話題:詩
貴方が私の元を去ってから、もうどれくらいになるのでしょう。
如何にも無口な貴方らしく、サヨナラの一言さえ告げずに姿を消して…現れる時も風のようなら、去り行く時も風のよう。
そんな気まぐれ風来坊な貴方を薄っぺらな奴だなんて陰でコソコソ云う人もいたけれど、そんな陰口を耳にしても、貴方は表情一つ変える事なく、涼しい顔でいつも私のそばに居てくれた。
貴方は決して薄っぺらな奴なんかじゃなく…いえ、確かにそういう薄っぺらいところもあるにはあったけれど…知らず知らず、その薄っぺらさに助けられていた部分もあったに違いない事…今ならば判るのです。
そんな貴方がいつの間にか姿を消していた…。
いったい貴方に何があったというのでしょう?
知り合いという知り合いに貴方の消息を訊ねて廻ったけれど、帰ってくる答えは判を押したようにいつも同じ。
「さあ、そう云えば最近見かけないけど…何処行ったんだろうね」
貴方と初めて出逢ったカフェバー。
週末のデートで何度も訪れた東京競馬場。
貴方を探して私は日本中を旅しました。
金閣寺…銀閣寺…銅閣寺。
栃木から群馬…そしてまた栃木…そこから群馬を経て再び栃木…さらに群馬へ。
しかし、どれほど日本を廻っても其処に貴方の姿はなかったのです。
貴方のいない毎日は、寂しくないと云えば嘘になるけれど、寂しいと云えばそれもまた嘘。
貴方の事を想うのは、せいぜい3ヶ月に20秒くらいだけれど…
それでも私は、いつかまた貴方に巡り逢える日が訪れる事を信じ、待ち続けようと思います。
そして、もし、その時が来たならば、私は何の面白味もない当たり前の言葉で貴方を迎えたいと思うのです。
「お帰りなさい…弐千円札」。
〜終わり〜。