二つの電波塔の秘密。


話題:妄想を語ろう

割りかし以前から書こうと思いつつも機を逸して書きそびれていた事があります。

東京スカイツリーの話です。

それでは話に入る前に、まずは東京スカイツリー本体の姿を、そう、出来るだけリアルに思い浮かべてみて下さい。

そして、思い浮かべたならば、すぐに忘れて下さい。

タワー自体は関係ありません。それはどうでも良いのです。

問題は場所にあります。

そこで今度は、東京スカイツリーが建っている場所、その風景をやはり出来るだけリアルに思い浮かべてみて下さい。

そして忘れて下さい。

建っている場所も実はどうでも良いのです。

重要なのは、東京スカイツリーが建っていない場所なのです。

但し、東京スカイツリーが建っていなければ何処でも良いという訳ではなく、或る特定の条件下に在る事が必要です。

その条件とは何か。

そこで浮上するのが、東京タワー。

ご存知のように、東京スカイツリーは東京タワーに代わる電波塔として建設されました。二つの塔は密接な関係で結ばれている訳です。

そこで、この密接な関係で結ばれている二つの電波塔を、実際に結んでみてはどうだろうか、私はそう考えたのでした。もちろん、結ぶと言っても靴ひものように二つの塔を結ぶのではありません。そんな事をしても怒られるだけです。

私の言う“結ぶ”とは「二つの電波塔が建っている場所を地図上で
結ぶ」という事です。

その意味は、二つの塔を結んだ直線の真ん中は何処なのか、そして其処には何が在るのか、それを探る事。東京スカイツリーがあの場所に建てられたのには何かしら理由がある筈です。

「この辺でよくね?」

「お前に任すわ」

こんな会話で建設地が決められたとは到底思えません。

東京スカイツリーの建設地決定には東京タワーが深く関わっているに違いない、それは勘と言えば確かに勘ですが、ヤマ勘やミツカンとは少し異なります。言うなれば、キラー・カーン、いや、KAN に近いでしょうか。大丈夫。心配ありません。必ず最後に愛は勝つのですから。

東京スカイツリーと東京タワーを結んだ直線の真ん中には果たして何が在るのか。私は地図を広げました。

ところが、東京スカイツリーがなかなか見つけ出せない。やはり世界地図では厳しいようです。

…と、お約束のボケを軽く披露したところで今度はちょっと真面目に。

私は別の地図を広げました。

ところが、これまたやはり東京スカイツリーが記載されていない。いや、それどころか東京タワーも載っていない。地図が古いのだろうか。

仕方なく、私は地図を食パンの上にハムと一緒に載せ、軽くトーストして食べました。

そうです。それは地図ではなくチーズだったのでした。

はい、今度は先程よりもう少し真面目にボケてみました。

さて、道草文芸はこれぐらいにして核心部へと突入しましょう。

東京スカイツリーと東京タワーを直線で結ぶとその中央に位置するのは日本経済の中心地、兜町でした。そして、二つの電波塔のちょうど真ん中に存在するのは…

東京証券取引所。

これは果たして偶然なのでしょうか。私にはそうは思えません。

つまり、東京スカイツリーは東京証券取引所を中心とするような東京タワーとの位置関係を計算して建てられた、そう思うのです。

電波は電気で、言うなれば“気”ですから、そういった気の流れ、いわゆる“気脈”を強化して東京証券取引所、つまりは株価、ひいては日本経済そのものの活性化を狙って建設された塔、それこそが東京スカイツリーの真の正体。

日本は平安時代の古きより都市の設計に風水の思想を用いる事が多く、江戸も天海僧正により風水に乗っ取って設計された都市です。東京スカイツリーの建設に風水が関わっていても不思議ではない気がします。もちろん、そのような事は決して公にはされないでしょうが。

思うに、

土御門家(つちみかどけ)など平安時代の陰陽師の家系が現代にもまだ存在しているのではないか。そして、国家的な都市事業には隠密裏に携わってくる。言うなれば、“裏建設省”のような役割。いや、建設に限らず政治全般に関わっているかも知れません。

祀り事(まつりごと)というのは、なかなか一般常識では計り知れない部分が存在しますから。

という事で、これまで語ってきた事は単なる私個人の思いつきに過ぎません。そこで、この事を実証すべく、これから家の両端に東京スカイツリーと東京タワーを建てたいと思います。そして、二つの塔を結んだ真ん中に、中に財布を入れたゴキブリホイホイ(仮説の証券取引所)を置きます。

