話題:おいおい、まじかよ…


ある折、心の中の兼好法師が「少しは己の健康に奉仕をしてみては如何かな?…ケンコウホウシだけに」なぞと申して来ましたので、徒然なるままに自身の健康について鑑みましたところ、どうにも最近、不健康の坂道を下っているような気がしてならなくなったのです。

取り敢えず、健康の為に某か行おうと思い、先ずはその手始めに、なるたけ自家用車やエスカレーターなどの近大文明による自動移動機具は利用せずに自身の足で歩く事にしたのです。

“歩かない人は老いる”と云うのは日頃からよく耳にする箴言でありますし。

しかし、ただ闇雲に歩くだけでは、何と申しましょうか、張り合いが無いので御座います。そこで私は一計を案じ、“万歩計”を買い求める事に致しました。

踏んだ歩の数が目に見える数字として表れますれば、手応えのようなものを感じられますし、ある種の達成感を得られるであろうと考えたので御座います。

“思い立ったが吉日”とばかりに家の近くの老舗の雑貨屋に足を運んでみますと、幸運な事に心の琴線に触れるような素敵な万歩計が目に留まりましたので、私は考へる迄もなく買い求め、店を出るや否や、すぐさま、買ったばかりの万歩計を、桃太郎の吉備団子の如く自身の腰につけたのでした。

ところが、いざ、その万歩計を腰につけた途端、

何とも面妖な事に、両の足が意に反して勝手に動き出し、あれよあれよと云う間に、私は天下の往来で踊り始めていたのです。

はてさて?これはいったい?

それは私が未だかつて踊った事のない奇妙奇天烈な踊りでした。止めようにも体はまるで云う事を聞かず、そればかりか、踊りの高揚感は更に増すばかり…。

原因は恐らくこの万歩計に違いありませぬ。此のままでは身が持たぬと感じた私は、死に物ぐるいで腰から万歩計を外しました。

すると案の上、足は勝手に踊るの止め、私は安堵の胸を撫で下ろしたのでした。

これはいったいどういう事か、と問題の万歩計を改めてよく見ましたところ、私は自分が大きな勘違いを犯していた事に後れ馳せながらようやく気づいたのです。

私が万歩計だと思っていた物は、実は、現在南米で大人気のエクササイズー【マンボ計】だったので御座います…。

ジャカジャカジャン
ジャカジャカジャン

…ウッ♪!!


〜おしまひ〜。