話題:突発的文章・物語・詩


温井徹夫くんは元より出不精であるが、冬はその性質がより顕著に現れる。乃ち、安アパートの彼の部屋、四畳半一間の中央に鎮座まします炬燵(こたつ)から出ようとしないのである。その癖、やたらとカロリーの高い物を欲するのだから始末に悪い。彼に言わせれば「生命体としてエネルギーを蓄えようとする自然の摂理に則っている」らしいが、このような“食っちゃ寝”生活は決して褒められたものではないだろう。

おまけに彼の場合は怠惰のみならず、だらしもない。結果、どうなるかと言うと、炬燵で寝そべったまま物を食べ散らかすので畳の上に食べ物のカスがこぼれまくるのである。食べ物だけではない。ビールやコーラなどの飲み物も平気でぶちまける。勿論、掃除など気の利いた事は一切しない。彼はそれを「無為自然」と呼んだが、これには老子も激おこぷんぷん丸だろう。

兎に角そんな具合に栄養価の高い物を食べるだけ食べ、まったく体を動かさないといった生活を続けたせいで彼は目に見えて肥っていった。不健康な生活。あらゆる面で良くない。

が、そんな中にあって一つだけ良い点がある。彼の部屋はもともと四畳半であるのだが、現在は六畳となっている。食べ物や飲み物を畳の上にこぼし続けたせいで、部屋も彼同様、肥ってしまったのである。彼はそのメタボ部屋を今冬中に二十畳まで増築しようと今まで以上に頑張って、ゴロゴロしているそうだ…。


【終】