これで私の経済が活性化すれば、自説の証明にも繋がると思うのですが…果たしてどうなるのでしょうか。

《お〜し〜ま〜ひ〜》


狂言師の野村萬斎さん風にどうぞ。

リンガルワインバー「ヴォヤージ・ド・お洒落さん」へようこそ。


話題:突発的文章・物語・詩

そのワインバー《ヴォヤージ・ド・お洒落さん》は、お洒落だが一風変わっているという評判で、かねてより一度行ってみたいとは思っていたが、高級な店やお洒落な店などついぞ入った記憶のない私は、予約が取りずらいというもっぱらの噂も手伝い、今日の今日まで二の足を踏んでいた。

それが先週、洒落者で知られる知人が「予約が取れたので一緒に行かないか?」と誘って来たので、それならば、と同伴を決めたのだった。

その知人は就寝時でさえ一輪の薔薇を口にくわえているような洒落人(シャレード)なので、一緒に行く私も何かそれなりのお洒落なスタイルを考えなければならない。

というような案配で、お洒落な知人の更に上をいくべく、一輪の薔薇を凌駕する“薔薇の花束”を口にくわえて待ち合わせ場所で知人の到着を待ったのだった。ところが、そこへ知人から電話が入り「お洒落なヤボ用が入ったので行かれなくなった。申し訳ないがアローンな感じで宜しく」とまさかのキャンセルを告げてきた。土壇場のキャンセル、俗に言うドタンセルだ。当然の事ながら私は抗議をした。

私「ふぉふぁきゃんかひょー!、ふぉふぇひゃひゃひふぇー!」

知人「え?なに?何て言ってるのか全然判らないんだけど」

私「…すまん、薔薇の花束をくわえながら喋ってた」

知人「薔薇の花束?何で?」

私「お洒落にしようと思って…」

知人「君々、お洒落というのは数量では無いよ」

なるほど。そうなのか。
知人はいつもこんなふうに、人生における大切な事をさりげなく私に教授してくれる。

お洒落メモ(82)【お洒落は数量では無い】。

因みに、お洒落メモ(81)は【腰に手をあてて牛乳を飲む際は、首に手拭いを引っ掛ける事で上半身と下半身それぞれにお洒落ポイントを設置でき、見た目のバランスが格段に向上する】だ。

兎にも角にも、私は一人でお洒落なワインバーに行かざるを得なくなった訳だ。キャンセルするという手もあったが、この機会を逃すともう二度と足を踏み入れるチャンスは無いかも知れない、そう考えると諦めるのは如何にも勿体ないような気がした。

店には知人に電話して貰い、二名の予約を一名に変更。

そして、不要となった薔薇の花束を見ず知らずの通行人(メガネ女子)に「君は薔薇より美しい…By 布施博」と言いながら手渡した後、緊張しながら店のドアを開けたのだった。それが布施博ではなく布施明だという事に気づいたのは、それから十年後の話だが、今はその話はやめておこう。

《続きは追記よりどうぞ♪》


more...

月にまつわる26の断篇詩 。

話題:詩


【A】誰もいない深夜の桟橋にそっと置かれたカクテルグラスの中に、いとも簡単に囚われてしまったお馬鹿さんな月。

【B】蒼冷めた夜の公園では影だけになった子供たちが音も立てずに遊んでいました。

【C】満月に照らされたビーチでムーンオイルを背中に塗って綺麗に月焼けしたのは色白のカップルです。

【D】深夜を走る貨物列車のコンテナの上に月が腰かけて休んでいるのを見た事がある。

【E】埠頭の4番倉庫には返品された大量の月の複製品(コピー)が眠っているらしい。

【F】月の光が毛細血管の隅々にまで行き渡ってしまうと月光病になる恐れがあります。ヤブ医者が語った唯一の本当の話。

【G】月が裏側を見せようとしないのは、単に散らかっているのを人に見られたくないからです。

【H】先週の土曜日の月には午後11時から11時45分までのアリバイがない。

【I 】手ぶらで改札を抜けようとして自動改札機に挟まれたお月さまが、駆けつけた駅員に両脇を抱えられて駅長室へ連れて行かれました。

【j 】名字が月野というだけで無理やり天文学部に入部させられた友達がいます。

【K】子供の頃になくした理科の教科書が、一昨日、月面のクレーター内で見つかりました。

【L】おっ母つぁん!あれが東京の月だよ!

