話題:連載創作小説

土曜日の朝の街は、平日とも日曜日とも少し違って、ゆったりとしながらも何処かアクティブな時間が流れていました。

ですから菜奈も、朝、家を出た時には、紅茶カップを買った後は久しぶりに映画でも観てランチを取ってブティックや本屋を覗いて、とおぼろげながら色々と計画を立てていました。ですが、結局は小1時間ばかり街を歩いただけで、他に買い物もせず、ランチも食べずに家へと帰る事にしたのでした。

そうした理由は実に単純なもので、菜奈はこの檸檬色の仔猫の紅茶カップを手に入れた事で十分に満足感を得ていたからです。気に入った物をタダで譲り受けた幸運と、そのちょっと不思議な経緯のドラマに、少し浸っていたかったと云うのもあります。軽い足取りで土曜の街を歩く姿ははさながら、菜奈と檸檬色の仔猫の“初めてのお散歩”と云った感じです。

そして、家に戻った菜奈は、食器棚の扉を開けてすぐの場所、つまり、最もよく使う食器たちを置く場所に、買って来たばかりの紅茶カップを置いたのでした。


…それが、3ヶ月前の土曜日の朝、菜奈と“真っ白な紅茶カップ”との出逢いです。

でも…

ちょっとおかしいですよね?

菜奈が譲り受けたのは檸檬色の仔猫が一匹、背中を向けてちょこんと座るイラスト絵が描かれていた紅茶カップで、冒頭に出てきた“真っ白な紅茶カップ”ではありません。それに、お話の流れで考えれば、カップが置かれている場所も食器棚の中ではなく、“キッチンの小さな窓の下にある張り出し棚の上”でなければ冒頭の部分との辻褄があいません。

でも…そんな風に思ってしまうのは、菜奈が紅茶カップを手に入れてからそろそろ3ヶ月が経とうかと云う“或る日の出来事”を皆さんが知らないからです。

ですけど、ご心配なさらないでくださいね。今から、そのお話をするところなのですから…。

そう…それは、菜奈が意外な形で紅茶カップを手に入れてから3ヶ月になろうかと云う日曜日の朝でした。


《続きは追記からどうぞ》♪

 
more...