凱旋門をリンボーダンスでくぐる巨人。


話題:競馬



さあ、今年もいよいよ、全世界の競馬ファン並びに帽子ファンが待ちにまった【凱旋門賞】‐芝2400m 仏シャンティイ競馬場‐の季節がやって参りました。

もはや日本のホースマン(馬面の人も含む)の永年の悲願と言っても過言ではない【凱旋門賞】。1969年にスピードシンボリが日本調教馬として初出走(結果は着順がつかない“着外”の大敗)してから48年、今年出走する日本馬は二頭、果たして日本馬の初優勝はなるのでしょうか。

その二頭と言うのがこちら、

☆サトノダイヤモンド(牡4歳)
★サトノノブレス(牡7歳)

とは言うものの、実質的にはサトノダイヤモンド一頭。サトノノブレスの方は帯同馬、要は付き添いです。馬というのは(まあ、性格にもよりますけど)けっこう環境の変化に敏感な生き物なので、初めて訪れる異国の地で寂しい思いをしないよう仲間(顔見知りの馬)を連れて行くという寸法です。現地での調教も当然必要で、その際の調教相手にもなりますし(現地で相手馬―ボクシングでいう所のスパーリングパートナーみたいなもの―を探す手間が省ける)。それで、折角行くんだからノブレス君の方も出させてよ、と頼んだら、フランスのタモリさんみたいな人が「いいともーー!」と言ってくれたので、めでたく二頭出られる事になったと(一部フィクションあり)。

ちなみに、この二頭は冠名[サトノ]の一致で判るように同じ馬主さんの馬で所属も同じ【池江厩舎】なので、今話もすぐまとまる訳です。

さて、今年の日本代表とも言えるサトノダイヤモンドは昨年の菊花賞と有馬記念を制したかなり強い馬で、北島三郎さんの馬キタサンブラックと並んで現役馬の中では最強、両横綱の片方(中長距離部門)と考えて良いでしょう。当然、期待は膨らむところですが……正直、今年は、と言うか今年もかなり厳しそう。

まず、相手にかなり強い馬が揃いました。恐らく一番人気になるであろうイギリスの三歳牝馬エネイブルはキングジョージ、ヨークシャーオークス含み現在G14連勝中ですし、更にはアイルランドのオブライエン厩舎が気合い入りまくりで送り込んできた、ハイランドリール、オーダーオブセントジョージ、カプリ、ウィンターの4頭はどれが勝っても不思議ではない強豪馬揃い。他にも、地の利がある地元フランス馬や実績十分のドイツ馬、イギリス馬が出走します。

そして、もう一つ不安材料が。凱旋門賞のステップレースであるフォア賞(G2=出走6頭)に出走したサトノダイヤモンドとサトノノブレスがそれぞれ4着、6着(ビリ)に負けている事です。ただこれは、雨でぬかるんだ馬場が敗因である可能性が高いので、さほどこの結果は悲観しなくて良いかも知れません。

さてさて、若干、ネガティブな方向で話が進んで来ましたが、何が起こるか分からないのが競馬、サトノ2頭の健闘を祈りたいと思います。

ちなみに、個人的には、サトノはサトノでも付き添いの方のサトノノブレスが優勝したら面白いなあ、と。ノブレスが1着でゴールインした瞬間、シャンティイ競馬場に詰めかけた世界の競馬ファン全員が吉本新喜劇のように同時にヅッコケるに違いありません。

出走は日本時間の10月1日、23時5分頃(予定)。


〜おしまひ〜。




あはれ、球場の秋もいぬめり。


話題:おやじギャグとか言ってみたら?



その瞬間、球場の大歓声は悲鳴へと変わった。

0対0。息詰まる投手戦の続く7回裏、ツーアウト満塁。長崎チャンポンズの主砲の放ったセンターバックスクリーンへの大飛球を中堅手(センター)を守っていた私が、ジャンプ一番、グラブに収めるも、そのままフェンスに激突したのだ。

グラウンドに倒れ込む私の元に右翼手(ライト)と左翼手(レフト)、少し遅れて二塁の塁審が駆けつける。

「おい、大丈夫か?」「ああ」。激突の衝撃は相当なものだったが、意識ははっきりしている。頭は打っていないようだ。これなら大丈夫。私は立ち上がろうとした。が、瞬間、足首に激痛が走り、再びグラウンドに崩れ落ちてしまった。

ジャンプしてフェンスに激突した後、着地する際に足首をひねったに違いない。この痛みからすると最低でも捻挫以上、もしかしたら骨折やアキレス腱の断裂まであるかも知れない。

ベンチまで歩いて帰るのは恐らく無理だ。「どうだ、歩けそうか?」「いや、ちょっと無理っぽい」。私は自分の足首を指差した。「判った」。状態を理解した外野手の二人がベンチに向かって大きく両腕でバツ印を作ってみせた。これは、ダメ(歩いて帰るのは無理)なので救助を要請するという意味のサインだ。

それを受けてベンチから今日が初仕事となる新米トレーナーと数人が飛び出して来る。ユニフォームを着ていないところを見ると、球団あるいは球場付きの救護班だろう。

大観衆の衆目にさらされながらベンチまで担がれるのは非常にカッコ悪いが、無理なものは逆立ちしても無理、背に腹は変えられない。ドームの照明を受けてエメラルド色に輝く人工芝に横たわったまま上体だけを起こした格好で彼らを待った。

程なく到着したトレーナーはすぐさま私の足首の状態を診察……すると思いきや何故か懐からスマホを取り出し、画面を私に向けて見せた。ドームの天井カメラがスマホの画面を捉え、バックスクリーンのオーロラビジョンに大々的に映し出す。

【奥山に もみぢ踏みわけ 啼く鹿の 声きく時ぞ 秋はかなしき】

謎すぎる事態にシーンと静まりかえる2億人(主催者発表の数字)の大観衆。もちろん、私や駆けつけた外野手二人、二塁塁審も訳が判らずポカーンとしていた。

猿丸太夫の歌をスマホで見せながら「大丈夫ですか?」と訊いてくる新米トレーナー。むしろ逆に「貴方こそ大丈夫ですか?」と私は訊きたかった。この状況で百人一首はどう考えてもおかしい。世界感で言うなら野球というよりは蹴鞠だろう。

トレーナーの太い指がスマホの画面をスライドさせると次の一首が現れた。

【契りおきし させもが露を 命みて あはれ今年の 秋もいぬめり】

その様子が再びオーロラビジョンの大スクリーンに映し出される。「おおーーっ!」訳が判らないままどよめく大観衆。

その時、突如として私に来雷が走った。閃き、謎に対する一つ解答。もしかして、もしかすると……

「もしかして、これ、タン……」

「はい。監督さんからタンカ用意して持って行けと言われたので、こうして短歌持って来ましたけど、これで良かったですか?」

「ああ、タンカってそのタンカじゃなくて……」

「あっ、百人一首じゃ古すぎましたか?すみません、僕、今日が初仕事で、もう緊張してわけ判らなくなっちゃって。やっぱり、こういう古いのじゃなくて現代短歌の方が良かったですよね、俵万智さんとか穂村弘くんとか」

いや、そういう問題ではないのだが……。

「橘高さん、判定お願いします」。オーロラビジョンに二塁塁審・橘高さんの姿が大きく映し出される。橘高さんは新米トレーナーに向かって試合では見せないような派手なアクションで言い放った。

「アウトーーーーーっ!!」



〜【定本・ダジャレ三球三振】より抜粋〜。

おしまひ。


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