【M】町の電気屋で豆電球に混じって小さなお月さまが400円で売られていました。

【N】月あかり射し込む夜更けのポストに特殊な切手を貼って手紙を出すと、ごく稀に蒼白い顔をした郵便配達夫が手紙を月まで届けてくれるそうです。

【O】お月さまの野郎、俺に内緒でメールアドレスを変えやがったな。

【P】お月さまは中学校の修学旅行で一度だけ京都を訪れている事を知る人は殆んどいない。

【Q】日本にある全ての月極駐車場のオーナーは、実は夜空に浮かぶあのお月さまで、かなりの収入があるらしい。

【R】月は高倍率の望遠鏡で覗かれるのが一番恥ずかしいのだそうだ。

【S】お月さまのお気に入りの曲はムーンリバーで、時おり口ずさんだりもするが、歌詞が最初の“ムーンリバー♪”しか判らないので残りは鼻唄でごまかしている。

【T】月は昔から西武ライオンズのファンで、デストラーデのサイン入りマスコットバットを持っているが、西武球場がドームになったせいで“空に浮かぶモノ”の特権である試合の無料観戦が出来なくなってしまった。

【U】金曜日の夜、カウンターの片隅で珍しく酔い潰れて眠ってしまったお月さまの目には微かに涙の流れた跡が残っていました。

【V 】いや、でも、しかし、あの夜、確かに月はニヤニヤと笑っていたのです。

【W】検察側は【A】〜【V 】までの22篇の詩を、お月さまがこの事件に関わっている《証拠》として法廷に提出しました。

【X】裁判長の禿げ頭と今夜の月の光は奇遇にも同じルクスで輝いています。

【Y】この裁判の詳細はまるで不明です。

【Z】以上を持ちまして本日は閉廷とします。一同起立。

〜おしまい〜 。

メロン風味の気持ちで明日を夢見る。

話題:素晴らしい今日よ、さよなら。

買う買わないは別として、見かけると思わず手を伸ばしてしまう物があります。

それは“メロン味”の商品です。
本物のメロンが全く使われていなくても何ら問題はありません。色や味がメロンを真似てさえいれば、それで良し。

そう言うと、さも“メロン好き”なように聞こえますが、実は話はそう単純な物でもないのです。

確かにメロンは美味しいと思います。しかし、本音を言えば好物という程ではありません。

それが証拠に、本日付けの好きな食べ物ランキングでメロンは[キューリのQちゃん]と[三木プルーン]に挟まれた54位という微妙な順位となっています(ランクは日毎に多少変動します)。

にも関わらず、[メロン風味の物]は常に15位前後の好位置を常キープし続けています。

つまり、私はメロンそのものよりもメロン風味の物の方が好きなのです。

そこで、ふと思いました。

メロンよりメロン風味の物が好き。もしかするとこれは、

「石原裕次郎さんよりも、ゆうたろうさんの方が好き」

そう言う事になりはしないか?
そして同様に、これは…

「郷ひろみさんよりも若人あきら(我修院達也)さんの方が好き」

「イチロー選手よりもチチローさんの方が好き」

「中尾彬さんよりもネジネジマフラーの方が好き」

途中から明らかに例えが間違えていますが、兎にも角にも、そう言っているのと同じ事ではないのか?

本物よりも偽物を愛する。
それは本物に対して失礼だという気がします。私は何処かで人としての道を間違えたのでしょうか?

