話題:SS
私、こう見えても“医者”なんて云うちょっと偉そうな仕事をやっておるんですがね…

とは云っても…自宅も兼ねた小さな町の病院でして、それも親から譲り受けたものだと云う…まあ、私みたいなのを“典型的な町の開業医”と呼ぶんでしょうね。

っと、そんな話はどうでも良いんです。今日はちょっと別の話をしに来たんですよ…と云うのも、貴方がナゾナゾ好きのナゾナゾ星人だと神林さんのお爺ちゃんに聞いたもんで、それなら、この話はぴったりかも知れないなあ〜なんて思いましてね。…どうします?お聞きになりたいですか?

…あ、いえいえ、カステラは結構です。別にカステラ目当てに訪ねて来た訳じゃあ無いんで。…ま、カステラは大好きですけど。…あっ、いや、本当にそんなつもりじゃ!…ああ、なんか気を使わせてしまったみたいでスミマセン。…因みに珈琲はモカブレンドが一番好きで…うわっ、いやいや、そういうつもりでは決して…あ、ついでと云っては何ですが、お砂糖は二個でミルクは少々…ああ、なんか申し訳ないです…本当に。

で、本題の話…あ、大丈夫です大丈夫です、非常に短いお話なので、お手間は取らせません。私も夕方の診療があるので4時前には病院に戻らなきゃならないし。

おや?この珈琲カップはもしかしてあの有名なマイセンでは?

え、違う?ロイヤルコッペパンハゲ?…じゃ無くて、コペンハーゲン?

ああ、そうですか。いや、実は陶器とか全然知らんのです、ハッハッハッ。

…まあ、冗談はこれぐらいにして…

先週の木曜日ですよ。ある女性の患者さんがみえたのです。初めて見る顔だったのですけど、それがまた、インド象に跨がったらさぞかし綺麗だろうなあ、なんて思わず想像してしまうぐらいの美人さんで…あ、いえ、決して患者さんの顔のクオリティで治療のクオリティが変化する事はありませんので、その点は御安心を。例え貴方が患者でも、私は全力投球で治療しますよ。

…アレ?なんか、ちょっと怒ってます?…怒ってない。そうですか。それなら良かった。

で、問題は、その美人の患者さんですよ。さっきもお話したように初診の方なので、まずは基本的な問診から始めようと思って、取り合えず、ありきたりながら『今日はどうされました?』と訊ねてみたのです。まあ、私としては当然、『どうも頭が痛くて』とか『何だか熱っぽくて』なんて答えが返って来るだろうと思ってたんですがね…

彼女、黙って首を横に振るばかりで何も言わないんですわ。これじゃ検査のしようがない。ま、全部の検査をすれば良いのだろうけど、それじゃ効率が悪すぎる。その時、ピンと来たんです。あ、これ…ノドが痛くて声が出ないんだな、って。そこで、『ああ、ノドが痛いんですね?』と改めて訊ねてみたところ…なんと、彼女はそれに対しても首を横に振るじゃありませんか!結局、彼女はその後の私の質問全てに対して、ただ黙って首を振るだけで最後まで何も答えてくれなかった…。

正直、こんな面倒な患者さんは初めてです。私は、完全に途方に暮れていた。

とまあ、これが問題のお話なんですがね…

あ、いえいえ…彼女をそのまま帰したりしていませんよ。ちゃんと、お薬を出してあげました。えっ?『彼女の病名は判ったのか?』…勿論、判りましたよ。まあ、少し考えましたけどね。『黙って首を振るだけで何で判るのか?』…ですか。そりゃ、判りますよ。だって彼女、自分で自分の病名ちゃんと云ってたわけですから…。

どうです?このナゾナゾ、解けましたか?

…さてと、それじゃ私はそろそろお暇させて頂きますかね。あ、珈琲とカステラ、ご馳走さまでした。カステラはもうちょっと厚切りの方が好みなんですけど…とても美味しかったです。

あ、そうだ…
その患者さんが入って来た時、診察室の外の牧草地では牛がモウ♪と鳴いていて、窓から綺麗なチョウが舞い込んで来たんです。

さて、【彼女の病名は?】

☆☆☆☆☆



解答は追記ページに♪(^o^)v


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