話題:妄想を語ろう

ウポポ君は熱帯雨林の国から単身、日本の高校にやって来た留学生です。パスポートの年齢は16才ですが何故か25年分くらいの記憶があります。

今月でちょうど日本滞在一周年を迎えるウポポ君―因みにウポポという名前は最初のウが名字で真ん中のポがミドルネーム、最後のポが名前に当たります―は、今日、学校の授業で大変良い事を習いました。

それは、日本語には“丁寧語”という言葉の形がある事です。それは極めて初歩的な授業で、何らかの言葉の前に“お”を付ければ丁寧になるというものでした。

ウポポ君はすぐに丁寧語を実践してみました。すると、どういう訳だか少しずつ小銭が貯まり始めたのです。理由は判りません。ウポポ君が“或る質問”に丁寧に答えると、10人に1人か2人ぐらいの割合で1円玉や5円玉、時には10円玉も!をプレゼントしてくれるのです。

(丁寧に物を云うとお金が貰えるンダナ…)

ウポポ君はそう思っていました。しかし、実はそうではなかったのです。

“或る質問”とはウポポ君の趣味を訊ねるもので、こんな感じです。

『ウポポは何が好きなの?』

ウポポ君はその質問に習ったばかりの丁寧語を駆使してこう答えます…

『【お釣り】デス』

海のない熱帯雨林のジャングルで生まれ育ったウポポ君は、日本で初めて海という巨大な水溜まりを知り、【釣り】にハマってしまったのです。

先生は教えてくれました。

言葉の前に“お”を付ければ丁寧になると。


今日も、ウポポ君はポケットの中をジャラ銭でいっぱいにしながら、日本で習ったお気に入りの駄洒落を呟きながら朝の通学路を歩いてゆきます。

『秘境に逃げ込むとは何と卑怯な!ι(`ロ´)ノ』

それは、ジャングル育ちのウポポ君には堪らない駄洒落なのでした…。

〜お・END 〜。