【皆既日食】から【怪奇日食】へと改める事を仮決定した』と発表した。

確かに、初めて【かいきにっしょく】という言葉を耳にした際、マトモな人間であれば(えっ!怪奇日食!?)と思うのが当然であるし、“皆既”日食が正しい表記だと知った後も、(いや、誰がどう考えても“怪奇”でしょ)とか(“怪奇”日食の方が百倍良いのに)などと、心の中では【怪奇】を採用している事は火を見るより明らかである。

今回の変更は、そのような国民の本音を汲み上げた結果とみられているが、これが本当に民意を反映してのものなのか、それとも大衆迎合の安易なポピュリズムによるもなのか、その判断は難しいところである。或いはそのどちらでもなく単なるアホだとの声もある。

更に、今回の変更に伴って【にっしょく】の漢字表記も【日食】に一本化し、公の場で【日蝕】の方を使用した人間に対しては、100万円以下の罰金もしくは100日のボランティア活動を義務付ける方針である事も合わせて発表された。

この変更について、言語表記の権威であり文科省の特別アドバイザーも務める柿方学(かきかたまなぶ)教授は次のように語っている。

『わざわざ難しい方の“蝕”の字を使いたがる人ってのは、つまりはアレですな、難しい方の字を使えばカッコ良く見えて、さぞや異性にモテるだろうと。どう考えてもこれ以外に理由はあらないのです。もう動機不純もいいとこ。よって、表記はもう簡単簡潔な【日食】のみで十分。ただし、虫が好きで好きで大好きで、文字の中であっても“虫”を使いたい、そんなファーブルな人たちについては特例を認める事も視野に入れて考えた方が良いかも知れませんな。まあ、正直、そこはどうでもよござんす』

なるほど、流石は柿方教授、多くの示唆に富んだ言葉である。

なお、同時に議題に上がっていた『【たいふういっか】の漢字表記を従来の【台風一過】から【台風一家】に変更する案件』に関しては、時期尚早の意見が出た事から今回は見送られる運びとなった。


〜おしまひ〜。

かげらふ日報(虚構)03『新雑誌創刊!』

話題:くだらない話

何かと大変な時ではありますが、引き締めるべきところは引き締め、尚且つ、精神的な疲弊を避ける為に、緩められる時にはしっかりと緩め、なんとか乗り切って参りましょう。戦々恐々と過ごす息の詰まる日々の中で、当場所が一服の清涼剤、一休の止まり木となれば幸いに思います。

あ、あと、ぷほ〜ね(すまるとぷほ〜ね=スマートフォン)がまたまた不調に(汗)……どうかこちらも早く元に戻りますように(・ω・`=)ゞ

と言う事で、本編をどうぞ♪









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「こういう雑誌をずっと待っていたような気がする」―男性(39)ホチキスの針を入れる箱製造業。

「今まで無かったのがおかしいくらいだわ」―女性(47)ボウリングのピン専門デザイナー。

「ワーオッ!」―女性(21)ワオキツネザル飼育員。

「人生観が変わりそうです」―男性(96)読者モデル。

反響続々!日本全国1億人が待っていた!


【月刊もみあげダイジェスト】!


空前のもみあげブームを受けて
ついに創刊!

……気になる創刊号の内容は?

◆コンテンツ紹介◆

◇【総・力・特・集】!!

――徹底検証『次元大介はどこからがモミアゲでどこからがアゴ髭なのか?』


◇【もみあげプレイバック】映画・ドラマの中の名モミアゲたち。

――ドラマ西遊記(マチャアキ版)の中で圧倒的な暑苦しさを誇った孫悟空のモミアゲをクローズアップ。

◇【もみあげ懐古録】あのモミアゲにもう一度逢いたい。

――歌手・尾崎紀世彦さん。レコードジャケットに見るモミアゲの変遷。

◇【もみあげメイクアップ講座】お洒落の決め手は実はモミアゲにあった!

――尖らせたモミアゲの先端をクルンと巻いてダリの髭のようにしてみる。

◇【徹底討論】モミアゲをもっとよく知るために。

――@モミアゲとカリアゲは両立するのか?Aスキンヘッドにモミアゲだけフサフサはアリか?

◇【予防と対策】われらモミアゲ防衛隊。

――もしも散髪中に居眠りをして、誤ってモミアゲを剃り落とされてしまったら?

◇【もみあげ系名作シネマ紹介】

――時代劇「もみあげ忠臣蔵」〜四十七人のモミアゲ〜。宿敵・吉良上野之介のモミアゲを永久脱毛するという悲願を成し遂げた四十七人の義士たちが揃ってモミアゲを剃り落とすラストシーンは感涙必至!(切腹ではないので命に別状はないが)。

◇【街角もみあげ図鑑】あなたのモミアゲ見せてくれませんか?

――巣鴨とげぬき地蔵で見つけたシルバー世代の素敵なモミアゲさん達。

◇【もみあげ経済論】これからの世界経済はモミアゲの存在抜きには語れない。

――再来年施行予定の「モミアゲ税」に待った!

◇【もみあげ最新トピックス】

――@もみあげ認証機能つきスマホがついに登場!Aもみあげ省発足へ、初代もみあげ担当大臣はまさかのアノ人!B喜・もみあげの植毛が保健適用に!Cトルコの超古代遺跡で発掘の毛髪化石に地球外モミアゲの可能性!Dブレイク寸前・謎の覆面芸人「もみあゲッツ」の正体はやはりアノ人物か?


◇【連載小説】「もみあげアウトレイジ」

――登場人物全員もみあげ!


◇【創刊号特別付録】今すぐ装着できる実物大レプリカもみあげ。

――質感抜群!J・B(ジェームズ・ブラウン)のアメリカン・ソウルもみあげ。


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