話題:突発的文章・物語・詩



くたびれた十月の扇風機がシューベルトの魔笛を奏でる夜。

顎がハズレた男が眺めるテレビ画面に「そのまましばらくお待ち下さい」のテロップが無情に流れていました。

顎のハズレた面白いはテロップに従い、顎がハズレたまま色々な事を考えていました。

サンマー麺には何故か秋刀魚が入っていないという不可解な現実について…

ロースカツ丼はNGだがヒレカツ丼ならOK で尚且つ甘い物や高級フレンチは全て別腹だという、男の恋人が唱えた難解なダイエット理論について…

卓球で変なサーブの打ち方をする人はどういう訳か髪型もちょっと変な場合が多いという不思議な一致について…

最近、“着ると背中の辺りが嫌な感じでチクチクするセーター”をとんと見掛けなくなった事について…

男性は単に“服がキツい”としか言わないが、女性は“服がパッツンパッツン”という極めて豊かな表現方法をとる事について…


そして、何の結論も出ないままテレビ画面は元に戻り、男の顎も元に戻った。


少し蒸し暑い秋の夜。

くたびれた十月の扇風機は相変わらず、少し変調したシューベルトの魔笛を奏で続けていた…。


【終わり】