話題:妄想を語ろう



その村の異常なところは、“どの村人も常に同じ方向に顔を向け続けている”という点だ。これは、村からの脱出に成功した人間全てが共通して語っている事なので、恐らくは真実だと思われる。

“一定の方向に顔を向け続けている”というのは、要するに“首を全く動かさずにいる”という事だ。ムチウチや首の寝違えなどで首が回らない状態を想像して貰えば良いだろう。

ある者は右、ある者は左に、また別の者は上、或いは下を、という具合に方向こそ各人バラバラながらも、右を向き続けている者は朝から晩までずっと右を、左を向き続けている者は同じくずっと左を、と、その方向が変わる事はないらしい。

服装や話す言葉など、それ以外の部分に関しては何らおかしな点はないので、村に迷い込んだ人々も最初は村人たちの異様さに全く気づかないと言う。ところが、時間が経つにつれ、村人たちが出会った時からずっと同じ方向に顔を向けたままでいる事に気づき、そこでようやく「この村はどこかヘンだぞ」となるらしい。

我々調査班は、村に関する資料が何処かに残されていないかを独自に調べ始める事にした。そして、問題の隠れ村が存在がすると推測される地域内にある某町の郷土史料館が所蔵する、年代、出所ともに不明の古い文献に、その村に関する記述が僅かながら残されているという事実にたどり着いたのである。

残念ながら古書物の写真撮影や複写は不可という事なので、こうして言葉で説明するしかないのだが、そこに記されていた事柄は我々の理解の範疇を大きく超えるものであった。

謎の村に関する記述部分は僅か見開きの二頁に過ぎない。それでも、十分過ぎる程の異相を呈していた。

まず、見開きの頁の片方には、発光する巨大な円盤形物体の挿絵が載せられており、更にはその傍に銀色の頭まですっぽり被るタイプの全身タイツに身を包んだ妙な人型生物の姿が数体描かれていた。

これだけでも十分に不可思議であるのだが、我々の注意を惹いたのは、その図解の下にあるもう一枚の挿絵であった…。


〜中編終了〜。


★★★


はい、出ました、まさかの“中編”(笑)!

いえ、長さ的には一つに収めても構わない程度なのですが、何と言いますか、ほら、その、アレですから、やっぱりネ…という事で、続きはまた明日♪ヽ(´▽`)/