話題:SS


「そんな事よりも…どうして僕が警察の捜査に協力しなければならないのか…そこが理解出来ない」

氷川教授の放つ眼鏡越しの鋭い視線が女刑事を捕らえる。

「何か不可解な事件が起きて警察の手に余ると言うのなら、ガリレオこと湯川君に頼めばいい。彼はこれまでに何度も事件を解決に導いたそうじゃないか」

氷川のもっともな言い分に女刑事がバツの悪そうな顔で答える。

「それがその…実は、その湯川先生に断られたんです」

「……」

氷川は自分で“湯川君に頼めばいい”と言っておきながら、明らかに落胆の表情を見せていた。

「まあ、僕は先攻よりも後攻の方を好む人間だから、そこは全く気にならないが…湯川君に断られたので仕方なく僕のところに来たと言うのなら、少し面白く無いかも知れない」

「あ、いえ、仕方なくでは無いんです。私が此処に来たのは、実はその湯川教授の紹介があったからなんです」

女刑事が慌てて取り繕うように言うと、氷川の片眉がピクリと上がった。

「ほほう…湯川君が僕の事を紹介したのか。彼とは直接面識は無いのだが…そうか、彼が僕をね…」

「あ、厳密にはちょっと違うんですけど…」

「…正確に頼む」

「えーとですね…正確に言うと、湯川先生が紹介して下さったのはA さんという方なんですけど、そのA さんにも断られちゃいまして、でも、代わりにA さんはBさんを紹介して下さり、そのB さんがCさんを紹介、そのC さんは Dさんを紹介し、D さんは Eさんを、更にE さんは Fさんを…と言った具合に紹介が続いて、氷川教授のところにたどり着いた…とまあ、そういう経緯(いきさつ)なんです」

「それは…湯川君が直接僕を紹介したのではないと…そういう事になるのかな?」

「ええ、まあ、正確に言えばそうなります」

「そうか。で、そのFさんに当たるのが僕なのかな?」

「それがその…Fさんが紹介して下さったのはGさんで」

「そのGさんが僕だと」

「いえ、Gさんは文字通りお爺さんでして…」

「待った。結局、僕はそのアルファベット人脈の何番目に当たるんだ?」

女刑事は、内ポケットから警察手帳を取り出しページを捲る。

「…2周目のRですね」

教授室に不穏な空気が流れ始める。

「…2周目のR…という事はつまり、僕の前に湯川君を含め34人に協力を依頼してその全員に断られたと?」

「はい!ですから、氷川教授には何としてでも協力して頂きたいんです!紹介の無限連鎖を断ち切る為にも、お願いします!」

「待て。警察は事件を解決したいのか、それとも、紹介の連鎖を食い止めたいのか、どちらなんだ?」

「両方です!ただ、個人的には紹介地獄から抜け出したいという気持ちの方が強いですけど…あ、今のは内緒にして下さい」

氷川が腕を組んで考え込む。しかし、これはあくまで考えているフリをしているだけで、彼が本気で考え込む時のポーズとは違っていた。が、無論、女刑事はそれを知らない。

氷川が腕を組んだまま言う。

「と言う事はだ…もし断った場合、僕は代わりに誰かを紹介しなくてはならないのかな?」

「…そういう事になります」

「判った。では、僕の助手をしている影山君を紹介しよう。彼に捜査協力を依頼するといい」

「でも…その影山さんが2周目のQさんなんですけど」

つまり、氷川教授を紹介したのは助手の影山という事になる。

「それは困った…もう僕には紹介出来る人がいない」

「でしたら是非!」

「うーん…」

「取り敢えず話だけでも。どうです?」

「…盗まれたのは確か“えもやんの涙”だったか」

「おてもやんの涙です」

「そうか。…まだ協力すると決めた訳ではないが、話ぐらいは聞いてもいいかな」

さて、これにてようやく話を本題の事件へと移す事が出来るようになった。

果たして、天才ロダンこと氷川教授は、警察が投げ出した不可解な事件を解決する事が出来るのだろうか?はたまた、解決出来なかった場合、他の誰かを紹介する事が出来るのだろうか?

乞う御期待。


★★★★


なんか、執筆状況的にマズい雰囲気になって来たぞ…(((^_^;)

ダラダラした展開を引き締めなければ(゜ロ゜)