話題:妄想を語ろう
 

「千円からで宜しかったでしょうか?」

今日もコンビニ店員は謎の過去完了形で愛を語る。

何ゆえ君は、全てをとうに過ぎ去った事にしようとするのか?

現在を過去に封じ込めようとするのか?

若気の至りと云えばそれまで。
若ハゲのイタリーと云えばそれまで。

しかし、君は更なる過去形へと傾斜し、明日には恐らく客に向かってこう云うのだ…

「千両からで宜しかったで御座候うか?」

否!!

君は過去へと退行しているのではない。

恐らく君は未来人なのだ!

現在と云う時間は君にとっては既に過去の物なのだ。

客が店に入るなり、君は云う「いらっしゃいました〜♪」。

客がお弁当を買えば、君は云う「お弁当温めましたか?」。

そんな未来人の彼を眼光鋭く見つめる一人の客がいる。

そうか…

あれは、客のふりをして未来人の行動を監視している未来警察のタイムパトロール官に違いない。

謎は解けたよ、トム・ワトソン君。

そう、全ての謎は今ここに氷解したのだ。

私はポケットから黒マジックペンを取りだして、二人に気づかれないようコッソリと“おでん 七十円均一”の【七十円】の字を塗り潰し、代わりに【萩本】と書き加えた。同様に【均】の字も、【欽】に書き換えた。

《おでん 萩本欽一》!!

よし。任務完了だ。

後は、監視キャメラに向かってVサインを決め、欽ちゃん走りで店を出るだけ…。

レジでは、コンビニ店員に扮した未来人と買い物客に装ったタイムパトロール官が対峙している。

「割り箸、温めますか?」

「お願いします。あ、ついでにポイントカードも温めて下さい」

なるほど。未来ではそうなるのか…。

二人のやり取りをもっと見ていたい気もするが、そうもいかない。

もうすぐ《村の時間の時間》が始まるからだ。

もう時間がない。私は亜空間へ戻らなければならないのだ。そう、欽ちゃん走りで。

はいっ、もうお時間きましたっ♪

それではまた来週お会い致しましょ♪

バイナラ、バイナラ…バイナラっ♪( ロ_ロ)ゞ


【尾張】。