話題:妄想話


金欠病というのは極めて厄介な病です。普通の病気であれば、まずは安静を保ち、薬を飲んだり必要な栄養素を補給し続ければ改善に向かう事が多い。ところが、金欠病の場合はそうもいきません。安静などもっての他。何もせずに家でだらだら寝て過ごせば間違いなく病状は進行します。入院も論外。入院費用がかさんで取り返しのつかない事になる恐れがあります。湯治で草津の湯などに出掛けるのも駄目です。いえ、それ以前にそもそも、この病気の場合は病院に行ってはいけません。むしろ、休日を返上して会社に行くべきです。基本、金欠病からの回復には馬車馬のように働くしかありません。ごく稀に競馬場や競輪場、競艇場で回復する場合もありますが、それはあくまでも一時的なもの。金欠病は通常の病気とは正反対の性質を備えた極めて珍しい事例であると言えるでしょう。

しかしながら、必ずしも悲観的にばかり捉える必要もありません。考えようによっては「お財布のダイエットに成功した」とポジティブに捉える事も可能だからです。肉体のダイエットの困難さに対し、お財布のダイエットはとても簡単。好きな物を好きなだけ食べて大丈夫。しかも、お財布ダイエットの場合、肉体とは違い、“非常にリバウンドし難い”というダイエッターにとってはとても悲しい…いえ、喜ばしい特性があります。一度薄くなった財布はそう簡単には分厚くならないのです。


〜アンタガタ猪木・著『病気ですかー!』(延髄書房)。特別付録DVD《カッチョいいガウンの脱ぎかた》デジタルリマスター版146分収録。定価‐身ぐるみ全部。より抜粋〜。