話題:連載創作小説


人も街も何処かキラキラと輝いているように見える晴れた土曜日の朝。

初めて立ち寄った雑貨屋で、菜奈は硝子棚に並ぶ様々な紅茶用のカップを眺めていました。

時計の針は午前10時を少し回っていました。

その店は、表通りからは少し奥まった場所にひっそりと構えている小さな雑貨屋で、実を云うと以前から少し気になっていたのでした。

けれども実際に菜奈が店の中に足を踏み入れるのは初めての事です。

その、如何にもヨーロッパの古い街によく似合いそうな小ぢんまりとした雑貨屋は、裏通りと云う場所柄も手伝ってか何処か【隠れ家】のような陰美な雰囲気を店の建物全体に纏っていて、入り口の古びた扉の前に立つと…

「どうぞ、お気に召した方のみお入り下さい」

店が語りかけてくるような、そんな不思議な感覚を来訪者に与えているのでした。

上手く説明するのは難しいのですけど、店の波長と自分の波長がピッタリと合った時にしか扉を開く事が出来ない場所‥

菜奈には、そんなふうに感じられました。

おそるおそる足を踏み入れた店内は思ったよりも狭いものでしたが、それでも、レイアウトが素晴らしいのか、息苦しさは全く感じられません。

並んでいる小物も、取り立てて奇をてらったふうもないのに、他の店では見ないような何処か独特の印象を与える物ばかりでした。

その中には幾つか菜奈の気を惹く品‥例えば、ルビーのような輝きを持つクリスタル製のキャンドルスタンド‥などもありましたが、今日買う物は既に決まっています。


《続きは追記からどうぞ♪》

 
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