話題:不思議な事


白馬に跨がった王子様にキスでもされたのか、いきなり目が覚めた。

枕元の置き時計は不敵な顔で午前2時を指している。深夜も深夜、ビーフな三ツ刻だ。本格的に起き出すにはまだ早い。ならば話は簡単、再び眠りに着くまでだ。ではでは、おやすみなさい…。

はい…おはようございます。ダメだ。完全に目が冴えてしまっている。仕方ない。軽くチョコクロワッサンでも食べてから寝るか。いやしかし、こんな時間に食べるのもどうだろう?やはり、ここは素直に目を瞑るべきでは無かろうか。でも、チョコクロワッサンぐらいなら良いか。よし、食べよう。いや、待て待て、それが罠なのだ。基本的に私は眠りたい。ここは大人しく寝るべきだろう。でも、敢えて罠に引っ掛ってみるという手もある。その先に何か素敵な展開が待ち受けているかも知れない。いやいや、私が待っているのは普通に眠るという展開だ。眠る…ネムル…ナムルに響きがちょっと似てる。

ああ、余計な事を考えたせいで、ますます眠れなくなってしまった。さて、どうする私?

その時、不意に「月の夜舟」という意味不明な言葉が頭に浮かんだ。何だろう?不思議に思いながら、ベッドの上で半身を起こし、すぐ横の窓のカーテンを開くと綺麗な月が夜空に浮かんでいるのが見えた。が、それは只の月ではなかった。と言うのも、月を中心に巨大な光のクロス(十字架)が浮かび上がっていたのだ。

雲ひとつない夜空に輝く月光の十字架。
トパーズの月が光の十字架に磔(はりつけ)にされているように見える。

何だ、この不可解な現象は。私は写真に撮ろうとスマートフォンのレンズを月に向けシャッターを切った。が…映っていたのは遠くで輝く小さな月の姿のみ。光の十字架は全く映っていない。何度か試したが何れも失敗であった。そして、光の十字架は突然消滅した。時間にして数分間の出来事だった。

今のは何だったのだろう。不意に頭に浮かんだ「月の夜舟」という言葉と何か関係があるのだろうか。チョコクロワッサンを食べたいという気持ちは何時の間にか消え失せていた。

これが、昨日の深夜、私に起きた出来事の全てです(実話ナリ)。


〜おしまい〜。