しかし…

これは以前にも一度述べた事がありますが、偽物には本物には無い物が二つばかりあるように私には思えてなりません。

それは、本物に対する“憧れ”と、どれほど憧れても決して本物にはなれない“あすなろ物語的な切なさ”です。

メロンパンを畑に植え、如雨露でメロンソーダをかけてもメロンの花は咲きません。

しかし…

そこでしか咲かない花もあるように私は思うのです。


メロンを半分に割り中をくり抜いて、残った皮を帽子もしくはヘルメットとして被ります。

そして、広大な夕張盆地の空を燃やす赤肉メロンのような夕陽を追いかけ、何処までも真っ直ぐにひた走るのです。

その時、人は初めて“メロン風味の気持ち”を知る事が出来るのでしょう。

思えば、神様は自分に似せて人間を造ったといいます。ならば、人間も“神様風味”の存在と呼べるのかも知れません…。

それでも人は素晴らしい。

完璧ではないが故に内包する“明日を夢見る気持ち”。それをニセモノと呼ぶなかれ。





道で友人が前を歩いているのに気づいて後ろから駆け寄り「よお♪」と肩をポンと叩くと、振り向いたのは、後ろ姿が友達風味の全然知らない人だった。

貴方の明日が、そんな素敵な一日でありますように…。


〜おしまい〜。

追記。

何だか、ワタナベのジュースの素が無性に飲みたくなってきました。

余次元ポケットのサイケな親切。


話題:SS

滅多に訪れない街の小さな古着屋で、或る日、とても趣味の悪い色柄のジャケットを手に入れた。夏物のデザインジャケットだ。どこがどう悪趣味なのかは皆さんの想像通りだ。

では、何故そんな服を買ったのか。そう訊かれると正直返答に困る。衝動買い、或いは、魔が差したとしか言いようがない。

――いや、やはり正直に云おう。私がそのジャケットを買ったのには歴とした理由がある。

それは試着室での事。果たしてこのジャケットを着たらどれくらい格好悪くなれるのだろうか?そんな好奇心で問題のジャケットを試着したところ、右側のポケット部分が不自然に重くなっている事に私は気づいた。

手を突っ込んで中を探ると、あろう事かそこにはジャガイモが四個も入っていた。それが幻のジャガイモ【マチルダ】である事は一目で判った。

ちょうど帰りにジャガイモを買って帰るつもりだったので、もしこのジャケットがジャガイモ付きなら手間が省ける。そこでヒッピー風の店主に確認すると、

「ああ…そうですねぇ…えっ、ジャガイモ!?…あ、いえいえ…ええと…はい…そうなりますね…ジャガイモ付きジャケットです」

と歯切れ良く云ってきたので、私はその場で購入を決めた…とまあ、それが理由だ。私は「着て帰るので袋はいらないです」と告げ、マチルダを鞄に移し変えた後、代金を払って店を後にした。

店を出てしばらく歩く内に、今度は左側のポケットが妙に重くなっている事に気づいた。

先程と同じように中を探ると中には何時の間にかニンジンが四本も入っていた。それがフルーツ顔負けの甘さを持つ【雪の下ニンジン】である事は一目瞭然だった。試着した時にはニンジンなど入っていなかった。

降って湧いたかのように突然現れたニンジン。もはや間違いない。これは、見た目こそ非常にサイケでダサいが、魔法のジャケットなのだ。

ジャガイモと同様にニンジンも買って帰る予定だったので、また一つ手間が省けた。

ところが、ポケットの魔法はまだ終わってはいなかった。今度はタマネギが出現したのだ。それがハワイのマウイ島で採れるマウイオニオンだという事は右目だけで直ぐに判別出来た。

しかし、魔法はまだ終わらない。次は豚肉。それも薩摩の黒豚だ。そして驚くべき事に、私はタマネギと豚肉も買って帰るつもりだった。次から次へと省けて行く買い物の手間。

そう…。私は夕食にポークカレーをブヒーッと作って食べる予定だったのだ。その具材が尽くポケットの中から出て来る。もとより、其れほど凝った物にするつもりもなかったので、後はカレールウさえあれば買い物をせずに帰る事が出来る。

もう此処まできたら期待せざるを得ないだろう。

カレールウ。カレールウ。

さあ、出て来いカレールウ。

私は期待を込めてポケットの中に手を突っ込んだ。

しかし、ポケットの中から出て来たのはカレールウではなく、一枚のメモ用紙で、そこにはこう書かれていた…。

『それは自分で買って下さい』

………。

ならば…私は再びポケットに手を突っ込んだ。

ペシャリッ!

手を叩(はた)かれた。

どうやら、カレールウの代金は払ってくれないようだ。


もしも貴方が街角でダサい夏ジャケットを着ている人を見かけたら、それは私かも知れません。その時はどうか…

そっとしておいてあげて下さい。


〜おしまひ〜。


カレンダー
<< 2013年05月 >>
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
アーカイブ