冬期オリュンポスSP(ショートプログラム)


話題:勘違い



さて、思わずぴょんぴょん跳び跳ねたくなるような名前の平昌(ピョンチャン)五輪も佳境を迎えておりますが、【平昌】と書くとどうしても平尾昌晃先生を思い出して思わずツイストを踊ってしまう、そんな方も多いのではないでしょうか。特に採点競技など、審査員の中に平尾先生の姿をついつい探してしまいますよね(ものまねグランプリ的な)。あと、思い出すのは魚のヒラマサですか。

して、サッカーのW杯しかり夏のオリンピックしかり、大きなイベントと同時に増殖し始めるのが「にわかファン」の存在でしょう。かくいう私もその一人。当然、私の周辺も「にわかウィンター競技ファン」で溢れ返っております。

そんな冬期五輪が始まって何日目だったでしょうか。夜、帰宅した私に母親が開口一番このような事を言いました。

「あの人、銀メダルだったわね!」

あの人。あの人とはいったいどの人の事でしょう。

「だから、ほら、あれよあれ、あの人。分かるでしょ、あの人だってば」

あの人。人。ホモ=サピエンスだと言う事以外はまるで分かりません。せめて性別だけでも教えて欲しいところです。

「男、で、前も何かメダル取ったの」

それは大きなヒント。それなら分かるかも知れない。で、競技名は?。

「あ、競技ね。えっと確か、競技の名前は…ノ…ノ…」

ノ?

「ノ…ノ…ノル?、そう、ノル!」

ノル!そこまで来ればあと一歩です。

「ノル…ノル…ノル……」

あ、なるほど。分かりました。スキーのジャンプとクロスカントリーを併せた複合競技の……

「……ノルマンディー上陸!」

いや、それ、違うヾ(´・ω・`)

その瞬間、審査員席の平尾昌晃先生が10点満点の札を挙げる幻影が確かに見えました。

正解は勿論、ノルディック複合。いやはや、“にわかファン”にも程があります。

タイトルにあるSP(ショートプログラム)のショートは、何処かしらの回線がショートしている、の意味。

…もっとも、最近、尾木ママとばんばひろふみさんの見分けがつかなくなって来ている私も、人の事は言えませんが。

「人の事言えないよねー」

「そだねー」

「そだねー」

カー娘チームの同意を得たところで本日はこの辺で。

(以上、残念ながら実話であります)


〜おしまひ〜。

ドリルの天国。


話題:のんびり


「あああ、もう少し早く来て欲しかったですね…」

デジャヴだろうか。いつか何処かでまったく同じ台詞を聞いた事があるような気がする。

近未来を彷彿とさせる白を基調とした室内。よく解らない機械や器具が冷徹な光を放っている。明度の高いショッカーのアジト。そんな印象か。そして私は、診察台という名の手術台で改造人間にされようとしている。

【ドラキュラ・デンタルクリニック】

デンタルクリニックの日本語訳は[ドリル天国]で良いだろう。

「定期検診の通知、行きませんでしたか?」

「ああ、どうだったかなあ……言われてみれば届いていたような気もしますけど……(いや、届いたのはハッキリ覚えているけれども、痛くもないのに歯医者など何処の誰が行くと言うのですか)」

「……まあ、そうですよね。出来れば来たくないですもんね」

心の声が聴こえたのだろうか。

「スミマセン。通知、来ました」

「いえいえ。では、診察台倒しますね」

有無を言わさず天井を見上げる形になる。「東京には空がない」と智恵子は言った、と詩人の高村光太郎は言った、と国語の教師は言った。が、私はこう言いたい。「歯医者の天井にこそ空がない」と。そこには無機質な灰白色の壁があるだけだ。

もっとも、歯医者の天井に空があったところであまり意味はないだろう。それでも、幾らかはリラックス出来るだろうか。それとも逆に落ち着かなくなるだろうか。

リラックス。フランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッド。考えてみれば今まで通ったどの歯医者も、それなりにリラックス出来る空間を院内に演出しようとしていた気がする。例えば綺麗な絵を壁にかけたり、可愛い熱帯魚の游ぐアクアリウムが置いてあったり。あと、かなりの確率でクラシック音楽や映画音楽、イージーリスリングが掛けられている。そんな印象がある。

リラックスした空間と阿鼻叫喚の治療風景。その対比で上手くバランスをとっているのだろう。これが、もし、ムンクやギーガーのおどろおどろしい絵を掛けたり、お経を流したり、お化け屋敷みたいな内装にしてしまうと其処には悲しみと痛みしかなくなってしまう。

否。雰囲気がダークに統一され、逆にアトラクションのような感じで人気が出るかも知れない。

「えーと……良いニュースと悪いニュースがありますけど、どちらから聞きたいですか?」

妄想が断ち切られる。

「悪いニュースからお願いします」

「判りました。この奥歯、神経がピョコンと飛び出しちゃってます。これ、神経全部抜かないとダメですね。で、中で神経がだいぶ細くなってるんで、探して抜くのちょっと手間取るかも知れません。と言うか、よくこの状態で平気で暮らせましたね」

「え、そこまで酷い感じですか?」

「です。ではちょっと麻酔かけて神経抜きますね」

「お願いします。あ、良いニュースの方は?」

「恐らく明日には今の10倍ぐらい痛くなって悶絶していたと思うので、今日来られたのは本当に幸運でした」

思わず背筋(せすじ。はいきんと読まないように)がゾッとする。危なかった。カレーのLEEの10倍はむしろ歓迎だけれども、歯痛の10倍は勘弁して欲しい。

それにしても、いったい何故、この世に歯痛などというものが存在するのだろう?

言う迄もなくそれは、歯が存在するから。と言う事は、つまり、歯さえ無ければ歯痛に苦しむ事も無くなる訳だ。

よし、今度生まれ変わる時は歯のない生物にしよう。アメーバとかミドリムシとか、或いは、歯のないタイプの宇宙人。植物という手もある。そう言えば、普通の人間でも“ある職業”に就くと歯という歯が全て抜け落ちてしまうらしい。それなら歯痛に苦しむ必要も無くなる。それが良いかも知れない。因みに、その職業とは……

落語家、である。

そのココロは、噺家(はなしか)=歯無しか、だから。

……とオチがついたところで、さあさあ、皆さんお待ちかね、愉快で楽しいドリルの時間、ドリリングタイムの始まりだ。


〜おしまひ〜

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