話題:シュール



世界がまだ巨大な象の眠りの中でアルファベットの順番を決めかねていた頃。

空間座標に左という概念はなく、すべての物がすべての物の右側にありました。

時間は未来と過去を取り結ぶパステル色の予感として、ある場所では砂漠の砂の形で、またある場所ではアンモナイトの渦巻きの形で、またまたある場所ではオルゴォルの歯車の形で存在しているだけでした。

人は肋骨で物事を考えていたので頭の中は常に空っぽ。そこには幸せの青空が広がっていたのです。

三角形の内角の和は日によってまちまちで、水平線と地平線は《愛の名のもと》と呼ばれる場所で静かに溶け合っていました。

イカの足の本数は10で、タコは8。その足りない2という数字が人間の足の本数となりました。

ある朝の夜。巨大な象は不思議な夢を見て大きなくしゃみをしました。

その弾みで世界は象の眠りの中から飛び出し、今あるような姿になったのです。

私たちが、この世界に秘められた暗号を解き明かす為には、あの日、巨大な象が見た不思議な夢の正体を知る必要があるのです…。

娘「パパ。人間は死ぬとお星さまになるって本当?」

パパ「本当だよ。人は死ぬとお星さまになるんだ」

娘「じゃあ、そのうち宇宙はお星さまでいっぱいになって空いてる場所がなくなっちゃうね」

パパ「それは大丈夫。お星さまも人間と同じで死んじゃうからね」

娘「そしたら、お星さまは死ぬとどうなるの?」

パパ「お星さまが死ぬと、今度は逆に人間になるんだ」

娘「…ふぅーん。じゃあ、地球も昔は人間だったの?」

パパ「うん、そうだね。地球は僕たちが生まれるよりずっと前には人間だったんだ」

娘「地球さん…どんな人だったのかな」

パパ「多分ね…象の飼育係だったんじゃないかな…ってパパは思ってるんだ。あ、これは内緒の話だよ」

娘「うん、内緒にするね」



【終】。